見出し画像

「絶対零度」の未来に 赤い公園はあるのさ

・2020年僕が一番聴いていた曲がおそらくこの「絶対零度」です。

・1月リリースだったからというのもありますが、とにかくハマってずっと聴いてました。研究室でリピートで流してたら「流石にそろそろ変えてほしい」言われるくらいに。


・この曲は赤い公園のもつ「カオスさ」と「キャッチーさ」の塩梅が絶妙で、めくるめく展開に圧倒されているうちに終わってるんですよね。


・故障かと疑うほどの刺々しいノイズ音から始まるイントロ、方言混じりでおどろおどろしい雰囲気の漂うAメロ、と前半は不気味で混沌とした流れが続きます。

・一転Bメロではドーンと視界が開けるような壮大なスケール感へと展開。どこか合唱曲のような頭に残る印象的なメロディから、そのまま四つ打ちの疾走感溢れるキャッチーなサビへと突入。

・また急に人が変わったかのようにAメロへと戻り、5拍子がリズムを狂わせる奇怪な間奏へ...


・といった具合にこれでもかとグワングワンに聴き手を振り回してきます。

・ただ不思議と1回聴いただけでもサビはすごい耳に残るんですよね。そこまでのカオスな助走がキャッチーなサビを際立たせてるというか。

・そんなサビが際立つ一つの要因として、実はこの曲『3拍子』『4拍子』『5拍子』が複雑に入り混じっているんです。


絶対れえど-11

・お馴染みの曲構成可視化図に『何拍子で演奏されているか』を加えてみました。

・ポイントは「基本的にサビが4拍子でそれ以外が3拍子」になっているというところ。

・気になった方はこの図を見ながら手でカウントしながら聴いてみてほしいのですが、不気味なAメロと壮大なBメロは「1,2,3 / 1,2,3」と3拍子で演奏されています。

・そしてサビからは「1,2,3,4 / 1,2,3,4」の4拍子で縦ノリ感のある演奏へと変化することで、その3拍子とのギャップが疾走感あるサビをより印象づけているというわけです。

絶対れえど-11のコピー

・さらに図をよく見てもらえるとわかると思うんですが、Bメロからサビへの切り替わりで4拍子になるのではなく、拍子自体はちょっと早めに切り替わってるんです。

・歌詞で言うところの「燃『え』るような赤い魚」の『え』から、「1,2,3,4 / 1,2,3,4 / 1,2,3,4 」と4カウントを3回繰り返してサビに入ります。2回目のBメロだと同じように「燃『や』し尽くして〜」の『や』からで、最後に余分にハイハットで4カウントが入ります。分かりやすいですね。

・このようにパートの移り変わりのちょっと前からヌルッと拍子が変わってることで聴き手に大きな違和感を抱かせないみたいなことになってんのかなあ、とか。もう正直ここまで来ると真相のほどはよくわかりませんが、まあ面白いですよね。




「息を吸って吐くことが奇跡なんだと知っても」
「あたり前の毎日が贅沢だと学んでも」

・2回あるBメロのそれぞれ1節目の歌詞がすごい好きです。壮大なメロディーと相まってすごい耳に残るんですよね。「知っても」「学んでも」と曲中で続くように、わかっててもついつい忘れちゃうことを改めて刻み直してくれる。

・曲がかかってない時にふと口ずさむのはだいたいここのフレーズな気がします。


「絶対零度の未来に永久保証は無いのさ」
「絶対零度の未来に持ち物リストは無いのさ」

・サビのこの1節も好きです。「先行きの見えない未来」としての『絶対零度』という表現に、「永久保証」「持ち物リスト」という言葉のチョイスがなんとも秀逸ですよね。「この先何が役に立つかなんてわかんねーーっつーーの!」っていうね。



・はい!ということで、めちゃくちゃ聴いてるだけあってかなり色々と詰め込んでしまいました。


・赤い公園はここ1,2年でよく聴くようになって、だけど実際CD買ったりライブに行ったりみたいな金銭的な貢献って全然してなくて、それで去年は当人達も望まぬ形で注目されることになって、そこで今更「よく聴いてたからおすすめです!」とか言ってるのもなんだかどうなんだろうか?とかまあ色々思ったりもしたんですが、いつであれどうであれ「良いものを良いです」と紹介するのに悪いことはないだろうということで今回は書いてみました。

・『応援してた』『好きだった』とかって結局は形に残さないと相手には何も伝わらないわけで。そういった後悔を自分の中に生まないためにも、使えるお金は使っていく。残せる形は残していく。こうやって誰かが読むかもしれない適当なレビューを書くのも、形の残し方の一つとしては、アリなのかなあと思ったり。


・まあ拍子の話とかはもうどうでもいいんで、よかったら聴いてみてください!

・それでは!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?