見出し画像

病院経営2023

病院経営「儲かる診療科えらび」

この記事は本来の医療が持つ社会貢献の話ではありません。心あたたまる話も出てきません。ビジネスとして病院が儲かるか儲からないかだけの視点で病院経営についてまとめています。


筆者について

約300床のA病院理事長の側近でした。
会議や会合に同席しこっそり意見を求められる立場です。身元を特定されたくないため分かりづらい箇所もあるかもしれませんがご不明な点などがございましたらお問合せ頂ければお答え致します。

A病院の規模

  • 法人種別:○○社団法人

  • 病床:約300床

  • 職員数:約1000人

  • 得意分野:消化器がん

  • 備考:建て替え準備中

A病院の理事長について

  • 80代後半

  • 後継者なしにも関わらず事業承継は未着手

  • 上記のほかBクリニックの経営者

はじめに

病院は土地建物医療機器ありきの設備産業で膨大な資金が必要です。削減出来る経費は人件費しかありません。中心となる診療科によって建物の構造も変わります。患者が少ない診療科しかないと倒産に直結します。

何度もい言いますがこの記事には「人助けの医療」の内容は出てきません。「病院は儲かるのか?」だけに特化した内容とご理解頂きたく思います。

病院が直面する建て替え問題

規模によりますが病院建て替えには数十億円から数百億円以上の借入が必要となります。返済期間から逆算すると約25年間も儲かり続ける診療科を推測し、その返済を自覚し覚悟できる医師がいないと建て替えは現実的な計画すらできません。

質問します。

儲け続ける診療科を推測できますか?
借入を覚悟できる医師はいますか?

多くの理事長は「今まで儲かった診療科」で進もうとします。年寄りで返済期間のあいだ生きていられないにも関わらず意見が強かったりします。

たとえば、A病院では「消化器がん」で儲けていました。罹患率が高く儲かったのは事実ですが「内視鏡」が特別な技術だったからです。昭和に儲かる治療法だっただけということです。現在は、どこのクリニックにも普及しています。A病院にライバルは増えた現実が見えていないのです。
「がん治療」をメインサービスとして今後の25年を儲け続けられるのでしょうか。

改めて質問します。

25年間儲かり続ける診療科を予測出来ますか?
今まで儲かった診療科で進もうとしていませんか?

 
それでも病院を建て替えて儲けるためには決めなくてはなりません。

借入の覚悟のある医師はいますか?

私は病院建て替えの借入を覚悟できる個人はいないと考えています。だから、病院存続のためにM&Aが主流となっているのです。
事業継承については後述致します。

「がん」は儲かるのか?

政府が資金を投入するのは「利得を得られる病気」だけです。ご存じの通り死に至る難病であっても患者が少なければ資金は投入されません。

国民を減らさないためなので仕方がありません。

多くの国民が罹患し死に至るということは検査装置や治療装置、薬品など利得を得られる人がいるということでもあります。
だから、「国が利得を得られる診療科」が儲かる診療科です。

今後も「がん」で民間病院は儲かるのでしょうか。

「がん」で大きなお金が動くことは間違いありません。
しかし、政府も国が儲かることが優先です。
あくまで私の予測となりますが、がんについては今後も国公立の病院が儲かるようなシステムを強化し民間が儲からなくなるようになるのではないでしょうか。

民間病院のがん治療の可能性

遺伝子治療の完成自体が難しいですが遺伝子治療で特許を取れれば儲かるかもしれません。

しかし、遺伝子治療が現実になれば現在利得を得ている人たちの構図が変わる可能性もあるわけです。遺伝子治療が現実になれば手術が減ります。腹腔鏡やロボットでの手術がなくなれば、それで利得を得ている人たちにとっては一大事です。

この人たちには政治家が含まれるでしょう。許認可はおりるでしょうか。遺伝子治療にはまだまだ時間がかかりそうです。仮に許認可がおりたとして民間病院にその分野を委ねるでしょうか。

だから、民間病院ががん治療で儲け続けるには独自に特許を得るか、直結するコネクションが必要です。そもそも一部の大学病院の研究なので難しいところです。

返済期間を踏まえた解決策は2つ

建て替えの返済期間を踏まえた解決策は2つあります。

  1. 自院に25年間の人生を捧げる覚悟のある医師を見つける

  2. 整形外科

1.自院に25年間の人生を捧げる覚悟のある医師を見つける
これは、理事長が直接所属している医師一人ひとりに聞いていくしかありません。理事長を兼任していない院長や事務長が聞いても真剣さや重要度は伝わりません。

その際に伝えることは下記の3つ。

  • 自院の返済や含み損について

  • 医療と同じウエイトで経営を学ぶ必要があること

  • 上記を踏まえたうえで25年以上自院に関わる覚悟があるか

理事長が切実に伝える必要があり、返事はその場でもらうのではなく1~2ヶ月程度考えて返事をもらうようにして下さい。

ここで複数人いた場合はチームとなる場合と経営者に向いていない医師を選別しなくてはならない場合があります。チームとなる場合はその診療科を中心に未来を構想します。これから建て替えを控えている場合は構造にも反映することが可能です。
 
25年以上の経営に覚悟があることが最も重要です。
もし、その診療科が儲からなくても覚悟があれば経営に重きをおいて思考できるからです。

2.整形外科
自動運転が普及したら交通事故が激減する可能性もありますが今すぐの話ではありません。転倒も同じくです。
 同じ医療圏で整形外科を強化した同規模の病院がある場合は儲からないリスクが高くなります。

経営陣の経営の知識

決算書には理事長の頭と身体と心が表れると認識して下さい。決算書は経営者の生き方そのものです。

株式会社の上層部は派閥争いがあったとしても決算書を理解しているか、少なくとも重要視しているのに病院経営陣には本当に皆無に等しい。A病院の理事長も2年赤字を出しているBクリニックに「この人雇ってね!」と決定次項としてもってきたりすることがありました。理事長が赤字を増やしたことになります。

経営はとにかく決算書です。
大切なのでなんども言いますが、「決算書は理事長そのものです。理事長の頭と身体と心が現れます。」。
自分で学べなければ信用できる分析ができる人を側近にして下さい。

厳密にいえば理事会が経営の責任がありますが日常的な経営は理事長、院長、副院長、看護部長、事務長が行うことでしょう。このなかに決算書を理解しない者がいれば必ず経営の足を引っ張ります。倒産に近づくのです。
医療と同じ時間をかけるつもりで決算書を学んで下さい。それが経営です。
決算書にあがることを事務長や会計事務所に任せていているあいだはママゴト経営といえます。本当に倒産に近づきます。

後継者えらび

理事長に後継者がいない場合は他人継承しかありません。
仮に後継者や相続人がいたとして100億円の借入をする覚悟があると思いますか?。息子や娘だとして100億円以上の保証人にしたいですか?。病院は土地と建物と医療機器ありきの設備産業です。莫大な経費が必要です。だから、M&Aが主流になるのです。
 
理事長が60才を越えているなら25年以上自院に関わる覚悟のある医師から理事を選んで下さい。インターンのような制度でもかまいません。とにかく経営を体験させていかないといけません。セミナーの参加も必要です。
このようなことが未来の経営陣をつくります。
 
そのうえで本当に25年以上経営に関わる覚悟を持てる人物なら理事長の器か経営の才覚があるかもしれません。
 
理事長という立場の人に本当のことを言ってくる人は先ずおりません。多くはご機嫌取りかサラリーマンとして業務消化しているだけです。もし、高齢であれば、必ず来る事業継承で漁夫の利を得ようとニコニコしている業者が増えてきます。

後継者のえらび方

後継者は「安心して職員を任せられる人」だけです。
病院の事業継承は最低2年必要です。その期間に面談を繰り返し「安心して職員を任せられる人」を見つけて下さい。

「安心して職員を任せられる人」は、スタッフと診療科と決算書を理解したうえで運用できることが条件です。

100億円の借入がある場合は個人で覚悟できる人物はいないでしょう。法人組織しか継承は難しいです。M&Aを覚悟する必要があります。自分の法人が他人の手に渡るのは嫌かもしれませんが、今年入職した職員は長くて40年以上あなたの病院で働きます。
その職員たちのために「安心して職員を任せられる人」を見つけて下さい。

まとめ

  • 儲かる診療科は借入の覚悟ができる医師の診療科か整形外科だけ。

  • 決算書は理事長そのもの。頭と心と体型が表れる。

  • 後継者の条件はスタッフと診療科と決算書を理解したうえで運用できることが条件です。

さいごに

このような話をすると「患者が死ぬぞ!」と言う医師がいますが、「経営の話はこの先25年間の患者を助ける話、未来の患者を助けられない経営に携わることはできません」と答えて下さい。ふさわしくないということです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?