戦場の手紙

黒山羊に手紙を書こう。
対して書くことも無いんだけど。
ありきたりな、なんてことないことを
つらつらと、単純な文にまとめて書き連ねて。
黒山羊は返事をくれたことが無い。
いつも食べてしまうのかもしれない。
あの歌のように。
でも僕は黒山羊を嫌いにならない。
彼は僕のともだち。
黒山羊さん黒山羊さん。
今日はこんなことがあったんだ。
なんでもいいから聞いておくれ。
明日僕はここに居るか分からないから。
僕の全てを君に話すから。
君は僕の全てを聞いてくれ。
黒山羊さん。


黒山羊はいつも何も言わない。
でも僕は黒山羊に手紙を書くときは、すごく幸せだ。
体中が暖かくて、
なぜか一人じゃない気がするから。

僕の声を聞いてくれ_result

黒山羊さん黒山羊さん。
聞くに堪えないかもしれないけどね、
今日こんなことがあったんだ。
聞いておくれ。
全てを君に話すから。
君は僕の全てを聞いて、受け止めて。
そうじゃないと、僕はもう耐えられない。
黒山羊さん。
どんなときにも君は僕の側に居て。
その毛皮で僕を抱きしめてくれ。
僕を一人にしないで。
黒山羊はやっぱり何も言わないけど。
彼は突き放すことも無いのだ。
こんな戦場でも。
血に濡れた身体が、暖かいものに触れた気がした。

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