地域医療に必要な「慮る力」を涵養するには「恋愛」すべし!

「地域枠新入生説明会・交流会」にてお話ししたことなんですが、我ながらいいこと言ったな、と思うのでこちらにも書いてみたいと思います。note初投稿になります。よろしくお願いいたします。

初投稿なんで自己紹介をいたしますと、1993年に医学部卒業、日本内科学会の認定医・専門医・指導医、日本呼吸器学会の専門医・指導医、学位を流れに乗って無事に取得した後、2010年ごろから『やさしイイ』『楽しイイ』『ただいま診断中!』シリーズを世に出させていただき、教育ってどうやったらいいんだろう、ということを思い悩み考えるようになって、そのうち道を外れ?教育に取り組むようになりました。
現在は医学教育オタク兼胸部X線写真オタク兼スイーツオタク兼NMB48在宅DDとしてやらせてもらっています。どうぞお見知りおきのほど、よろしくお願いいたします。


地域医療にかかわるうえで「慮る力」というのは必要不可欠なものです。

そこで、その昔(1987年)私が大学に入学した当時の解剖学の教授が、新入生の挨拶の時に述べられたお話だったかと思いますが、すっかり忘れていたのですが最近思い出したことがあって、昨日はその話をさせてもらいました。

当時はおそらくウチの大学では研究とかが盛んで、あまり患者さんの気持ちを慮る医師が少なかった、ということがあったのかもしれませんが、それでそういう話をされたかと思います。

このたびの地域枠の学生さん、つまり今後地域医療というものに向き合っていただきたい学生さんに対して、だからこそ申し上げる必要があるなあと思って申し上げた次第です。もちろん地域枠、地域医療に限ったことではなく、医療にかかわるすべての方にとって大事なことですけれども、特に地域枠、地域医療の現場で大事なのは、患者さんの気持ちを理解する、少なくとも理解しようとする姿勢ではないか、と考えるところです。

患者さんだけではなく、患者さんのご家族、あるいは一般の市民の方、そしてもちろん同僚、ともに働く同僚や他職種の皆さんの気持ちを分かろうとすることなく医療を進めていく、ということは正直あまり現実的ではないでしょう。

ところが、現役あるいは一浪二浪あたりで入学してきたような年代の地域枠の皆さんに、言っちゃあなんですが他人の考えを慮るということは期待できないと思います。そこでこの貴重なこれからの6年間(ないしそれ以上……)の間に他人の気持ちを思うばかり訓練をしていただく必要があり、そのための劇薬?とも言えますが 特効薬として「恋愛」という経験があるわけです。

これは決していやらしい意味ではなく、恋愛している時は嫌でも相手の気持ちを慮るじゃないですか。相手が何を考えているのか?ということで一日中頭がいっぱいになったりすることもあるのではないでしょうか。というか、そういう恋愛でないと意味がない。体の関係だけ、とか、そんなのは恋愛とは言わない。そういうきちんとした恋愛の過程を経ることで相手の気持ちを推し量る、少しでもそういう訓練をしておく必要があるのではないかと思います。

もちろん10人も20人もそういう経験ができる人は稀ですし、そんな雑な恋愛にもそれほど意味はないと思いますが、1人でも2人でもいいので、相手の気持ちをとことん考える、相手のちょっとした言動や態度・姿勢などから相手が何を考えているかを推し量る、という訓練をしておくことは、臨床現場に立つ時にきっと役立つだろうと思います。

件の会ではここまで申し上げて、私の隣におられたS先生はそういう意味で「地域医療及び恋愛の達人」であらせられるのですが、それに対して言及することをちょっと忘れてしまっていましたので、ここで申し添えておきたいと思います……。

もっというと、他人の人生・気持ちを推し量るには他人の人生・バックグラウンドを少しでも理解しておく、解像度を上げておく必要があり、そのための訓練として読書、小説などをたくさん読むことが有用であると考えます。やはり知らないことに関して考えが及ばないのは自明のことでありますし、多くの事例を知っておくということは重要なのですが、他人の人生を知る、などということはそんなにたやすくできることではありません。しかしながら物語・小説などを読むことで他人の人生の追体験ができるわけで、これも大切な体験かと考えるところです。

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