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優しい干潟

干潟の満ち潮は優しい。
ほんとうに小さな波がゆっくりと干潟を這うようにやってくる。
少しずつ干潟が水面下に隠れていく。

まだ、水没していない干潟のあちこちに小さな穴が開いている。
その穴のそばに立ち止まり、しばしじっとしていると…。

突然穴から小さなカニが現れる。

甲羅の大きさは人の爪の大きさほど。
チゴガニというらしい。
あっちの穴から、こっちの穴から、あちこちの穴からこの小さなカニが現れる。
そして、はさみを振り上げたりおろしたり。
ウェービングというなわばりの主張らしい。
隣のカニとリズムを合わせるかのように同時に振り上げては降ろす姿もあり面白い。
人が動くと、一斉に穴の中に隠れてしまう。
そばにいる人には反応するが、近くの車道を音を立てて通り過ぎる自動車の音や微動には無反応。
慣れているのか、そのくらいでは危険を感じず無視なのか?
こちらがじっとしていると十数秒で再び現れてはさみを上げたりおろしたり。
小さいからかわいい。
見ていて飽きない。

干潟の奥に広がる葦原。

その中に紛れ込んだハマヒルガオ?

干潟の森から聞こえてくる鶯をはじめとする様々な鳥の声。
鶯以外は、鳥の種類がわからないのが残念。

干潟のへりに一日中たたずんでいたい気持ちになる。
干潟は優しい。


※2024年5月 神奈川県三浦市松輪の江奈干潟にて