見出し画像

後方の安定は重要です。

実は私、令和6年1月1日付で勤める会社が変わりました。
こんな風に書くと如何にも転職したように聞こえますよね。
ごめんなさい、ちょっと驚かせようと思って、ワザとこんな書き方をしたのです。

会社が変わったのは事実ですが、その内容は「転籍」です。
今まで出向社員として勤務していた「現在の勤務先」の出向を解き、出向先の社員に登録を変更した…ということです。
ですから、勤務する会社は変わったのに勤務地も勤務内容も変わらないのですよ。
ましてや新たな所属となった会社は、そもそも旧所属の完全子会社で、労務管理や賃金体系は全て共通なので、待遇面の変更も一切なくて、有給休暇の残数も引き継がれるとか、それこそ本当に勤務先の登録が変更になっただけなのですけとね。

私の勤める会社の分野としては、以前からお話ししていた「食品製造業(メーカー)」から「運輸倉庫業」になるのですが、そもそもが親会社である「食品メーカー」の原材料と製品の保管を安定して行うことを主目的として存在する都合、食品メーカーのロジスティックス部門に特化した位置付けになるワケで、元の勤務先であるメーカーとは共同体なのです。

前の食品メーカー時代を含む24年強に及ぶ、このグループ企業の勤務期間で、私はいろいろな業務を経験してきたのですが、その中で一番長く実務に携わっていたのがロジスティックスに関する部署でした。
出向する前から「安定供給」という業務は、私の身近な命題だったよな…と、改めて思うのです。

さて…。
私が転籍になったその日、能登半島を中心とする大きな地震災害があり、今現在もその救助救援活動が続いています。
地震でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆さまにはお見舞い申し上げます。
また、大変厳しい状況の中で救助救援活動に尽力されている皆さまのご安全をお祈りいたします。

各種報道を見るに、救援隊がなかなか現地に辿り着けない事実や、救援物資が届かない状況に、その「少しでも早くを願う気持ち」を鑑みても苛立つ反応が多いことを、私は残念に思っています。
ただね、災害救助/支援というのは、支援する後ろ盾が盤石であることが大前提なのですよ。

運輸流通業界で言う「ロジスティックス」という言葉はもともと軍事用語で、日本語では「兵站(Military Logistics)」と言います。

兵站(へいたん、英語: Military Logistics)は、軍事学上、戦闘地帯から見て後方の軍の諸活動・機関・諸施設を総称したもの。
戦争において作戦を行う部隊の移動と支援を計画し、また、実施する活動を指す用語でもあり、例えば兵站には物資の配給や整備、兵員の展開や衛生、施設の構築や維持などが含まれる。

wikipedia「兵站」より

東日本大震災が発生したのは2011年3月11日のこと。
当時の私は、親会社である食品メーカーの受注業務を掌る事務を担当してまして、震災の混乱の中で膨れ上がる受注対応に追われていました。
あの時は被災地域が広く、東北方面からの物流がストップした首都圏の小売各社が商品確保のために一斉に仕入れ先を変更したワケで、稼働でき、物理的に納入可能な地域のメーカーに想定外の負荷がかかったのです。
数ヶ月程度の長期保管が可能な商品も生産していながら、被災地への直接支援に回る余力は…ありませんでした。

その当時は、フル生産でも受注を受け切れずお断りをする状況を歯痒く思っていたのですが、ウチの会社と同じようにフル生産して供給するメーカー各社が、十分とまで行かなくても何とか首都圏の需要に応えていたからこそ、首都圏の混乱を電力供給を中心にした問題に抑え込むことができたのだろう…と私は思っています。

災害が起きれば、それが大きくなればなるほど、現場前線の状況が気になるところですが、それは後方の状態が現場前線の足を引っ張らない環境でこそ言えるハナシなのですよ。
現場前線に注力するばかりに後方が手薄…は、活動を継続する上では最悪手なワケです。

私の自宅は、今回の地震では数時間の断水があっただけで、被害を受けることはありませんでした。
ただ、東日本大震災の時に経験した「後方支援の大切さ」は、私の中に活かされていると思います。
あの時のフル生産は、災害の指揮系統の中で、首都圏の食料品供給にリソースを割かなくて済む環境作りに貢献した…コレは供給という意味で広義のロジスティックスに当たると思っています。
後方の混乱を避けることは、災害支援活動で重要な要素…と、私は実感しているのです。

日々できる平時のことを淡々と。
それが私にできること。
現場ではなく後方にいる Autistic な私が、私の特性を鑑みて思うのは、現場の現状を指摘して、誰かのリソースを奪うことではない…と思うのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?