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美しさか、心を動かす衝動か

デザインを考える時、大切なテーマがあります。それは、「美しさ」を優先するか「心を動かす衝動」を優先するか。

例えば、建築と一体となるサインのような意匠の場合、美しさやわかりやすさが大切です。また、商品のパッケージやチラシの場合、心を動かす衝動が大切です。

デザインが消費される時間軸がそれぞれ違います。前者のような建築と一体となるものの場合、何度も何回も、もしかしたら何年もそこに存在する場合、デザインは普遍的でシンプルで美しさが求められます。そこにはインパクトは無く、心は動かされないかもしれません。

一方で、お店で手に取る商品や、新しいサービスを宣伝するチラシなどの場合、その視覚情報は一瞬が勝負を分けます。良いのか、悪いのか、伝わるのか伝わらないのか。直感で判断され、そんなに何度も見返されるものにはなりません。その一瞬で心を動かせるかどうかがデザインの勝負です。

媒体の目的により、デザインは時間軸で見て、美しさを取るか、心を動かす衝動を取るか、そのバランスが大切です。

一方で、建築のサインであっても分かりやすくて美しいだけではなく、そのサインがその会社や組織らしさを表現して、何か伝わるものであったり、心を動かす必要もあると思います。商品やチラシだって、内容を伝えるメッセージだけでなく、美しさも必要です。なので、どちらの要素をどれだけ持っているか、またその掛け合わせがデザインの質の高さかもしれません。

デザインの質の高さ=美しさ✖️心を動かす衝動

チラシの場合、美しさを求めると、安定の構図になるし、心を動かそうとするなら、敢えて不安定な構図にして、メッセージを強めることも出来ます。それは冒険で、賞味期限を短くもするけど、他方で刺さる人には刺さる。

パンフレットの場合、チラシよりは賞味期限が長いので、メッセージも大切だけど、安定の構図も大事だし、冊子になるので、全体のバランスも大切。色々な要素を加味すればする程、シンプルに削ぎ落とされて情緒は弱くなっていく。でも、保存率を高めるには安定感のある美しさも大切。

そんなメッセージの情緒を感性で尖らせ、永く普遍的な美しさを理性でバランスを取るのが、良いデザインを生むプロセスのように思います。そうして生まれたデザインは人の心を動かし、美しく普遍的で洗練されたものになるのだと信じて。

そのデザインに情緒は生きていますか?普遍的な美しさは生きていますか?この悩みは常に、向き合うデザインに存在し続けていると思います。

その両方を強く感じられた時、良いデザインに出会えた幸せを感じます。


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