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1. 理不尽さん、こんにちは。

私はサラリーマン。

ただのサラリーマンではない。いわゆる筋金入りのサラリーマンなのだw。大企業と言われる会社で、あらゆるセクションを渡り歩き、修羅場をくぐり抜け、今なお働き続けている。確かに愉快で楽しいこと、やりがいのある仕事や達成感も味わって来たけど、どちらかと言うと、生活のために仕方なく、無理して、あるいはいろんなものを犠牲にして来た、いわゆるライスワークを生きているんだと思う。

良い評価を得て出世するために、通勤時間も満員電車に揺られながら勉強して知識を高め、時流に合う感性を磨いて行った。時には本音を押し殺し、白黒付けずに妥協し、無意識のうちにゴマをすっていたこともあった。

出会う人や運も味方し「仕事の報酬は仕事だ(より高いレベルの)。」そう上司は嬉しそうに話し、出世を内示して来た。

正直、嬉しかった。

異動や出世の内示は、新たな取り組みに関するものが多かった分、結構自由にやらせてもらえた。なので、大変ながらもやりがいを感じながら、正に身を粉にして仕事を進めて行った。

そうこうしているうちに一定の成果につながり、「仕事の報酬は仕事」となる。

忙しい中にも少しの愉しみや達成感を味わいながら、来る日も来る日も働いた。そんな中、全くもって合わない役員(上司の上司)がやって来た。言動不一致で、愛が無いのだ。そう、人としての愛がからっきし無いのだ。...それでも、私は筋金入りのサラリーマン(2回目ww)。うまく合わせながら、いつも通りやりたいことを進めて行ったが、あらゆるシーンで、ストップや方針転換がなされるようになった。

計画外の新たなミッションが追加され、逆に部下やリソースはダウンサイジングとなった。それでも腐らず、楯突かず、できる限りの業務の効率化と標準化を図り、誰も手をつけないことまでキレイに整理して行った。どこかで、見返したかったし、またどこかでは期待に応えたいと思っていた。

この辺りから、自分の時間はもとより、家族との時間が無くなって行った。

数々の無理難題も何とかこなし、上司の評価はこれまで通り良好を継続。しかし、最終評価者であるこの役員が、なんと評価ランクを下げるのだ。しかも1段階、2段階も下げるのだ。当然上司は説明できないし、むしろ困惑気味。理由を聞いても曖昧で、こうならないようにがんばれ、としか言わない。

思い当たる節が無いわけではない。これまで良好な関係を築いていた取引先を、この役員の出身企業へ鞍替えするのをいくつか目の当たりにしていた。このままでは、進行中で大詰めを迎えていた案件を含め、現行取引先への影響(迷惑)が出るため、急すぎる、変更するにしても段階的に進めた方が、長い目で見たら得策となると進言したことがある。

人は後ろめたいところを指摘されると思わぬ反応をすることがままある。今回は、まさに、それだ。その後の行動や聞こえてくる声では、大切にしているのは、社員やお客様、取引先ではなく、自分自身、保身であった。

この役員は、私が進め大詰めを迎えていた仕事の取引先を勝手に変更したため、説明を求めに行った。この時のセリフはドラマのようで今もよく覚えている。「気が付いたのなら早く仕事を進めてよ!遅いよ、仕事が。新しい取引先と会うなとは言っていない!」あまりの過剰な反応に、同席していた上司も助け舟を出すことができなかったほどである...

私はこのまま、入っていたはずの筋金が無くなり、単なる一般サラリーマンになるのか!?

...まだまだ、こんなことでは挫けない。

潰しの効く「志」があったことに気がついた。

いつしか、この会社をもっと良くしたい。そう思いながら仕事をしていたことに気がついたのだ。上場プロジェクトの時も、機関投資家やアナリストへ会社や業績を説明する時も、社内の仕組みを整備する時も、いつかもっと素晴らしい会社になって行くはず!社員同士が切磋琢磨し、どこかあたたかい愛があり、時代を先読みした社会や人々に役立つ商品やサービスをローンチして行く。そんな会社になるように、ほんの少しでも貢献したい。心の奥底で、そんな風に思っていた。

意外と、格好いい!

腐らず、できることをやって行こう。ライスワークに留まらない、社業を通じた社会貢献を具現化できるよう、与えたれた環境で精一杯取り組んでみよう!

先の案件では現行取引先にお詫びをし、新しい取引先と期限ギリギリで何とか仕事をまとめ上げることができた。少しは期待に応えられたかもしれない。

そんなおり、いつものように内示を受けた。今度は上司からではなく、件の役員から。これまで地方から東京、本社と異動して来たので、そろそろ営業現場での活躍の時が来たかと想像していた。

窓が無く、名も無い絵画が飾られている無機質なミーティングルーム。役員は入室後、席につくなり、無表情にいきなりこう切り出した。

「来期から、子会社へ出向してくれ。」


つづく











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