興味のない人との出会いをどう作り出すか?大学の社会向け広報の大きな課題に立ち向かう、中央大学の教養番組。
新型コロナウイルスによって、大学の授業だけでなく、公開講座のオンライン化であったり、オンデマンド化も一気に進みました。でも、このような変化が起きるずっと前から、映像による公開講座の提供に力を入れている大学があったのをご存知でしょうか。その大学は中央大学。今回は、この大学が取り組む教養番組『知の回廊』について取り上げていきたいと思います。
この取り組みは、年6本、ケーブルテレビ局であるジェイコム東京と協同で、中央大学のリソースを使った教養番組を制作し、首都圏のケーブルテレビ各局で放送するほか、YouTubeでも公開するというもの。2001年に取り組みがスタートしているようで、取り組みとしての先進性もそうですが、20年も継続していることに驚きつつも、素晴らしさを感じます。
『知の回廊』をいくつかのぞいてみると、オンライン化した大学の公開講座とは、ぜんぜん違うことがすぐにわかりました。取り組み名が謳っているように、“番組”なんですね。講座であれば先生がずっと話し続けますが、『知の回廊』の場合、ナレーターが入り、画面も内容にあわせて、解説する教員、資料、ロケ映像と切り替わっていきます。これについては完成度の高さを感じつつも、高いがゆえに通常のテレビ番組と比べられてしまうことと、オンライン講座や講義にある、ある種のゆるさがないので、一長一短なのかなという気もしました。
個人的に、とてもいいと思ったのは、ケーブルテレビ局で放送する、という発信スタイルです。公開講座はじめ、社会に向けた大学の学術情報の発信は、腰を据えて読んだり見たりすると、面白いものがとても多くあります。でもそのほとんどは、興味がある人、知っている人が、大学のサイトに行って、探して、はじめて存在を知ります。情報発信として、悲しいほど受動的なんですね。
そういったなか、『知の回廊』はケーブルテレビというややマイナーではあるけれど、大学とは関係のないところで情報を発信しています。しかもテレビなので、ガチャガチャとチャンネルを回して(表現が古い)、偶然、見つけてもらうことだってありえるわけです。こういうプッシュ型メディアで、大学の知を伝えるのは、実はとても意義深いのではないでしょうか。
公開講座関連は年配の人を中心にリピーターができやすく、一定の人数に受講してもらう、視聴してもらう、というのがゴールであれば、そこまでハードルが高くないように思います。でも、これら社会向けの知の発信の目的は、ファンの獲得ではないと思うんですね(一部あるでしょうが)。それよりも大きな目的は、できるだけ多くの人に、大学の知であったり、知ること学ぶことの面白さを伝えること、なのではないかと思います。そうであれば、大学の知や、知ること学ぶことの面白さをまだ気づいていない人に伝えるべきなのですが、現状のこういった情報は、この層にほぼ届いていないわけです。こういう状況を鑑みると、中央大学の取り組みは、ほんと意義深いなぁと思うのです。個人的には、コストや手間の関係で回数が多少減ったとしても、今まで大学との接点がなかった層に、こういった情報を伝えることに力を注いでもいいのかなと思ったりしています。
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