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春を売る女

「春を売る女」

この言葉から何が想起されるだろうか。

子供の絵本に出てくる妖精さんかしら。
或いは季節を司る優しい魔女さんかしら。

このような感じで私の頭では、
とてもメルヘンな世界が想起された。

果たしてその実態は。

春を売る
売春をする。春をひさぐ。
デジタル大辞林

春を売る女とは売春をする女の意。

つまり売春婦のことである。


ああ、なるほど。

言われてみれば読んだままだ。
なぜ気づかなかったのだろうか。


そもそもだ。

なぜ性的な事象の表現に春という言葉が使われるのだろうか。

するとびっくり、春という言葉それ自体が性行為という意味を含んでいるのだ。

はる【春】 の解説
1 四季の第一。冬と夏の間で、日本では3・4・5月をいう。暦の上では立春から立夏の前日まで(陰暦の正月から3月まで)をいい、天文学では春分から夏至まで。しだいに昼が長く、夜が短くなり、草木の芽がもえ出る。「暖かい―の日ざし」《季 春》「窓あけて窓いっぱいの―/山頭火」
2 《陰暦では立春のころにあたるところから》新年。正月。「新しい―を迎える」
3 思春期。青年期。青春。また、思春期の欲情。「―のめざめ」
4 人生の中で勢いの盛んな時期。また、最盛期。「人生の―」「わが世の―をうたう」
5 苦しくつらい時期のあとにくる楽しい時期。「わが家にめぐりくる―」
6 性行為。「―をひさぐ」
デジタル大辞林

こんなにも堂々と「性行為」の記述があるとは知らなんだ。
春にこの意味が生まれたのはおそらく春の季節的な生命の爆発であるとか、生態学的な繁殖期の到来あるとか。とにかく本来の意味である季節からの連想の比喩的な表現である気がする。性行為を古くはまぐわいと言った。
あまりに直接的すぎるこの表現をやんわり風情を持って表現するならば、やはり「春を売る」という表現に落ち着くのだろう。売春等の研究資料を見るとやや古い文献には、品性の無い直接的な表現を避けてかこの言葉が使われる場合が散見される。

春のイメージも相まって男性も女性も貶めない優しい表現だ、というのは買い被り過ぎだろうか。


。。。

まあ、とにかく春を売る女という言葉にはものの見事に裏切られた訳だ。
清純系かと思ったら飛んだ色情魔だった。

だが、それもいい。



以上になります。
ありがとうございました。


969文字


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