見出し画像

富士登山【旅行記番外編#1】

みなさんこんにちは。たんぼです。旅行記シリーズも5作を数えますが、楽しんでいただけてますでしょうか。まだの方は下からポチッと飛んで読んでみてください。

上記シリーズでは都市の観光をメインに執筆していますが、今回は少し趣向を変えて自然体験の記録を残すことにします。人生初の富士登山に行ってきました。一生に一度(かもしれない)大冒険の計画段階から後日談までお楽しみください。


計画の始まり

「来年は富士山に行こう」
昨年(2022年)末ごろに上司がふいに言い出したこの一言が、すべてのきっかけだった。登山を趣味にしている人でもない。それだけ言われても、どうせ「ゴルフやろうよ」みたいな感じで流れるんでしょ、というのが聞いて最初の感想だった。だから特に何もすることもなく2月ごろまでは普段通り過ごしていた。
3月になり、上司からいきなり「富士山の件、進んでる?」と聞かれた。あれ、本気だったんだと今になって気づく。特に何もしていないと伝えると、「本当にやるから準備しといてね」と念を押された。このひとことで登山の手配を任されたらしい。自分の休みの計画くらい自分で立てろよ、とも思ったが上司である手前その言葉は胃酸に溶かした。50代も半ばに差し掛かると、体の衰え等からできることに制限が出始めるから今のうちに登っておきたいんだとも言っていた。たしかにそうかもしれない。こういう体験はできるうちにしておくべきなのだろうと思い、ようやく手を動かすことにした。

準備

交通&山小屋編

実際に富士山に登ることにはなったが、まず何をするのか。当時の私はとにかく無知であった。インターネットで調べればすぐに欲しい答えにたどり着けるのはいい時代である(問いが簡単なものに限るが)。どうやら山小屋を予約して登るのが一般的らしい。直接予約は5月頃から開放されるらしいが、大半が電話受付のみである。それ以外には都内等からのバスとセットになったプランを販売している会社もあり、そちらは山小屋の予約が解禁されるはるか前から予約できる(来年度の予約ももう解禁されている)。初めての登山でルートも初心者向け(とされている)の吉田ルートがいいと思ったのでそのプランを使うことにした。都内から5合目までの往復バスに加えて山小屋予約に下山後の温泉もついて約2万円。道具のレンタル等は別途追加料金がかかるが、山小屋の通常料金が1万円強/泊であることを踏まえるとそこまで高いものでもないだろう。(使ったあとではむしろ安く感じた)

装備編

移動手段を手配した後は、登山装備の準備をしなくてはならない。レンタルすることも考えたが、中途半端に道具があったのでちまちま買い足した方が安く済むと考え今回は見送った。頂上の気温は8月でも1桁台なので寒さに耐える装備が必要である。着脱で対応できるようダウンのように厚い上着はやめた方がいいだろう。

(体力編)

人によっては必要となるかもしれないので記しておく。日本の最高峰にいきなり登ろうというのは誰にとってもハードなので、普段から歩く習慣をつける等しておくとよいらしい。もっとも、山登りの体力は山登りをすることでつくらしいが。山道に慣れることがいちばん重要なのかもしれない。ちなみに私は月数回のスポーツ習慣と低酸素トレーニングができるジムにも通っていたので対策はばっちりできていた。はずである。

本番

~登山口

そうこうしているうちに計画の日がやってきた。東京駅からバスに乗りスバルラインを経て5合目へ。繫忙期になるとマイカーでは乗り入れられないので、バスツアー等で向かうのが主になるだろう。5合目には神社やレストランもあり、ここで高地順応(標高が高いので当然空気は薄い。それに慣れることで高山病発症リスクを減らす)をしてから行くのが通例だ。ちなみにバスの中ではスバルラインに入ったあたりからガイドさんが「ここからは寝ないようにしてください」としきりに言っていた気がする。こういうところから高山病対策は始まっていたのだなあ、と今になって思う。レストランで軽く昼食を食べていよいよ登山開始である。

5合目~6合目

吉田ルートの序盤はなだらかな傾斜を登る。ここで調子に乗ってペースを上げると後半バテるという話はよく聞いていたので、上司のペースに合わせながらゆっくり進む。人が多いとは聞いていたが、この区間は道幅も広く、混雑している様子はなかった。霧雨がたびたび服を濡らすような天気だったので、雨具の着脱も兼ねて休憩を多く取った。

6合目~山小屋

序盤は何ともなかったが、6合目を過ぎると様相は一変する。標高が上がるにつれて気温が下がり、それまでは霧で済んでいた水蒸気の結露が一層進んで雨が降り出す。また周囲にさえぎるものもなくなり風が容赦なく吹き付けてくる。岩場をつかんで登るための手袋(防水スプレーで応急処置済)もあっけなく浸水し、雨風で体温を奪われる。道も狭くなり混雑するため自分のペースで登ることも難しくなる。短パンにコンビニで売っているようなポンチョを着ただけの外国人がスイスイと登っていたが、彼らの行く末はついに知ることはできなかった。このような厳しい状況の中、ついに上司は低体温症を発症して7合目で急遽ストップすることになり、先輩と二人残されてしまった(ちなみにツアーは3人で参加していた)。私も濡れた手袋で手先がキンキンに冷やされ凍傷になる寸前だったが、気合で宿がある本八合目まで登りきった。

山小屋にて

文字通り這う這うの体で山小屋にたどり着いたわけだが、この時点で全身びしょ濡れである。山小屋ではタオルこそ貸してくれたが、食事と寝床を提供してくれる以外の無料サービスはない。カップ麺やビールも売られてはいるが、下で買えるものをわざわざ高い金を払って買うほどの緊急性もなかったので見送ることにした。山小屋内部は通路の狭いカプセルホテルのような感じだった。ただ濡れた服を乾かす等のスペースはないので、濡れた場合に備えて服を多く持っていく等の対策は必要だろう。布団があるだけありがたかった。仮眠をして頂上アタックからのご来光に備えるというのが通常の流れなのだが、このタイミングで頭痛が襲ってきた。50代の上司&40代の先輩と登っていてまさか自分が、とは思ったが高山病を発症してしまったらしい。気圧の問題なので慣れるしかなく、水を飲みながら耐え忍んでいた。眠っては頭痛で目が覚める、みたいなのを繰り返していたので疲れが取れるはずもなくアタック時刻の午前2時を迎えた。

いざ頂上へ

頂上でご来光を拝むには当然ながら日の出前に頂上にたどり着かなくてはならない。つまり真っ暗な中険しい道を登ることになる。天気は幸い良好だったので雨を気にする必要はなくなったが、標高が高く今度はすぐに息が切れてしまう。加えて他の登山客も同じ目的で登っているので登山道が非常に混雑する。休憩を取ろうにも適切なスペースは少なく、欲しいときに休めない。いざコースに戻ろうにも、車のように登山客の切れ目を見つけてそこに入りこまなくてはならず、ストレスのかかる行程だった。休みながら見る夜景と星空が癒しだった。スマホを扱える状態ではなかったので残念だがもちろん写真はない。

ご来光~下山

そんなこんなで午前5時前には頂上に到達。寒さに震えながら日の出を待つ。

雲海を見下ろす日の出前。高いところまで登ってきたことを改めて実感する。

だんだん空は明るくなってきたが、雲が多く太陽が見え隠れしてはっきりとご来光を写真に収めることはできなかった。ただ瞬間的に現れる太陽を目に焼き付けることができた。ここまできた人間にしかわからないご褒美としていただいておく。
明るくなってきてから下山するわけだが、下山道は物資運搬用のキャタピラーが通るため登山道より整備されているとはいえ傾斜がきつい。まっすぐ下りているとすぐに膝が言うことを聞かなくなるだろう。ジグザグに下ってみるなど試行錯誤をしながら、下界へと近づいていく。

下山後

そんなこんなで5合目に帰還し、上司とも無事合流した(上司は7合目から再アタックを試みたようだが、結局リタイアしてしまったそうである。無念)。合流時刻まで軽食等をつまみながら写真を見せ合ったりしていた。バスに拾われた後は銭湯(+昼食)と浅間大社に寄り、旅行としての体を繕われ、東京に帰りツアーは終了である。

5合目限定販売のメロンパン
浅間大社を見ながらの富士山ジェラート。写真撮影どころではない暑さで溶けていった。

おわりに

人生初の富士登山は道中厳しい部分が多かったものの、あとになって振り返ると楽しかったことの記憶が大きいと感じる(生きて帰ればつらい話も楽しい思い出になるから?)。これを読んだあなたが挑戦してみようという気になるかどうかはわからないが、もし挑戦される際は雨と寒さ対策は万全にしておくべきだろう。お天道様のことなので、予約した日が晴れてくれる保証はどこにもない。真夏に出発するため温度感覚がマヒし、水を凍らせて持参したほうがいいと思うかもしれないが、その必要は皆無だ。寒い山上でキンキンに冷えた水はむしろ毒になる。私が伝えたいのはそれだけだ。
来年以降登山に臨むみなさんの安全を願って今回の記録を終わらせていただく。おわり

続編へのご期待、ありがとうございます! いただいたサポートは旅費の足しとして宿・現地での飲食・交通手段に使わせていただきます。その内容も記事にしますので楽しみにして待っていてください。