見出し画像

日系ホテルの進出地 その4 ニューヨーク

日系ホテルチェーンの海外進出地について解説するシリーズ、その4はニューヨークです。

世界の中心、ニューヨーク

アメリカの中心、経済と金融の中心、エンターテイメントの中心、ニューヨークは文字通り世界の中心として常に時代の先端を走っている街ですが、邦人も居住率も常に上位に位置しており、2023年10月の外務省公表の都市別の在留邦人数では、1位のロサンジェルス都市圏の6万人、2位バンコク5万人に次ぐ、第3位(3万人)に位置しています。(僅差で上海、そしてロンドンと続きます)

日系ホテル進出の歴史

日系ホテルの進出の歴史を見ていきましょう。

古くは、中堅ゼネコンの北野建設が「キタノホテル」を1973年にリブランド開業します。当時としては、日系ホテルがアメリカでホテル経営を行うというのはかなり珍しいチャレンジであったと思います。同ホテルについては、去る2023年にプリンスホテルへの運営受託によるダブルブランド「ザ・プリンスキタノ ニューヨーク」・として現在も運営を継続しています。

また、バブル経済の最中、ニッコーホテルが老舗エセックスホテルを買収しニューヨーク進出を果たします。同ホテルについては、JAL母体での経営に行き詰まり1999年に売却、その後、ウェスティン、ジュメイラ、マリオットと資本とブランドの変遷しつつ、直近は中国資本から韓国資本への移り引き続きエセックスの冠を掲げた営業を続けています。

新たな勢力

その他のチェーンの進出状況はいかがでしょうか?

以前記事にもしましたが、「アパホテル」は海外進出のベースを北米においており、ニューヨーク近郊にも店舗展開を進めています。また、HIS資本の「変なホテル」ですが、韓国での初海外進出につぎ、2店舗目はニューヨークへ2021年に進出を果たしています。アジアでなくニューヨークへ出店するあたり、他のチェーンとはちょっと異なる展開方針です。

意外に進まない日系のニューヨーク進出

さて、ニューヨークの経済規模、そして邦人在留数からすると、日系ホテルの進出状況はそれほど進んでいない印象です。何故なのでしょうか?

先ず、運営受託による案件の少なさです。ニューヨークでの邦人宿泊需要は少なくないですが、一方、日本人マーケットへ特化したホテルを展開したいと思う投資家(オーナー)はそれほど多くはないでしょう。上述のキタノホテルがプリンスホテルへ運営受託したケースは日系同志のタイアップであり、むしろレアケースといえます。

一方、直営方式による展開はどうでしょう? やはりネックとなっているのは立地や時差などから来る管理の難しさなのでしょう。チェーン展開が進み、各エリアへリージョナルオフィスを立ち上げられる規模となればさておき海外進出当初の管理体制はどうしても脆弱で、本部からの直接の管理となりがちです。多くの日系ホテルの本社は東京ですから、ニューヨークの立地や時差は進出においての障害の一つです。

そんな中、前述の「変なホテル」はあえて北米進出に踏み切りました。時代の最先端を行くニューヨークと、日本のテクノロジーの融合を目指す同社のコンセプトがフィットしたのでしょう。この試みが上手く機能すれば、新しい形の日系ホテルの海外進出がより加速していくかもしれません。

今後の動きを是非注視していきたいものです。今日はこのあたりで。

ホテルマネジメントの達人

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?