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宣伝会議賞のこと②

贈賞式という場違い

2023年3月10日
贈賞式に参加してきました。知り合いが1人もいない場所へ呼ばれて参加することは初めてのことでしたが、前述のとおり私はメガネ屋なので、気を使わなければならない人もいません。したがって特に緊張することもなく会場入りしました。しかし、受付が始まると途端に緊張し始めます。理由は「場違いなんじゃないか」というものです。好きで応募したキャッチコピーがたまたまファイナリストになっただけで広告屋ではない。私以外の人は全員広告業界の方なのではないのかと思えてきたからです。

そんな時「幸松さん」と私に話しかけてくれた人がいました。私の隣の席だった同じくファイナリストである塩月尚平さんでした。私は塩月さんに緊張の理由を話しました。すると全く同じだと言ってくれたのです。よくよく話を聞くと私と塩月さんには共通点が多く

①広告業界で働いていない。
②自分の周りに宣伝会議賞を知る人が全くいない。
③コピーを学ぶ機会に参加したことがない。

というものでした。私は「私だけじゃない」という気持ちで一気に緊張から解放されました。そして、生まれて初めて宣伝会議賞の説明をせずともキャッチコピーを考える楽しさ、ことばを選ぶ喜びを語り合う経験を塩月さんとしたのです。楽しくないわけがありません。

阿部広太郎さんに教えてもらったこと

 贈賞式でぜひとも挨拶したい人がいました。中高生部門の審査員長をつとめられていた阿部広太郎さんでした。宣伝会議賞とはまったく関係ないところで阿部さんの著書「それ、勝手な決めつけかもよ?」を読んでいて、内容にとても共感したのと、大好きなBUMP OF CHICKENのことが書いてあったのでツイートしたところ、なんと阿部さん本人がリツイート。そのことだけでもとても嬉しかったのですが、なんとこの贈賞式で同じ空間に入れる奇跡が起こりました。自分のコピーが受賞するかも?というファイナリストとしての緊張感はメガネ屋であるがゆえに皆無だったので、この時は阿部さんに本のお礼を直接伝えよう、と思っていました。

 贈賞式が始まる少し前にお見掛けしたので初対面にもかかわらずいきなり「あの~」と話しかけました。阿部さんはすぐにご理解くださり、懇親会で本にサインをしていただけることとなりました。当初、迷惑がられるかなとも思いましたが全く逆で、とてもやさしい人柄で、この本の作者でいらっしゃることが納得できました。懇親会になり再び阿部さんに話しかけ、本にサインをいただきました。
その時に宣伝会議賞のことについて言葉を交わしたのですが、阿部さんの「ファイナリストおめでとうございます」ということばに実は私は驚いていました。ファイナリストはファイナリストでなにも受賞していない。むしろ受賞しない可能性が高い。そんな私におめでとうございます。と言葉をかけていただいたことで、宣伝会議賞について会話したことがある人が前述の塩月さんだけだった私は、ファイナリストになったことのすごさを改めて実感することになりました。ああ、胸張っていいんだなと。

そしてもう一つ、私が広告業界ではなくただのメガネ屋であることに、「メガネ屋さんなのにコピーを書いていらっしゃるんですか、すごいですね。」「僕はみんながキャチコピーを書くようになったらいいと思ってるんですよ。」とおっしゃったことがとても印象に残りました。

 キャッチコピーを書くことを生業にしていない人がファイナリストに残ったことは、ただの偶然であると自分自身は認識していたので、周りの反応も「ラッキーですね」というものであると勝手に決めつけていました。しかし、阿部さんは生業としていないのにコピーを書いていることをすごいと褒めてくださり、さらにコピーライターでない人でもコピーを書く人が増えればいいと言ってくれました。私の認識とは真反対の解釈をしてくれたのです。

 コピーライターでない人がキャッチコピーを書く。みなさんも宣伝会議賞に挑戦してみようというものではありません。私が考えるキャッチコピーを書くことは、不安に捉えがちな日常を、よりよいものに解釈していくことです。無理矢理ポジティブに見るのではありません。事実をいろんな角度から見ることで、未来を明るくとらえるのです。阿部さんは私が読んだ本の表紙にこうサインをしてくれました。

「勝手に自分を決めつけない。」

これがすべてのスタートなのだと4月から環境の変わる私にとって、タイムリーすぎるありがたいことばをいただきました。

宣伝会議賞を通じて「勝手な決めつけ」についた「勘違い」という羽は思った以上に遠くに飛んでくれました。そして私にすてきな出会いをもたらしてくれました。みなさんもキャッチコピー書いてみませんか?

おわり


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