演劇人×酒

酒が好きだ


酒が好き、というよりは、酔うのが好きだ。
味を嗜みながら「焼酎には甲類と乙類があってね」とか「吟醸と大吟醸の違いはね」とかオッサン同士でやってるのも風情があるけれど、基本的には老若男女入り交じって安酒バカスカってのが一番楽しい。

演劇をやってる人は酒好きが多いと思う。

僕ら黒ヒゲキャラバンは、舞台の中によく酒が登場する。フリとかじゃなくて普通に飲んでる場合も多い。未成年の役でもガンガン飲む。(これはもちろん中味は酒じゃないけれど)

稽古が終わったら酒を買って帰る。
公演が終わったら打ち上げで飲む。
新年会忘年会とか言って飲む。
決起会だとか暑気払いだとか言って飲む。
自分へのご褒美とか言って飲む。

吐くまで飲む人も多い。
うちの副代表とかは下向くと吐くからって上向きながら呂律回らない言葉で喋ってたりする。(そして帰りの車で吐く)

僕も大体記憶がない。朝起きると携帯割れてたり、送った覚えの無いLINEに平謝りしたりする。酒飲むと要介護になる。玄関で寝てた事もある。

これは僕らの劇団だけかってと、そうでもない。演劇やる人たちは総じて酒が好きだ。

演劇界隈では「自分をさらけ出す」というのが美徳と受け取られる風潮がまだ根強い。世間ではライトな付き合いが流行ってるけれど、ライトな付き合いでのドラマがまだまだ舞台では確立されていない。

基本的に舞台は「密」なもので、その「密」の中で強烈なパッションと理性のせめぎあいで熱を帯びる、という感覚がまだまだ根強い。

酒は、手っ取り早くそういう関係性をブーストしてくれる。麻薬みたいなもの。そして、芸術をやる人にとっては命の水だったりするのだ。

「いやいや、そんな考え方は古いよ。」とはなるんだけど、そんなに簡単にアップデート出来るのなら苦労はない。何だかんだで「酒クズ」の書く作品は面白い。

弱さや汚なさって、不思議と心が休まるものだ。(崇高な作品ばかりだと、疲れちゃうでしょ。)

そう、僕たちはより良い作品の為に酒を飲んでいるのである。


「お前らは酒に頼らないと作品が書けないのか」という声が飛んできそうだが、

「お前は面白い作品を書くために手段を選ぶ人間なのか」


と言いたい。

正直、薬物で捕まったASKAとかマッキーとかも、「作品のためにそこまでのことを…ほろり…」ってなったものだ。

Beatlesのリボルバーなんて薬物の力が無かったらこの世にあっただろうか。

そんな僕らも健康には気を使っているチキン集団なので、現実的なドーピングは「酒」なのである。

「ドーピングなんて邪道だ」という人は、どうか正しい道でルーシーイン・ザ・スカイダイヤモンドを作曲出来る方法を模索してほしいものである。

演劇人にとっての飲酒は、ただの娯楽では無いのだ。

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