新施設を建てるならばいま!?対面とオンラインの可能性が揺れる今だからこそ響く、新施設建設というメッセージ。
見た目も美しく設備も充実した新しい施設というのは、受験生にとって大きな魅力です。教育プログラムや留学制度だと、人によっては利用しないこともありますが、施設であればその施設を使う学部に進学すれば十中八九利用します。しかも物理的に存在するものなので利用イメージが湧きやすいし、そこから学生生活の夢がさらにふくらんでくる……。そんな受験生向けキラーコンテンツである新施設のなかで、とりわけ異質なものとして注目を浴びているのが、今回、取り上げる大阪芸術大学の新校舎です。突飛ではあるけれど、とくにいま、こういう情報を発信するのは受験生にすごく響くのだろうなと思います。
この校舎できたときから、すごく気になっていたのですが、まぁひとことでいうとお城なんですね。お城っぽい、じゃなくてお城。大阪芸術大学はまわりに高い建物がほぼない南大阪の河南町にあるので、さらに建物の異質さが際立ちます。SANKEI Newsに動画があったのですが、これを見ていただくとよくわかると思います。
余談ですが、大阪芸大の施設でいうと、2017年に開設されたアートサイエンス学科のメイン校舎を妹島和世さんが設計したことでも話題になりました。この建物も、近未来的というか、UFOみたいというか、一度、見たら忘れられない建物です。
大阪芸術大学アートサイエンス学科棟(大阪芸術大学公式サイトより)
冒頭でお伝えしたように、大学の新施設はそれだけでも高い訴求力があります。しかし、このコロナ禍のいま、建物を建てて大々的にアピールするのは、それ以外の意味も出てくるように思うのです。というのも、アフターコロナになったとき、各大学はオンラインと対面をどのように使い分けるのか、もしくは使い分けないのか、そういった議論が本格化していくように思います。大学によっては議論ののち、自大学の方針を社会に宣言するところもあるでしょう。しかし、そういった言葉で表現するよりも、新たに建物をつくることの方が、よっぽどわかりやすく、自分たちが何を重視するかを伝えられるように思います。もちろん建物をつくるわけですから、対面を重視する、というメッセージをです。
さらにいうと、こういった強いメッセージ(ある意味での宣言)を、いま、発信することに意味がある。対面授業はだいぶ戻ってきましたが、それでもこの2年間で学生や受験生は対面で学ぶことへの飢餓感が募っています。コロナが過去のものになると、良くも悪くも対面に対する飢餓感はうすらぎ、対面の価値への理解もぼやけていきます。いまだからこそ、普段の何倍も強く、ポジティブな印象を与えられるわけです。
とはいえ、社会も、大学も、大きく変わろうとしているときに、莫大な費用がかかる建物を建てるというのは勇気がいります。大阪芸大がどのようにしているのかはわかりませんが、通常であれば、何十年もかけてその費用を支払っていくわけです。コロナ禍やウクライナ情勢で半年先もわからないなか、何十年も先を見越して新しい施設をつくる……。当然、悩みもするでしょうし、ためらいもすると思います。そんななか、対面を重視すると思い切れるのは、さらには城を建てると決断できるのはなかなかです。感性を重んじる芸術系大学だからこそできたことなのかなと思いつつ、面白い時期に決断されたと感じました。