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宇治の橋姫

宇治の橋姫伝説

今回は、宇治の橋姫です(見出しの画像はウィキペディアからです)。宇治の橋姫の話は、『平家物語』の異本に記載されています。『平家物語』ではないので、ご注意を。内容は以下の通りです。

男女の関係で嫉妬に狂った橋姫は、貴船大明神に自らが鬼になることを願います。7日間祈った結果、大明神は同情し、姿を変えて宇治川に21日間つかることを告げます。橋姫は、鉄輪を頭につけ、その3本の脚に松明を燃やして、川に浸ります。その姿を見た人は、橋姫の恐ろしい形相に恐怖して、亡くなってしまうほどです。その結果、橋姫は生きたまま鬼となり、次々と復讐相手を殺していきます。

恐ろしいお話ですね。この橋姫と対決したのが、渡辺綱です。妖怪ハンターとして、源頼光と頼光四天王は有名ですが、渡辺綱は、この四天王の筆頭です。渡辺綱は、夜一条戻橋で美しい女性に会います。その女性は送ってくれるようを頼みます。綱は同意すると、女性は鬼の姿になって、愛宕山まで送れと言って襲いかかります。綱は、名刀髭切で鬼の腕を斬ると、鬼は逃げていきました。この鬼こそ橋姫です。この腕は、安倍晴明に封印されます。

宇治の橋姫と渡辺綱

画像は、一条戻橋での戦いです(画像出所:文化遺産オンラインhttps://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/272952)。

ここで興味深いのは、橋姫が鬼になることを祈ったのが貴船神社で、その後愛宕山に住んだことです。貴船神社は、鞍馬山に隣接しています。前回の天狗のお話でありましたように、京都の北の山々は妖怪が棲む異界と考えられていたのでしょう。

貴船神社と丑の刻参り

この橋姫のお話のせいか、貴船神社は、丑の刻参りと結びつけられるようになります。丑の刻参りは、丑の刻(午前1時から3時)、神社の御神木に、呪う相手の藁人形を五寸釘で打ち込むというものです。頭に3本のろうそくをつけた様子は強烈です。これを7日間行えば、相手を呪い殺すことができます。ただし、他人に見られると呪いは失われてしまいます。橋姫が鬼になった経緯と似ていますね。また、貴船神社には、丑の刻にお参りすると願いがかなうという伝承がありますので、これが呪詛と結びついたと言われています。下の画像は貴船神社です(画像出所:貴船神社 https://kifunejinja.jp/info/。

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全国の橋姫のお話

橋姫のお話は、全国に流布していますが、宇治の橋姫のお話だけは、全く異質です。例えば、『神道集』に摂津長柄の橋姫のお話があります。これは、橋が何度かけても流されてしまうので、人柱にされた悲しい女性のお話です。橋にまつわる人柱の話は、全国にあるそうです。これが、各地の橋姫のお話と結びついています。鬼になり復讐するという宇治の橋姫は、まったく別系統のように思われます。

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