忘年怪異 #毎週ショートショートnote
「今宵は無礼講じゃ! 乾杯!!」
上座で音頭を取ったのは派手な着流しの丁髷男、織田信長。
ここで開かれるのは大忘年会だ。集まったのは性別も年代も、時代も異なる約千人。信長公は毎年適当な人を選んで呼び寄せる。
“歳も位も全部忘れて騒ぎ倒そう”。年に一度の大騒ぎだ。
太宰と紫式部がアガサ相手に管を巻き始め、絡まれる前に離脱。もう席順もあったもんじゃない。
どこか空いている席は無いかとハイボールを持ってうろつく。
すると、下座も下座。長机の端で縮こまるように正座している男が一人いた。
「おい、どうした?」
「あ、あぁ、あの……」
隣に座って覗き込むと、その顔色の悪さに驚く。
「もしかして、迷い込んだのか?」
たまにいるんだ、そういう奴。ホラ、この襖を通っていけ。直ぐに帰れるぞ。
教えてやると、男は慌てて立ち上がり出て行った。
信長公の適当さも何とかならないものだろうか。
生きている内にこんな所に呼ばれるなんて、とんだオカルト体験だよなぁ。
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