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山の上ホテルに行ってきたレポ

私はこの日を本当に楽しみにしていた。
正月に何か新しいことを始めたくてNHKのカルチャーセンターのサイトを眺めていたら出逢ってしまったのだ。
当初の予定(習い事)で探していたものとは裏腹な1日講座。しかもランチ付き。
来る2/13に休館してしまう山の上ホテルの館内見学とフレンチランチを堪能出来る講座であった。
開催日が日曜日な上に残席「あります」との文字。
え、あるの!?
普通にホームページからレストランの予約取ろうと思ったらもう取れん時期やろ!?
教授の講義も聴けるんなら15,000円(NHKカルチャー会員価格)は惜しくない!
即決だった。

しかし、生憎当日の天気には恵まれず、雨と寒さに耐えながら、まさに「山の上」――急勾配の坂道を登った。
何故かGoogleマップの言う通りにしたら正面玄関が見つからず、地下1階のコーヒーパーラー横の入口に到着。そこからホテル1階にある「銀河の間」へ向かった。

銀河の間前に集まったNカルメンバーは予想通りの年齢層だった。50~60代のベテランマダムズが大半で、20代など私しかいなかった。(乗ってくれそうな友達誘ったんだけど平日休みだったんだよねー)
全然楽しいし、ランチが絶対食べたくて、マジぼっちとか平気だし覚悟の上で来てたけど、「何だこの小童が」とか思われてないかなという不安が出て来た。帽子で顔を隠して時間までそわそわ。
名前を告げて受付を済ませると、そこはシャンデリア輝く大広間。
ホテルの大広間に色んな人達が集められてんのって(自分達で集まったんだろ)あれじゃない?殺人事件起きるやつじゃない!?!?
とか謎にドキドキしながらホテルマンの話が始まるまでの時間を待った。
かつて文豪達に愛されたホテルは、閉館間際の今も大盛況で、ホテルマン達も慌ただしかった。大広間には様々な作家からホテルへの賛辞が綴られた手紙が飾られていた。

2班に分かれ、ホテル内を案内される。私は教授のいる班に混ざった。1階からスタートしてすぐ階段を降り、螺旋階段についての説明を受けた。地下1階から見上げると、頭上にステンドグラスが現れる。
ホテルの階段には赤絨毯が敷いてあるのだが、地下1階の階段の一部については捲ったら装飾されたタイルが出て来たため、絨毯が敷かれていないらしい。

列を作って地下1階のコーヒーパーラー横の階段を下る。
コーヒーパーラーでお食事をしている、ピンと背筋の伸びた品の良い20歳そこそこぐらいの兄弟2人と両親の4人家族が目に入った(若い男の子大好きだからね)。何と教養のあるご家族であることよ。
ガラス越しにその脇の階段を降りると「葡萄酒ぐら モンカーヴ」に到着。現在は休業中だが、特別に覗かせてもらった。
薄暗い、お洒落なワインバーだった。
教授曰く、バーカウンターと椅子の高さが絶妙なバランスとのこと。ステンドグラスで出来たランプシェードが所々にあるのが印象的だった。

1階に上がり、「天ぷら 山の上」の横にある「Bar Non Non」も覗かせてもらった。こちらはまだ営業しているが予約でいっぱいとのこと。モンカーヴよりも狭く、バーカウンターと椅子のみがあった。バーカウンターの奥には沢山の酒瓶が並んでいる。重厚感のあるオーセンティックバーだ。

そこから、エレベーターに乗り5階へ。
客室を見せていただいた。
まずは、展望室付きで眺めが素晴らしいが、老朽化の関係で宿泊用としてお売り出来ない部屋についてのご紹介と説明。
その後、ジュニアスイートルームと和室に入らせていただいた。
今は隣が明治大学のキャンパスとなってしまったが、昔は高い建物が周りに無くて眺めが良く、静かだったので、文豪が作品を生み出すのにとても良い環境だったそうな。また、筆の遅い作家はこの客室で「かんづめ」にされていたという。
和室に関しては、池波正太郎氏が好んで利用されていたらしい。彼はご自宅でお仕事をされる為、ホテルの和室を利用する際は、自分の休養と、ご自宅で世話をしてくれている奥様や使用人を休ませる目的だったようだ。
どちらの部屋にもウェルカムフラワーとして一輪の赤い薔薇が飾られている。廊下の棚の上にも飾られていた。

5階から螺旋階段を降りて、地下1階まで降りた。途中途中に階数の標示があるが、これもステンドグラスで作られている。

ここで銀河の間へ戻り、念願のフレンチランチである!
席に着くと、ほどなくして右隣のマダムに声をかけられ、1人で参加なのかと尋ねられた。マダムも1人参加なので話しかけても良いかとのことだった。人見知りでぼっちなのは平気なので、普段なら黙々と1人で味わい、噛み締めるタイプなのだが、せっかく声をかけて下さったのでお話しした。マダムはここに参加している人のとりあえず誰でもいいからとても聞いて欲しいことがあったらしい。
「私ここのホテルに因縁があってね! ホテルの別館で38年前に結婚式を挙げたんだけど、当時、新婦は式中にご飯を食べる事が出来なかったの。今の子達だと新婦さんでも結構パクパク食べちゃうと思うんだけど、当時はね。それで、ここのホテルとても丁寧だから、その時の私の分のお食事を折り詰めにしてくれたんだけど、実家の母がそれを食べちゃって! 結局食べれなかったからここのフレンチずっと食べたかったのよ! 38年越しに食べれるわ!」
小噺にぎゅっと掴まれてしまい、その後もマダムと談笑しながらランチを楽しんだ。
人見知り過ぎて中高生の頃は毎年9月下旬の文化祭を過ぎないとクラスの子全員と打ち解け切れないこの私が。快挙だ。ひとえにマダムのコミュ力のおかげである。
偶然にもマダムと趣味が一緒で、観劇や宝塚の話題に花を咲かせた。とても楽しい時間を過ごさせて頂いた。

スモークサーモンとプティサラダ  マンゴーソース
マロンのポタージュスープ
牛フィレ肉のグリエ  赤ワインソース
山の上ロールとラズベリーシャーベット

他に、スパークリングワイン、パン、コーヒーも頂いた。
牛フィレ肉のグリエの付け合せのポテトミルフィーユがとても美味しかった。5個ぐらい食べたかった。勿論牛肉も柔らかくて美味しかったし、ボイルされたスナップエンドウと芽キャベツも美味しかった。
ロールケーキは山の上ロール。驚く程ふわふわだった。

私とマダムの会話は、徐々に恋バナに差し掛かった。マダムのお嬢さん達がなかなか結婚せず、次女に至っては最近推しが出来たという。
てっきりアイドルか俳優だろうと思っていたらバンドマンだった。
「sumikaっていうバンド、知ってる?」
な~るほど、そっち系ね(どっち系?)。あーはん。
sumikaとそのバックバンドのファンで、この間は仙台まで追っかけをしていたらしい。リモートワークが出来るから、仙台までPCを持って行ってホテルで仕事して、夜ライブを観て東京へ帰ったらしい。良いなぁ~。リモートワーク最高かよ。推し活と親和性が高過ぎるだろ。

食事を終え、教授がホテル近辺の建築物と聖橋について解説をしてくれるので付いて行った。
道中、マダムに結婚式を執り行った別館の位置を聞いたら、もう明治大学の敷地となってしまい、なくなってしまったのだという。旦那様は趣味で音楽をやっていたので(ドラマーらしい)友達とバンド演奏をしたり、賑やかな結婚式だったようだ。なるほど、sumikaの追っかけ話が何となく繋がった。
マダムがケーキを買っていたのを見て、一旦教授の解説を聞きに行ってから、また1人でホテルへ戻って家族用にケーキを買いに行った。
雨は少しあがって、雲の間から晴れ間も覗いていた。
傘を畳み、ここでやっとエントランスからの眺望をじっくり見た。小高い丘の上から見る御茶ノ水エリアは、まさに「山の上」からの景色だった。

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