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『物語』 かくれんぼ

ランドセルを背負ったまま
今日もいやだという気持ちが言えないまま、 ねえちゃんの後ろを歩く、

ねえちゃんが
「今日はかくれんぼしよう!!」
と言った。

嫌だなあと俺はぼつりと言ったけどねえちゃんが
「何か言った?」
とオレをにらみながら言った。

オレは
「…‥なんでもない」
としか言えなかった。

オレとねえちゃんの他に姉ちゃんの友達が3人いた。
4人じゃ少ないからオレをいれて遊ぶのが最近の放課後の過ごし方だ。

姉ちゃんの友達には可愛がってもらっているが、自分たちが楽しく遊べるほうが大事らしい。オレの嫌そうな態度も無視だ。

「あー、私が鬼かあ 。」
と、姉ちゃんの友達が言った。
姉ちゃんは他の子に「一緒に隠れよ」と言っていた。
オレはオレで、急いで隠れに行った。

すぐに見つかると次は鬼になるから見つかりにくい場所を探す。
「学校全体なんて広すぎるだろう」と思いながら隠れる場所を探す
「校舎に入るのはだめって言ってたな」

走って、走って、見つかりにくい場所を探す。

「あ。」
この石造の後ろ、この茂みならいけるだろ、
そろそろ鬼が探しに来るだろうと急いで茂みに隠れる。
走ったせいで息切れしていたのが落ち着いてきた。
ここには他の学年の人も来ないし、そうそう見つからないだろ

すっかり呼吸は落ち着いたのに、心臓の音が大きく聞こえる

どくん、どくん、どくん、

さっきの場所で聞こえてた他の子たちの笑い声や話し声も聞こえない
自分の心臓の音はさらに大きく聞こえる

ど、ど、ど、

いつまにか自分の心臓あたりの服をぎゅっと握りしめていた。

「だからかくれんぼは嫌なんだ」
と思わず声が漏れた。

がさがさと遠くで音がした。

一瞬呼吸が止まった気がした。
服を握りしめていた手にさらに力が入る。

心臓の音を聞く余裕すらない

さっきよりも遠くに音が聞こえる、どうやらこっちにはこないようだ。
はああ、と声が出た。
それでも心臓の音はうるさい。

何分経ったのかわからないけど姉ちゃんの友達が
「なお君一!!でてきていいよー!」
と言ってる声がする。
ああ、やっと終わったのかと、
服を握りしめていた手を放し立ち上がってその声のほうへ行く

オレ以外皆見つかったみたいだ
「またなお君が最後だったね」
と姉ちゃんの友達が言った。

オレは
「‥そうだね」
とだけ返した。


むかしむかし
なおが自分の記憶を覚えていない幼い頃のこと
なおはおじいちゃんの家に遊びにいき、3日間行方不明になりました。
周りが神隠しだと騒ぎ立てる中
おじいちゃんの家から少し離れた森の近くの家の人が見つけてくれました。
なおは両親になにがあったのと聞かれても、何も覚えていないと言いました。
本当になおは覚えていないのです。
なぜなおはかくれんぼが苦手なのでしょうか?
その理由は分からないままです。

おしまい


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