彩の魔法使いは今日も彩る 一話

魔法界では、魔法士を目指すものは養成校に通うべし。と掟が存在する。それは誰かが決めたものでも無いが、自然とそういう流れがいつのまにか出来ていたのだ。
 今日も、そんな魔法使い養成校での慌ただしい日常が幕をあける・・・・・・

 私の名前はコロレ・プリマリーナ。魔法使い養成校に通う魔法使いです!
 今、薬学の先生であり担任であるメル先生からの課題である人形の一部を魔法で動かす練習をするために、友達のマユちゃんと練習しています!
「むー・・・・・・えい!」
「あちゃー。また失敗だね」
「なんでー!」
「本当なんでだろう。術式も間違っている様子も無いし・・・・・・調子が悪いのかな?いつものやってよ。ほら!あの色変えの魔法!」
「え?うん」
「いややっぱ色を変える魔法はすぐ出来るんだね。さすが彩の魔法使い」
「えへへ~」
 ここは魔法使い養成校のとある空き教室。この学校は空き教室で魔法の練習をしてよいということになっている。もちろん、許可を得てだ。
「おーい、お前らもうすぐ時間だぞ~」
「はーい!あれ?メル先生は?」
「メル先生はまた王水に対して実験して大惨事になってな。変わりに俺が来たんだ」
「そうなんですか?ドリム先生も急がしかったんじゃ?」
「さすがに生徒の様子を見る余裕くらいある」
 ドリム先生は魔法学という授業を受け持つ先生だ。魔法の扱いがとても上手い先生として有名で、いつも急がしそうにしている。にしてもメル先生、これで何回目なんだろう。なんだか数日前にも見た気がする。
「本当?あ、そうだ、ドリム先生に相談が」
「なんだ?」
「この子、さっきまで人形の一部を動かす魔法を練習していたんですが、どうにもうまくいってなくて」
「ふむ・・・・・・見せてみなさい」
「はい。んーー・・・・・・えい!」
「・・・・・・術式に変化は無し、か」
「でしょ?他の魔法は大丈夫だったんだけど」
「うーむ。プリマリーナ、お前自然にあれ、使ってるだろ。たしか、7色の彩り(カラーズヴィジョン)だったか?」
「え?」
「無自覚か。簡単にいうとだな、今お前は色を塗ろうとしているところに消しゴムをかけて白くしているだけになってるんだよ。魔法は同時には発動できないからな」
「えっと・・・・・・どうしたら」
「一旦色という概念を無くしてみろ」
「分かりました・・・・・・えい!」
「あ!人形の右手が動いた!」
「ほらな?」
「先生?助かりました!ずっと困ってて・・・・・・色を塗る以外、出来ないと思ってました」
「まぁ、さすが彩の魔法使いと言われるだけあって、色を塗る事に関してはお前の右に出るものはいないからな。あんなに大変な作業をすぐ出来るようになるんだから」
「本当!魔法知ってから色を塗るのがあんなに大変だなんて知らなかったし」
「魔法は想像力。お前にとっては魔法のイメージが昔から色に関することだったんだろう。だから自然に発動してしまったんだろうな。大方、色を塗る要領でとか考えてたんじゃないか?」
「はい・・・・・・」
「お前の課題は、思考の切替だな。それぞれでイメージを変えていくんだ。そうすればうまくいくだろうさ」
「はい!先生、ありがとうございます!」
「いいってもんさ。後片付けはしておく。もう帰りなさい」
「ありがとうございました!」
 イメージ・・・・・・か。考えたこともなかったけど、確かに、いつも魔法を使うとき、色を変えようとしたときと同じ事を思ったときはうまくいかなかった。
 昔から、これで魔法を使ってきてたからなんとかなるんだと思ってたけど・・・・・・

「いやー、本当、うまくいってよかったねコロレ!」
「うん!ありがとうマユちゃん!」
「あら?なにがうまくいったのかしら?」
「メル先生!?」
「後始末は・・・・・・」
「そんなものとっくの前に終わってるわよ。まぁ、あたしもそろそろ反省しなきゃね。教え子の成長を見届けられないなんて!」
「あ、あのメル先生が反省を覚えるなんて・・・・・・!」
「マユちゃん?どういうことかしら?」
「いえ!なんでもないです!」
「まったく・・・・・・コロレちゃん、話はドリム先生から聞いたわ。だからあたしからも一つアドバイス」
「なんですか?」
「貴方のそれは立派な個性よ。だから悲観しないで。きっとそれが上手く役に立つ日が来ると思うから」
「え?」
「ふふ、この真意は貴方自身が気づくものよ。だからこれはあたしから貴方への未来の宿題。いつか答えを聞かせてちょうだい」
「はい!」
「ふふ、いい返事ね。じゃあ、今日はお疲れ様、また明日」
「はい!私、頑張ります!では、さようなら!」
「メル先生さようなら~」
「・・・・・・ねぇコロレ、メル先生が言ってた事分かった?」
「んーん。でも、いつかは分かりそうな、そんな気がする」
「そ。まぁコロレがいいならそれでいいや」
 そう。今はわからない。だけどメル先生が言ったこの言葉が、なんだか私を変えてくれそうな、そんな予感がするのだ。
 そんな謎の予感を抱えながら、私は家に帰ったのだった

以下、読まなくてもいいキャラ設定

マユ・スーネズ
コロレの友達、女生徒。ボーイッシュな見た目をしている
ドリム・フォーチュソン
魔法学の教師。口癖は想像力を働かせろ。生徒から良く頼りにされる。
メル・プリテンティブ
薬学の先生、コロレ達のクラスの担任。よく変な薬物を作っては大惨事を起こす。なんでかよく王水が生まれる

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