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2021年 印象的だったアルバム/曲

なんだかんだ例年より掘った気がするのでまとめ。
"2021年発売の新譜" ではなくて2021年に自分が初めて聴いたものから選出。
おおむね聴いた時系列通り。曖昧なものもあるけど、とりあえずiTunesのライブラリで2021年内に追加した形跡のある盤や曲を対象に。


木村恵子

慶応義塾大学卒のシンガーソングライター。在学中は杉真理や竹内まりやもかつて在籍してた音楽サークル「リアルマッコイズ」で活動。

前年に1stアルバムの「STyLE」に大ハマりしてたので流れで2nd~4thも掘った。ライブラリ内の再生回数でかなり上位に入ってたので、1曲単位ではともかくアーティスト単位では間違いなく2021年で1番聴いた。

開幕から偏りすぎにも程があって草

AMBIVA

89年リリースの2ndアルバム。
どこかアンニュイな雰囲気を全体に漂わせて特有の影を持ちつつも、ウィスパー気味のボーカルの艶やかさもあった「STyLE」からは打って変わって、ファンキーで明るいポップスに朗々としたボーカルを載せた曲中心の1枚。
とはいえビッグバンドジャズや暗めのボッサのナンバーもあったり、曲調は明るくとも内容がダークだったりする面もあって、1stの良さも形を変えて引き継いでる。

プロデューサー/アレンジャー が前作の鈴木茂から清水信之と松本晃彦に代わった事や、木村自身の自作曲の割合が大幅 (前作の2/10から8/10に) に上がった事が変貌の要因かもしれない。

特にボーカルのメロディーラインには前作には無かった特有の癖が存在し、後の2枚でもそれを感じさせるフレーズが多々あるので、木村個人が得意とする事や本来やりたかった事は「STyLE」ではなく「AMBIVA」以降の路線なのではないかと個人的には思う。

ガールポップの文脈で括るにはリリース時期が早すぎる気もするが全体的なサウンドの傾向としてはそっちの方面の音。ジャケ写のイメージそのままに歌詞内でも頻繁に車が登場する、ドライブのお供にうってつけな1枚。

ニュージャックスウィング風のアレンジに男性Vo (桐ヶ谷俊博) とのデュエットという、前作のイメージではとても考えられないような曲。歌い方どころか声自体が別人のように変わってて最初に聴いた時は本当に驚いた。
9曲目の「サイドシートの彼」でのジョー・リノイエのバッキングボーカルも同系統の方向性。

前作のエッセンスを残しつつ新しいアプローチに昇華させたバラード。
個人的にアルバム内でも特に好きな1曲。


Cafe 1984

3rdアルバム。曲は全て自作で、歌詞は全て麻生圭子による提供作という変わった構成。
プロデュースは佐橋佳幸へとバトンタッチ。「AMBIVA」での攻めたアプローチも踏まえたうえで、「STyLE」の時期のアンニュイさも取り戻して、上手に中和させたような1枚。
キャッチーさでは他3枚と比べてとっつきにくい部分もあったが、全部まとめて聴きこんでいくうちに気に入った。スルメ。

ただ、1曲目の「湾岸線は Starry Night」は最初からかなり好印象だったのでちょっと別枠。歌詞内に登場する車のスピードを煽るようなブラスのフレーズや密度の高いギターとパーカッションの効果もあってか、実際のBPM以上に疾走感を感じるアレンジ。
ドラムのビート感や要所で挟まれる高速フィルインも秀逸で、シンバルが絡むフレーズの気持ちよさも抜群
(演奏してるのは恐らく江口信夫、曲単位でのクレジットがされてないので分からないが青山純とカワノミチオではない気がする… 違ったらごめんなさい)

3曲目の「June、June」、5曲目の「知らん顔してあげる」も良質なポップスで気に入ってよく聴いたが、特に印象深かったのは9曲目の「天使を着た女たち」。スリルのあるストリングスを幕開けに、西洋風のラテンに載せた情念たっぷりの歌唱からいろんな情念が見え隠れする曲。
"強い女" 的な歌詞の曲が多いイメージを思わせてくる狭間にこういう曲を入れてくるのも、2枚目で覚えた技を洗練させてきたように思える。


M

4thにして最後のアルバム。全て自作曲で、歌詞は8曲目の「ないものねだり」のみ麻生圭子による提供。
「STyLE」を担当した鈴木茂がアレンジャーに戻った事で内容がシティポップに回帰するかと思えば、ジャケット通りの暗いサウンドとサドとマゾを題材にしたおどろおどろしい歌詞の曲が多く、3rdまでの節々で現れてた "暗さ" や "不器用な恋愛" に全フリした1枚。
最初に聴いた時は「曲も風貌も急に何が…」と困惑したが、本人が当時連載してたエッセイによると「cafe 1984」のリリース前後あたりで精神を病んでた時期があるようで納得した。「M」のリリース以後は多少落ち着いたようで何より。

アルバム1曲目の1音目のシンセの時点で既に怖い。
過去作からは考えられないような方向性… と見せかけてファンキーさでは「AMBIVA」に少し回帰してるような気もする。
中間部の鈴木茂と松原正樹のギターのハモりや、アウトロの速弾きとピッキングハーモニクスは今までの曲からはありえないアプローチなので驚いた。
歌詞の内容からはとっかりの印象として陰鬱さを真っ先に感じるが、最後の

人はうしろ指をさすけど
ふられるたんびに 綺麗になるのよ
あなたをいつかきっとふってあげる

のフレーズには一種の気高さのようなものがある気がした。

初期の椎名林檎がよく戸川純からの影響を指摘されてたみたいだけど、本当に影響されてるのはコレなんじゃないかって疑ってる

アルバム内で1番好きな曲。
基本的には明るい曲が多いジャンルなのにボーカルがアンニュイだったり、ドラムが打ち込みでパーカッションが生演奏だったり "一般的な歌モノのラテン" とは一味違う "この人じゃないと意味がない曲"

声量やピッチの正確さでこの人の上を行く歌手はゴマンといるかもしれないけれど、木村恵子の曲の世界観を一番伝えられるのは間違いなく木村恵子自身。


Candee

1988年トーラスレコードよりアルバム『Candee』でソロ歌手としてデビュー。その後バッキングヴォーカリストとして活躍し、山下達郎、SING LIKE TALKING など著名ミュージシャンのバック・コーラスを担当。またコカ・コーラなどコマーシャルソングも担当した。
コーラスを担当した林田健司と結婚するも、1998年に劇症肝炎により急逝。1991年からライブやレコーディングに高尾を起用していた山下達郎は「ライブを本気でやめようと思ったほど落ち込んだ」と語っていたという

高尾のぞみ-Wikipedia

Candee +2

高尾のぞみがCandee名義で発売した唯一のアルバム。神保/櫻井コンビのシャンバラに一時期ハマってて、似た系統の作品がないか探していた時に発掘。ボーナストラックが収録されたタワーレコードの再発盤がちょうど発売されていたので購入。
収録曲のうち1,5曲目はカシオペアの野呂一生による提供。
演奏者のクレジットが記入されていないが、恐らく当時のカシオペアのメンバーによるもの。音が明らかにそれ。

特に1曲目「For You」から2曲目「あなたがいるから」への流れが秀逸。
抑揚のコントロールによるフレーズへの表情の付け方が上手い人だと思う。
個人的に好きなのは4曲目のBreak Out

全体的に中低域の音 (特にドラム) のミックスが篭り気味なのが少し残念。

あとアルバムとは直接関係ないけれど当時担当してたコカ・コーラのCMが曲と映像ともに最高なのでぜひ見て欲しい。


神崎まき

JOY

薦められた GOOD DAY I・N・G がかなり好みだったのでアルバムで購入。
ツヨシだま遊んでたくせに 未履修なので全く存在を自体知らなかった。

GOOD DAY~や、曖昧BOYに恋してた (上の動画の1:18:24~) で顕著な
「明るいorノレる曲調+パワーのある歌唱+悲しい歌詞」
の三つの要素が恐らく本人の得意としてる分野で、軽快に聴ける中にどこか空元気のような憂いがあって独特。
作詞作曲が他者からの提供なのが逆に意外なくらいの仕上がりで、作家陣やプロデューサーが特徴をしっかり見据えた作品づくりをこなしてる事に感服した。

いい曲だな~ と1番思わされたのはTears in the light
パワー以外の表現力も豊かでじっくり聴ける曲。作曲者の長谷川大は当時まだ高校在学中だったそうで驚いた。


今井美樹

MOCHA under a full moon

「雨にキッスの花束を」を一時期聴きまくってから、放置してたところに薦められて聴いたアルバム。

1曲目の「TOKYO 8月 サングラス」のアウトロから2曲目の「横顔から I LOVE YOU」の入りで鳥肌が立つ。アウトロが長いのでDJユースにも使いやすい。
4曲目のAnytime Manytimes (上の動画だと14:47~) もかなり好み。

とかいろいろ細かい感想があった気はするものの Boogie-Woogie Lonesome High-Heel のライブ版が凄すぎて全部吹き飛んだ。常識が壊れそうなくらいバックバンドが上手くて、特に青山純のドラムが絶品。
シンバル関係のアプローチが凄すぎて別の曲のようにまで聞こえる。


森高千里

非実力派宣言

自分の中で "度々ちょっとハマって少し曲を掘る時期がくるアーティスト" の代表。youtubeで「夜の煙突」のPVがオススメに出てきて再燃した。

ビートの疾走感とカーネーションのコーラスが気持ち良すぎて一時期こればっかり聴いてた。
「17歳」の正統進化のようなサウンドの「今度私どこか連れて行ってくださいよ」なんかも印象深かったが、強烈なラテンサウンドの上にセリフが載ってる「しりたがり」が結局1番記憶に残ってる。真面目に聴く曲じゃないかもしれないけど…

スタジオ版通りのテンションでライブもこなしててビックリした。ショーの合間にこういうのがあると観てる側も中だるみしなくて楽しいと思う。
「おしえておしえて!」に対しての演者の拒否っぷりに笑った


潘高峰

遊樂場 (feat.三好坏男孩)

少しシティポップっぽい雰囲気のある、複数ボーカルもののファンク。

Apple Musicのプレイリストに、中国の流行曲のみで自動更新される「C-Popダイナスティ」という物があるのを発見して「日本のチャートで中国の曲なんて見る事はまずないけど、アレだけ沢山の人口がいる国なんだから知られてない名曲も沢山あるのでは…?」と思い、度々聴く習慣をつけてた中で見つけた曲。なので正直アーティスト名も曲名も読めないし、wikiっぽいページを自動翻訳にかけても何が何だかさっぱり分からなかった。
けれど、そういう理屈を越えてくる良さが歌にも演奏にもあった。

全パートが上手だが、特にカッティングと裏メロっぽいパートに分離してるギターと、ビートとフィルインの両方が絶品のドラムが「この曲を掘り出せてよかったなぁ」なんて思わせてくる。スネアの粘り気がいい感じ。

MV全然再生されてないけどホントに現地で人気あるの???


LADIES ROOM

XのYOSHIKIが主宰していたレーベルのExtasy Recordsに所属していたバンド。(後にXと同じソニーへ移籍)
LAメタルの影響を強く受けてる中でもメロディーラインにはどこか親しみやすさがあって、同レーベルでもXやLUNA SEAとはまた全然違う良さを持ったバンド。下世話な歌詞のインパクトが強いが、演奏力は同レーベルの中でも特に高水準。
そこまで詳しい訳じゃないけどExtasyの所属バンドで1番好きかもしれない。

The Very Best of the Golden Fuckin’ 
Greatest Hits Platinum Self Cover Album

96年の一時解散までの曲の再録ベスト盤。中~高校生の頃にちょくちょく聴いてたはずなのにこのアルバムは通ってなかったので2021年になって今更初めて聴いた。

残念ながらネットには音源がないので雰囲気が比較的近いテイクを。

あまりのギターの上手さに最初はPVかと思った。HIDEもPATAもSUGIZOもINORANも皆好きだけど、大人になった今、改めてエクスタシー傘下のギタリストを見直すと自分にとってのギターヒーローはNAOかもしれない。

当時のテイクにはなかった転調が追加された JUST LIKE A CANDY や、大幅に勢いが増したHOT LADYもかなり気に入って、中二病を再発させながら何回も聴いた。

あと後期はシンセを導入してポップ寄りになったりアコースティックの曲があったりして、同系統の他のバンドとは少し違う面を持ってる事も改めて認識した。

おもいっきり胸出てんのに何故か削除されない謎


モーニング娘。

ALL SINGLES COMPLETE ~10th ANNIVERSARY~

黄金期に歌番組で観たりCDを借りたり、周囲の友達にマニアが多かったり、学生の頃にコピーバンドに参加したりしてたのでそれなりに知ってはいたが、オモコロの記事「ハロプロを23年間応援し続けている男が泣いた瞬間」を読んだ流れで福田明日香の卒コンDVDを購入して観て今更ちゃんとハマった。中でも刺さったのは「Memory 青春の光」

基本的にオケでパフォーマンスするイメージがあったのでバックバンドがいる時点でも驚いたが、恥ずかしながら (めちゃくちゃ売れてるのに) 曲の存在自体を知らなかったので初期から黄金期への過渡期にこんな曲がある事自体が衝撃だった。世代的な問題もあるかもしれないが、この曲から「ふるさと」までの曲が個人的には全く記憶に残ってなくて勿体なく感じた。

卒コンだから~ とか抜きにして、福田明日香の存在感とパフォーマンスも凄すぎた。
ギタリストがハイラム・ブロック、リズム隊がブレッカーブラザーズのメンバーというスタジオ版の豪華すぎる人選にも驚いた。ライブのバックバンドも良いが演奏だけはさすがにスタジオ版が一枚上手。

もう一つ衝撃だった曲は「ここにいるぜぇ!」
タカラのe-karaヘッドセットのCMのおかげで子供の頃に耳にしてたので曲自体は知っていたが、知識が付いた今改めて聴くと最初から最後までドラムが凄まじいフレーズを叩いてた事に気付かされた。
開幕の高速ロールからの容赦ない8ビートに、随所で挟まれるスネアのズラしやダブルキックと、これでもかと言わんばかりに技巧が詰め込まれてて、歌モノの裏で体力と技術の両方が問われる曲。一生真似出来る気がしない。
誰が叩いてんだ…? と思ってクレジットを見たら村石雅行で納得。


BOAT

前回のゲームの記事の時に触れた "大学生の頃、Rさん(10年来の付き合いのある先輩) と夜な夜な談義してた時期" に教えてもらったバンド。
twitterではほぼ触れてないが実はめちゃくちゃ好き。めんどくさいオタクなので、本当に好きで大事にしたい物はあえて隠しがち。

なので厳密には2021年に初めて聴いたアーティストではないが、掘ってなかったアルバムを改めてちゃんと聴いたりしたので今回は記事に入れたい。

BOAT(ボート、「BOaT」「boat」とも表記)とは、日本のロックバンドである。元SPACE KUNG-FU MANのAxSxEをリーダーとした男女5人で編成される。
(中略)
1996年、慶應義塾大学の音楽サークル仲間だったAxSxE、しおり、坂井キヨオシ、マユコで結成。当初はジミ・ヘンドリックスのコピーバンドだった。1997年の年末、AxSxEが坂井の家へ行くため東急東横線に乗っていたところ、同じ車両にいたアインが話しかけてきたことがきっかけとなりアインも加入、メンバーが揃う。

BOAT - Wikipedia

何から書いたらいいものか迷って、とりあえずwikiのプロフィールを引用してしまったが「どんなバンドなの?と聞かれた時にちゃんと答えられないバンド」の筆頭。「ポップスとファンクとラウドロックとメタル (と、特に後期はポストロックやシューゲイザー) をごちゃ混ぜにして、中華要素も盛った感じ」とか訳の分からない回答をせざるをえない。

でもとりあえずこの2曲を聴いてくれれば、分かる人には上の怪文書も伝わるはず。

…伝わったでしょうか?続けます。

最初に薦められたのは3rdアルバムの「Listening Suicidal」収録の「狂言メッセージ」で、そこから掘り進めるまで少し時間がかかったので「アルバム内の他の曲も毛色が違うし、1~2枚目と3~4枚目もそれぞれ違うバンドかってくらいに振れ幅が大きすぎる!」と後になって驚いた記憶がある。

2021年になってちゃんと聴いたのは1stの「フルーツ☆リー」と4thの「RORO」

手に入る機会がなくて聴くタイミングもなかったが、いつの間にか1stはApple Musicで配信されていてようやく聴けた。4thは音源は持っていたものの肌に合わず放置していた。

今回初めて聴いたフルーツ☆リーの中で特に気に入ったのは、
アインのキュートな中国語のボーカルが炸裂してる「ウォティパティ」
しおりがボーカルを取ったストレートなロックの「アルゼンティン」
一風変わったアンプラグドの「ネガティブコンディション」
そして初期BOATの良い部分が詰め込まれてる「Mr.グリーン」と「夕日」

というか正直どの曲も良すぎて、これを書いてる今も「この勢いで書くと全曲挙げちゃいそうだな…」なんて困ってる。全曲で30分弱しかないので1度通しで聴いてもらえたら嬉しい。

メインボーカルが取れるメンバーが3人もいるのも、聴いてて飽きが来ず楽しめるポイントの一つ。昔は気付かなかったが「AxSxEの声が所々でhideに少しだけ似るのも親しみやすさを感じた理由の一つかもしれないな…」と最近になって思った。
(変なバイアスのかかった思い込みかな~ なんて気もしたが、Rさんに話したら「節々の発音とシャウトでちょっと寄るね」なんて言われたので正しい感覚だと信じたい)


一方で「ちょっとこの方向性の魅力はまだ自分には理解できないな…」と放置してた、4thの「RORO」は今聴いてもまだ難解に感じた。自分があまりシューゲイザーやポストロックに馴染みがないのが原因だと思うので、勉強してもう少し理解を深めたい。

ただ、最後に収録されてる「Circle Sound」はやっと良さが分かった。

エフェクターや逆再生を (特にドラムに) 駆使するとこんな気持ちのいい音が作れる事に驚いたし、BOAT特有のどこか哀愁のあるメロディーや、同じフレーズの繰り返しや細かい刻みで産まれるグルーヴの熱量に圧倒されて「過去作の時に得意だった事も形を変えて引き継がれてるな…」と、ようやく少し理解出来た。最後のアルバムの最後の曲がコレな理由もなんとなく分かったかもしれない。

本当は2nd/3rdアルバムの収録曲についても細かく書きたいが今回の趣旨から外れるので除外。折を見て何か書くかも。

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