上海便り Vol.10 上海の中のフランス
友人、知人の皆さまへ
新年明けましておめでとうございます。2012年という年が皆さまにとって飛躍の年になることをお祈り申し上げます。今年も宜しくお付き合い下さい。
昨年、出張で一時帰国した際に上海に関する一冊の本を見つけました。みうらじゅんこさんというパリをベースに活動されるジャーナリストが書かれた「フレンチ上海」という本ですが、フランスと上海の関わり、とりわけ列強支配時代にフォーカスして書かれているとても興味深い本でした。1940年台に終焉を迎えるまでの約100年に亘る列強支配時代、フランス租界地は7つの行政区に区分されていたようです。それら7つの行政区毎に現存する建造物などを、素敵な写真とイラストで紹介してくれています。
なるほど上海にはフランスの名残りを感じられる場所が多く点在します。ただそういった場所は、観光客が訪れるようなところではなく、日常の生活のふとした瞬間に感じられるような類のものですから、それらが観光関連の本で大きく紹介されるようなことはなく、上海を生活の場としている人間だけが味わえるちょっとした贅沢みたいなもののような気がします。
この本は2006年に出版された本ですが、上海の開発スピードは凄まじく、恐らく実際に足を運んでみても既に変化しているところも多いでしょう。それでもまだまだ多くの歴史的建造物を見つけられるのはとても興味深いものです。仮に、その後のいわゆる文革がなければ、上海は今よりももっと深みのある街だったのではないかと思います。
日本が明治維新をむかえるよりも数十年前から多くの外国文化と触れてきた街ですから、国際的な感覚をもった人が多くいてもよさそうですが実際はごく限られているような気がします。ホテルのスタッフ達のような若い世代と会話していても、自分の街が以前そんな歴史背景のある街だったことなどはあまり意識していないようです。もしかしたら、その辺りの教育はあまり受けていないのかもしれません。やはり、文革の傷跡は大きいということでしょうか。
新しい1年が始まりました。昨年の振り返りや今年の目標を考えていらっしゃる方も多いかもしれません。昨年はじめの上海着任からちょうど1年が過ぎようとしています。文字通り休み無く働いた初年度でしたので、あまり上海の多くを語れる一年ではありませんでした。今年はもう少しだけ上海という街に溶け込んでいきたいと思っています。まずはその手探りにこの本で紹介されている7つの行政区巡りから始めてみようと思っています。また新しい何かを発見できたらこの便りの中でも触れていきたいと思います。
90年代の上海駐在時代は、押田洋子さんの「中国お皿の上の物語」という本が私の中国生活の指南書でした。中国各地の料理やエピソードを愛らしいイラストで紹介してくれている本ですが、料理のみならず中国の文化や習慣を知ることのきっかけになった大変思い出深い本です。今回出会ったこの「上海フレンチ」という本が、また新たな学びと喜びを与えてくれる良いきっかけになってくれることを期待しています。
上海は魔都と呼ばれた1900年代の列強の外国人居住地の面影と、中国最大の都市として正に現代中国の“今”を感じることができるエキサイティングな街です。東京から上海まで飛行機でわずか3時間足らず。まだの方は是非一度お越しください。
(この投稿は2012年1月にメールベースで友人知人の方へお送りしたものを一般投稿用に一部編集してお送りしているものです)
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