見出し画像

「ミンナのウタ」感想

大変恐ろしく、スクリーンを直視したくない気持ちが湧いたので、ジャパニーズ・ホラーとしての役割をしっかりと果たした映画なのだと思う。ただ、起承転結の下2ケタあたりがうまく飲み込めなかったのでここに整理しておく。映画を観てから続きを読んでね。

本作の悪霊である故・高谷さなの卒業文集には「歌でみんなを私の世界に惹き込みたい」「みんなの魂の声を集めたい」と書かれていた。さなちゃんは生前から、死してなお、夢を叶えるべくひたむきに活動しており、

■歌でみんなを私の世界に惹き込みたい
→呪いの歌で人を異世界(?)に引き込む(現世から消える)
→ラジオ番組に呪いの歌のカセットテープを送り、番組で流してくれと頼む
■みんなの魂の声を集めたい
→動物や同級生を死に追いやりその断末魔を録音する
→自分自身を両親に殺させて、その一部始終を録音する

とまあ行動力は達者なのだが、大変ヤバい人物なのであった。さなちゃんの元担任もその根っからのヤバさに太鼓判を押している。

登場人物は呪いの歌を聴いて次々に姿を消していく。そんな中、一人の女性が「さなちゃんに寄り添えば解決するのではないか」と言い出した。どう寄り添うのかというと、さなちゃんが希望してるならラジオで曲を流してあげた方がいいんじゃない?だとか、さなちゃん死んじゃだめだよとか、そういった種類の寄り添いである。ちゃんと状況見てた?少しお花畑がすぎるのではないでしょうか。

なんか時空の歪みでさなちゃんの致死シーンに居合わせた彼女はさなちゃんを助けようとする。「自分自身を両親に殺させて、その一部始終を録音する」←これはさなちゃんの夢に関わることだから、助けたら夢を邪魔したことになるんじゃない?
しかしそれによって作中では呪いが解け、消えた人たちが帰ってきたのであった。さなちゃんがそれで良いなら僕も言うことはありませんが… 
(ポストクレジットシーンも加味するともう少し複雑になるが、ホラー映画の最後の「まだ怪異は存在する…」匂わせはお約束なので触らないでおく)

彼女は段取りも悪かった。ラジオ番組に送られたカセットテープの差出人を見た一人が「嘘だろ…」といかにも何か知ってそうな発言をした、のを「いったんホテルに戻りましょう」と遮り、後日「そういえばあの時何か気付いてましたよね?」などと言い出す。お前!もっと効率とか!そういうの考えた方がいいよ!

テープを逆再生したら何かあるんじゃないかと試してみたら不気味なだけで何もなくて、後日B面を再生したら真相が垣間見えたシーン、ふつう先にB面再生を試すだろと思ったり、細かいところをあげつらっていくときりが無いのだが、いやいやこういうモヤモヤこそがジャパニーズ・ホラーらしさではないか。呪怨の監督も「笑いと恐怖は紙一重」的なこと言ってたし。(ミンナのウタも呪怨と同じ監督でした。なるほど……)

マキタスポーツの容姿は完成されている。

この記事が参加している募集

#映画感想文

65,734件

いただいたサポートは活動費に使わせていただきます。※活動費:ドーナツ、カステラ、シュークリームなど