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『藤子不二雄Aのブラックユーモア』について

 藤子不二雄といえば、藤子F不二雄と藤子不二雄Aがコンビでやっていたペンネームだが、自分はF先生のほうが馴染みがある。子どものころからドラえもんが大好きでコミックスは全巻持っていたし、F先生のSF短編集なんかも結構読んだことがある。

 ところが、A先生の作品は、自分はあまり馴染みがない。『まんが道』は大好きで全巻持っているが、例えば『笑ウせぇるすまん』とか『プロゴルファー猿』とか『怪物くん』とか、ほとんど読んだことがない。

 自分の記憶が正しければ、多分子どものころに行っていた散髪屋に『ドラえもん』と『プロゴルファー猿』、『笑ウせぇるすまん』が置いていて、自分は『ドラえもん』は大好きになったけど、A先生のマンガにはほとんどヒットしなかったのだ。理由としては、A先生独特の黒さが、当時の自分は受け付けなかったのだと思う。

 もしかしたら大人になった今の自分なら、A先生のマンガも面白く感じるかもなと思い、表題のブラックユーモア短編集を買ってみた。結果、けっこう楽しく読むことができた。自分も大人になり、A先生のブラックでダークな部分が受け入れられる土壌ができてたんだろうなと感じた。

 この短編集はギャンブルとか旅行とか変質者とか、とにかく大人向けの題材が扱われているし、バッドエンドのものも多い。多分、子どものころの自分が読んでも意味がわからないと思うんだけど、大人になった今だからこそ刺さるものがある。それは、人間の持つ黒さとか、人生の割り切れなさとかやるせなさみたいなものを多少なりとも自分が知っているからだと思う。

 付き合う人間にしても、優しさとか明るさだけでなく、黒さとか影みたいな部分を持っている人のほうが逆に信用できる。音楽でも本でも映画でも、それは共通していると感じた。

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