見出し画像

雑学マニアの雑記帳(その20)「2月2日」節分

このところずっと、節分は2月3日で立春は2月4日と決まっていた。しかし、かつては年によって節分の日付が違っていたように記憶する。早速国立天文台で公開している過去のデータを確認してみると、1985年以降、30年以上に渡って節分は2月3日、立春は2月4日で固定されている。30代以下の若い人たちは、「豆まきは2月3日」にするものと思っているかもしれない。
一方、1984年は、2月4日が節分、2月5日が立春であった。1952年から1984年までの30年余りの期間では、四年に一度は2月4日に節分を迎えていたのだ。
それが今年2021年、突然に2月3日が立春、つまり2月2日が節分になったなのである。このようなことが起こるのは、1897年以来、124年ぶりである。長寿社会となった日本だが、さすがに2月2日に豆まきを経験したお年寄りは存命ではないことになる。
何故このように節分や立春の日付が変わるのだろうか、そもそもそれらの日付はどのように決められているのか。地球はおよそ一年をかけて太陽の周りを一回り(360度)公転している訳だが、春分点と呼ばれる点を起点として、360度を15度毎に24分割し、その15度毎のポイントを通過する日を「春分」や「夏至」などと名付けている。いわゆる二十四節気だ。春分を起点とした公転の角度と二十四節気の関係を図に示すと次のようになる。

画像1

地球は約365日かけて太陽の周りを360度回る訳であるから、一日あたり約1度進む計算になる。従って、春分点通過から15日程かけて15度のポイントに到達する。その日が「清明」となる。同様にぐるっと回っていって、315度のポイントに到達する日が「立春」となる。つまり、地球の公転軌道の上に「立春点」と呼ばれるポイントがあり、そのポイントを地球が通過する日(時刻)が立春となるのだ。
さて、それでは何故最近30年間ずっと2月4日が立春となっているのか整理してみよう。地球が太陽を一周するのに要する期間はおよそ365日と6時間となっている。つまり、ある年の立春の瞬間(地球が立春ポイントを通過した時刻)から数えて365日と6時間後に再び同じポイントに戻ってきて立春を迎える。次の表を見てもらいたい。

画像2

1985年は2月4日の朝6時頃(日本時間、以下同様)に地球が立春点を通過している。次に同じポイントに戻ってくるまでには、365日と6時間程かかるので、翌年の立春は2月4日の昼の12時頃、翌年以降も2月4日の夕方6時前、24時前と時間帯が約6時間ずつ後ろにずれていく。そうなると次の1989年は、2月5日の朝6時頃となりそうであるが、そうではない。1988年はうるう年であるので1日のずれが生じる。従って、1989年の立春は、やはり2月4日の朝6時前になるのだ。4年かけて、また元に戻った形になる。こうしてこのところ毎年、2月4日の立春が続いていたのだ。
さて、立春時刻の周期が365日と6時間程であると書いたが、実際にはもう少し短いため、完全に4年周期で元に戻る訳ではない。1885年から4年毎の立春時刻をまとめると、次の表に示す通り、少しずつ時刻が繰り上がっていたことが判る。そしてついに2021年には日付を越えて2月3日の23時台に突入したのだ。すなわち、立春が2月3日(節分は2月2日)となったのだ。

画像3

もっとも、2021年の立春時刻はずっと以前から確定されていた訳ではない。一般に二十四節気の日付・時刻は国立天文台の観測結果に基づいて、前年二月の官報で確定情報が公示されることになっているため、2021年の立春については、2020年2月まで待たないと確定されなかったのだ。表の通り、2021年の立春時刻は2月3日の23時59分という微妙な時刻であったため、2月4日の零時すぎに修正される可能性も完全には排除できず、数年前から確定することはできなかったのだ。もし、2月4日0時0分以降にずれ込めば、1897年以来の2月2日節分は四年後の2025年まで先延ばしとなるところであった。
地球の公転は厳密に言うと単純な楕円軌道ではなく、月の引力や木星などの他の惑星の引力、さらに地球の自転軸のゆらぎなどの影響を受けて常に微妙に変化しているため、数年先の挙動まで正確に予測するのは難しいようだ。地球の軌道などは、数十年先まで正確に把握されているものと思いがちであるが、そうではない。天体軌道の計算は、想像以上に奥深いものがある。
2020年2月の官報で、ようやく正式に2月2日節分が確定することとなった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?