「ダスカロスの教え」と「東洋医学」を融合させる試み(11)
文章量が多くなりましたので、第11回は「太陽膀胱経」のみにします (* ᴗ ᴗ)⁾⁾ペコリ
足の太陽膀胱経
“膀胱” の機能
「太陽膀胱経」の経穴の数は 正経十二経脈 中でもっとも多く、経脈の長さも最長です。その理由は、「膀胱」が担う水分量の調節という機能ゆえではないでしょうか?
“水”(陰気)を適切に貯留&排出する「膀胱」の機能が “陽気” を引き降ろす……と Noel は捉えています。「膀胱」は体内の “水の量”(陰気の量)をコントロールすることで、“気の量”(陽気の量)をコントロールしているのです。
“太陽膀胱経” の走行と特徴、デルマトーム
「太陽膀胱経」は、腕以外の “陽” の領域 のほとんどを配下に置いています。“陰” の領域に比べると “陽” の領域の皮膚感覚は相対的に鈍く、僧帽筋・広背筋・大殿筋・大腿二頭筋・腓腹筋 等でがっちり守られている「太陽膀胱経」は刺激への耐性があります。
また「太陽膀胱経」は、中枢神経の「脊髄」を介して ヘッド・センター(目系)、ハート・センター(心系)、太陽神経叢を繋いでいます。
この機能は、正中線上を走行する督脈と任脈 も同様に有していますが、経脈の流れは「太陽膀胱経」とは逆向きの下から上になります。
“太陽膀胱経” の経穴(頭部~頸部)
【BL1 睛明/皮枝は三叉神経の第一枝(眼神経)】
【BL2 攅竹/皮枝は三叉神経の第一枝(眼神経)】
「睛明」は 涙道、「攅竹」は前頭切痕(滑車上動脈・眼窩上神経 内側枝の出口、眼窩上孔とは別の孔)上にあります。
「睛明」と「攅竹」は 脳神経(脳に出入りする末梢神経)を通じ、「目系」(ヘッド・センター)にアプローチできる経穴です。
「睛明」と「攅竹」の奥には視覚(視神経=第Ⅰ脳神経)や嗅覚(嗅神経=第Ⅱ脳神経)を担う組織や神経、下垂体 を収めた蝶形骨の トルコ鞍、“静脈” と “動脈” が熱交換する 海綿静脈洞 などがあります。
【BL3 眉衝/皮枝は三叉神経の第一枝(眼神経)】
【BL4 曲差/皮枝は三叉神経の第一枝(眼神経)】
額から頭頂部にかけても「目系」の経穴です。
【BL8 絡却/皮枝はC2】
【BL9 玉枕/皮枝はC2】
督脈 の「百会」(クラウン・センター)で左右の経脈が交わることは、「太陽膀胱経」が「百会」から “陽気”(天の気)を取り入れて 下肢に引き降ろす経脈であることを示しています。
また、頭頂部から皮膚感覚はC2(第2頚髄)支配になります。取穴の際には、ランドマークの 外後頭隆起 と頭骨と頚椎の境界を間違えないようにしましょう。
【BL10 天柱/皮枝はC2】
第1頚椎(環椎)は棘突起がないのでわかりづらいですが、第2頚椎(軸椎)は棘突起が大きくて蝕知しやすいです。
頭骨と頸椎をつなぐ後頭下筋群(大後頭直筋・小後頭直筋・上頭斜筋・下頭斜筋)は、微細な動きを感知して頭部のバランスをとる筋肉群です。眼球運動や咀嚼筋の影響も受けるため何かと負荷がかかりやすく、故障の多い部位となっています。
下頭斜筋下縁にある「天柱」は、筋緊張性頭痛 の特効穴です。後頭下三角の凹みもほぐすと心地よいポイント。
筋肉のコリをほぐすときは、「拮抗筋」の活性化を意識して再発防止を心がけましょう。
後頭下筋群の拮抗筋は、椎前筋群(前頭直筋・頭長筋・頸長筋・外側頭直筋)です。
痛みはツライですが、痛み止め(免疫抑制剤)の服用はおススメできません、、、痛みは身体からのアラームです。安易に薬に頼るのではなく、根本原因を解消する方向で対処いたしましょう。
“太陽膀胱経” の経穴(背中)
【BL11 大杼 ~ BL35 会陽、BL41 附分 ~ BL54 秩辺】
取穴の際は、第7頸椎棘突起、第7胸椎棘突起、第4~第5腰椎棘突起などをランドマークにします。
なので、まずは「脊柱」の構造を覚えましょう。
「脊柱」の中にある「脊髄」から、体性神経系 の 感覚神経 と 運動神経 が入出します。
そして「脊柱」の左右には、自律神経系 の 交感神経幹(神経線維 の束)が縦走しています。
「脊髄」から出た交感神経の ニューロン は交感神経幹の 神経節 でニューロンを乗り換え、一方は内臓、もう一方は 脊髄神経 に乗って体表にある血管・汗腺・立毛筋などに分布していきます。
脊髄神経後枝(求心性感覚神経)が持つ明確な分節性が、「太陽膀胱経」と「臓腑」の関係性にも反映されています。
では、「背中」にある経穴をみてみましょう。
「大杼」(だいじょ)は 会穴(骨会)で、「隔兪」(かくゆ、隔=横隔膜)も会穴(血会)、「風門」(ふうもん)は「風邪の門」で、風邪の引き始めにゾクゾクするところです。
「背部兪穴」は、概ね臓器のあるところに位置しています。臓器を持たない「心包」と「三焦」の背部兪穴はそれぞれ、“水の上源” と呼ばれる「肺」と “水の下源” と呼ばれる「腎」に接するところにあります。
「背部兪穴」は各 “臓腑” の状態が強く出てくるところで、主に各 “臓腑” の「虚証」(慢性症状)に対する治療穴として使われます。「背部兪穴」の名称は「臓腑(経脈)の名称+兪」で統一されていて、「背部兪穴」の外方1.5寸にある経穴も “臓腑” に因む名称がつけられています。
「背部兪穴」の皮枝(感覚神経)は、経穴と同じ高さにある「脊髄」に由来するので、関係性がとてもわかりやすいです。
また「太陽膀胱経」は「正経十二経脈」のなかで唯一、「仙骨」(仙髄)に直接アプローチできる経脈です。
排尿をコントロールする「排尿中枢」は、「脳」(前頭葉 や 橋)にある高位中枢と、「仙髄」にある下位中枢があります。
「太陽膀胱経」が「脳」と「仙骨」を走行するのは、なるべくしてそうなっているとしかいいようがありません。
「仙骨」(仙髄)から出る5対の脊髄神経(仙骨神経)はそれぞれ前後の2枝に分れ、前枝は前仙骨孔、後枝は後仙骨孔を通って脊柱管を出ます。第1~3仙骨神経後枝の外側枝は 中殿皮神経 となって臀部の中央部に分布し、第1~3仙骨神経前枝は第4・第5腰神経と吻合して 仙骨神経叢 を、第2~4仙骨神経前枝は 陰部神経叢 を形成します。
仙骨神経叢からは殿部の筋肉に分布する 上殿神経(中臀筋、小臀筋、大腿筋膜張筋 を支配)、下殿神経(大臀筋 を支配)、大腿の皮膚に分布する 後大腿皮神経 のほか、全身で最も長く太い神経の 坐骨神経 が出ています。
梨状筋 が硬縮し、坐骨神経を圧迫して痛みが出ることがあります(梨状筋症候群)。
股関節の開きが悪く足腰に痛みがあるひとは、お尻の筋肉が硬くなっていることが多いです。大殿筋・中殿筋・小殿筋……とくに深層にある「外旋六筋」の硬さを取ると、足腰のパフォーマンスが上がります。
梨状筋ほぐしには4の字ストレッチがおススメ!
また「仙腸関節」の歪みも、腰から下肢にかけての痛みを引き起こすことがあります。
レントゲン検査では異常はないのに、腰から下肢の一部に痛みが出るときは、仙腸関節障害を疑ってみましょう。
【メモ】 “太陽膀胱経” と “エーテル・センター”
「太陽膀胱経」は、肉体の エーテル・ダブル や エーテル・センター の意識化に役立ちます。
エーテル・ダブルおよびエーテル・センターは肉体から少しはみ出ていて、体の前方だけでなく後方にも広がっています……が、視覚の届かない背部を意識することは少ないと思います。なので、「太陽膀胱経」を活用し、体全体の “気” のバランスを整えましょう。
「睛明」・「玉沈」はヘッド・センター、「心兪」はハート・センター、「大腸兪」は太陽神経叢を意識する際の目印になります。
「脳戸」・「神道」・「腰陽関」などの「督脈」の経穴も覚えておきましょう。
ちなみに、臓器としての「心臓」の位置は以下になります。
で、何となくですが……Noel は「肓」(こう、亡+月)のつく経穴と、3つの主要なエーテル・センターに関係性を感じています。
「肓」のつく経穴は全部で4つ、「太陽膀胱経」の「膏肓」・「肓門」・「胞肓」と「少陰腎経」の「肓兪」です。「膏肓」の「膏」は白い脂、「肓」は横隔膜の上の隠れた部分で、「膏肓」は心臓と横隔膜の間の最も深いところを意味するそうです。
「病膏肓に入る」という諺があります。
「膏肓」は “上焦の気”、「肓門」は “中焦の気”、「肓兪」と「胞肓」は “下焦の気” を体内に留めるアンカーのような場所ではないでしょうか? なので、“ネガティブな エレメンタル ” がそこに取り憑くと致命的、、、ということになります。
ダスカロスの著書 には、外部から入ってくる “エレメンタル” は「肝臓」を通ってくる……というようなことが書いてありました。「肝」の背部兪穴と同じ高さに「魂門」という名称の経穴があるのは、なかなか興味深いです。また、「肺兪」と同じ高さにある督脈の「身柱」(しんちゅう)は、「人を殺したいと欲するを治す」という効能があると言い伝えられています。
“太陽膀胱経” の経穴(下肢)
【BL36 承扶/皮枝はS2】
【BL37 殷門/皮枝はS2】
【BL38 附郄/皮枝はS2】
【BL39 委陽=三焦の下合穴/皮枝はS2】
【BL40 委中=膀胱経の合穴、四総穴、膀胱の下合穴/皮枝はS2】
「承扶」と「殷門」は坐骨神経上、「附郄」・「委陽」は 総腓骨神経 上に、「委中」は 脛骨神経・膝窩動脈・膝窩静脈・小伏在静脈 の上にあります。
「委中」は「腰背は委中に求めよ」といわれる 四総穴 で、膀胱経の 合穴、膀胱の 下合穴 でもありますので、下半身の “気”・“血”・“津液” の廻りをスムーズにする効果が極めて高いです。
【BL55 合陽/皮枝はS2】
【BL56 承筋/皮枝はL5】
【BL57 承山/皮枝はL5】
【BL58 飛揚=膀胱経の絡穴/皮枝はL4~S2】
【BL59 跗揚=陽蹻脈 の郄穴/皮枝はL4~S3】
小伏在静脈 と 腓腹神経(脛骨神経 の枝と 総腓骨神経 の枝が結合して形成)上にあるこれらの経穴への刺激は、下腿の “気”・“血”・“津液” の流れを良くする効果があります。
「飛揚」は腓腹神経から少し外れたところにありますが、下腿三頭筋(ふくらはぎ)を構成する腓腹筋 と ヒラメ筋 の境界部にあり、腓腹筋の下にあって触れにくいヒラメ筋にアプローチできる経穴です。
腓腹神経は、アキレス腱(腓腹筋・ヒラメ筋をかかとに付着させる腱) の外側縁を小伏在静脈に沿って下行し、外果と 踵骨 の間(経穴でいうと「崑崙」)に入ります。
【BL60 崑崙=膀胱経の経穴/皮枝はS1】
【BL61 僕参/皮枝はS1】
【BL62 申脈=八総穴/皮枝はS1】
【BL63 金門=膀胱経の郄穴/皮枝はS1】
【BL64 京骨=膀胱の原穴/皮枝はS1】
【BL65 束骨=膀胱経の兪穴/皮枝はS1】
【BL66 足通谷=膀胱経の榮穴/皮枝はS1】
【BL67 至陰=膀胱経の井穴/皮枝はS1】
これらの経穴の皮枝はすべてS1、腓腹神経の枝の 外側足背皮神経 に沿って並んでいます。
足部にある「太陽膀胱経」の 要穴 は、頭部に滞留した “陽気” による眩暈・頭痛・のぼせ・眼痛・不眠など、下肢に滞留した “陰気” による浮腫み・疼痛・冷えなどの改善に効果的です。
「陽蹻脈」は、「申脈」(足、総穴)→「僕参」(足)→「跗陽」(下腿、郄欠)→「居髎」(腰)→「臑兪」(肩)→「巨骨」(肩)→「肩髃」(肩)→「地倉」(顔面)→「巨髎」(顔面)→「承泣」(顔面)→「睛明」(目頭)→「風池」(後頭部)の順に走行します。この流れは、背部を伝って “陽気” を引き降ろす「太陽膀胱経」の働きが過剰になり過ぎないようバランスさせるもの……と感じます。
で、「申脈」と「金門」は 長腓骨筋(内側楔状骨 の外側、第1中足骨底に停止) の腱上、「京骨」は 短腓骨筋 の停止部にあります。
腓骨筋は「足の外反」(足の外側を浮かせる動作)を担う筋肉で、O脚や内反歩行のひとは腓腹筋が正しく機能していないことが多いです。
「至陰」は逆子を治すことで知られています。下半身の “気”・“血”・“津液” の廻りが良くなると子宮の状態も良くなり、胎児が動きやすくなるのでしょう。
【少陰腎経への連絡】
「足の太陽膀胱経」は足の第5指外側(至陰=陽経の “気” が陰経に至るところ)で終わり、足の少陰腎経 に連なります。
つづく