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「ダスカロスの教え」と「東洋医学」を融合させる試み(8)


はじめに

第8回 ~ 第13回は以下に分け、「臓腑生理機能」、「十二経脈走行」、「経穴」について書いてゆきます。

第8回:太陰肺経陽明大腸経
第9回:陽明胃経太陰脾経
第10回:少陰心経太陽小腸経
第11回:太陽膀胱経少陰腎経
第12回:厥陰心包経少陽三焦経
第13回:少陽胆経厥陰肝経

WHOが公式に認めている「経穴」の数は361個あり、英語名の “経脈” と合わせて以下のように略号化されています。

日本語名    英語名    略号・経穴の数
太陰肺経
Lung Meridian、LU1~LU11
陽明大腸経Large Intestine Meridian、LI1~LI20
陽明胃経Stomach Meridian、ST1~ST45
太陰脾経Spleen Meridian、SP1~SP21
少陰心経Heart Meridian、HT1~HT9
太陽小腸経Small Intestine Meridian、SI1~SI19
太陽膀胱経Bladder Meridian、BL1~BL67
少陰腎経KIdney Meridian、KI1~KI27
厥陰心包経Pericardium Meridian、PC1~PC9
少陽三焦経Triple Energizer Meridian、TE1~TE23
少陽胆経Gallbladder Meridian、GB1~GB44
厥陰肝経Liver Meridian、LR1~LR14
督脈Governor Vessel、GV1~GV28
任脈Conception Vessel、CV1~CV24

経穴」に関しては、要穴 および “経脈の走行を覚えるのに必要なものだけに絞ります。略号の数字をみれば、紹介を端折った経穴の数がどのくらいあるか? わかると思います。

手の太陰肺経

“肺” の生理機能

百脈を朝め、治節を主る(津液に集まり、から送り出されることで調節されること)。
宗気(そうき)を生成する。
呼吸を主る。
を主る。
機気(きき、気の昇・降・出・入の働き)を調節する。
宣発(せんぱつ、昇発と発散、呼吸により濁気を吐き出し、津液を全身に散布し、腠理(そうり、毛穴・汗腺)を調節する作用)を主る。
粛降(しゅくこう、粛浄と下降、呼吸により清気を吸い込み、津液膀胱下輸し、気道を清潔にする作用)を主る。
通調水道(つうちょうすいどう、の働きによって胃から上部に運ばれた津液を全身に散布する作用)を主る=水の上源
粛降大腸伝導を助ける。
*五行=、五官=、五華=、五神=、五液=、五志=、五体=皮毛
に開竅する(が悪くなるとの機能が低下する)。
上焦に属する。
*経脈は 手の太陰肺経
大腸と表裏の関係にある。

“太陰肺経” の走行

中焦中脘)に起こり、下って水分穴で大腸を絡い、還って胃口を循り、(Noel註:横隔膜)を上ってに属する。ついで気管、喉頭を循り、横に腋下に出て上腕内側を循り、少陰・心主の前を行き肘窩尺沢穴)に下る。前腕の前面橈側を循って橈骨動脈拍動部に入り、母指球より母指末端に終わる。その支なるものは、手関節の上(列欠穴)より示指(Noel註:人差し指)の末端に入り 手の陽明大腸経 に連なる。

Wikipedia「手の太陰肺経」、太字化はNoelが実施

太陰肺経」は「中焦」から起こり、「大腸」(太陽神経叢)に下って反転し、「」を廻って横隔膜を抜け、「」に入って前胸部から体表に出ます。これが、全身に “”(エーテル・バイタリティー)を廻らせる “十二経脈” の始まりです。

中焦」の「」と「」が生成した “” と “津液” はまず「」に送られ、そこで “宗気” を得て全身を廻る……という流れは感覚的によくわかります。そして、「」と表裏の関係にある「大腸」は、“” の貯蔵庫である “太陽神経叢” と関係が深いと Noel はみています。ヘソを中心にぐるっと円を描く「大腸」を、“太陽神経叢” の外周部とみてもいいのではないでしょうか?

【メモ】 “デルマトーム” について

デルマトーム」(皮膚分節)とは、脊髄中枢神経)から伸びる31対の末梢神経のうち、「皮膚感覚」(触覚、痛覚、温度覚)を支配する 求心性神経(知覚神経)の分布領域を示したものです。

皮膚感覚” と “” には密接な関係性があります。

肉体の “” を感受し動かす “感覚エーテル” と “運動エーテル” は “皮膚感覚” と同調しています。なので、末梢(皮膚)から中枢(脊髄)へ感覚を伝える「皮枝」(ひし、皮膚に分布する求心性神経)を認識しておくことは重要です。

C1C8(第1頚神経〜第8頚神経)
T1T12(第1胸神経〜第12胸神経)
L1L5(第1腰神経〜第5腰神経)
S1S5(第1仙骨神経〜第5仙骨神経)

注:脊椎脊髄は同じではありません。などの略称を使うのは主に脊髄のほうです。

“太陰肺経” のデルマトーム

太陰肺経」は主に「C6」が支配する領域を走行します。

太陰肺経」の「列穴」がのコリによく効くのは、「列穴」と「C6」との間に神経的な連絡があるからではないでしょうか?

“太陰肺経” の経穴

【LU1 中府肺の募穴/皮枝はC4】

中府」(ちゅうふ):前胸部、第1肋間と同じ高さ、烏口突起内側縁の小胸筋停止部に取る。

体表面における「太陰肺経」のスタート地点は「中府」(ちゅうふ)です。

中府」を取穴するときの目印が「烏口突起」で、そこは  小胸筋 の 停止(ていし、筋肉の腱が付着する骨の部位でよく動く方)部であり、上腕二頭筋(短頭)の起始(きし) 部でもあります。

中府」の周辺を撫でてほぐすと呼吸が楽になり、猫背巻き肩の改善になりますよ (*^^)v

【中府 → 尺沢】

中府」から烏口突起の上に行き、上腕二頭筋長頭(力こぶ)の外縁(親指側のほう)を肘に向かって走行します。

【LU5 尺沢肺経の合穴/皮枝はC6】

尺沢」(しゃくたく):肘関節の内側のシワの上、上腕二頭筋腱外方陥凹部に取る。

を曲げると上腕二頭筋腱が浮き出て、陥凹部がわかりやすくなります。

【LU6 孔最肺経の郄穴/皮枝はC6】

孔最」(こうさい):手首のシワ(内側)の上方7寸(太淵と尺沢の中点の上方1寸)、腕橈骨筋橈骨の隙間に取る。

腕橈骨筋 はビールジョッキを持ち上げるときに働くので、“Beer Muscle” と呼ばれます。デスクワークスマホ操作などが長いひとは、腕橈骨筋がこわばっていることが多いので「孔最」や、後半部で紹介する「陽明大腸経」の「陽渓」(ようけい)から「曲池」(きょくち)の経脈をほぐすと楽になります。

【LU7 列欠肺経の絡穴四総穴八総穴 /皮枝はC6】

列欠」(れっけつ):「長母指外転筋」と「短母指伸筋」の間のごく狭い隙間、手首のシワの上方1.5寸に取る。

親指をピンと伸ばし、左右の親指と人差し指の叉を組み合わせたときに、人差し指の先端が届くポイント

頭項は列欠に尋ねる」といわれる通り、「列欠」はの凝りや痛みによく効きます(注:押し過ぎは逆効果)。

【LU8 経渠肺経の経穴/皮枝はC5C7】

経渠」(けいきょ):手首のシワから1寸上、橈骨茎状突起(橈骨下端の飛び出た部分)と 橈骨動脈(脈を取る血管)との間に取る。

【LU9 太淵肺の原穴肺経の兪穴八会穴の脈会/皮枝はC5C7】

太淵」(たいえん):は手首のシワ上、橈骨茎状突起と 舟状骨 の間、脛骨動脈上に取る。

太淵」の直下にある橈骨動脈はごく浅く、下にがあるので “” を取るのに適した部位です。「脈診」(みゃくしん)はここを使います。

【LU10 魚際肺経の榮穴/C5T1】

魚際」(ぎょさい):第1中手骨中点、“てのひら” と “手の甲” の境界に取る。

【LU11 少商肺経の井穴/皮枝はC5T1】

少商」(しょうしょう):親指の爪の外方基部に取る。

【陽明大腸経への連絡】

太陰肺経」の流れが「列欠」で分岐し、人差し指に向かうことで「陽明大腸経」につながります。

手の陽明大腸経

“大腸” の生理機能

糟粕(そうはく、小腸から送られてきた内容物)の伝道を主る。
糟粕水分を調整し、“”(えき、粘液性の水分)を生成する。
糞便排泄する(燥化過程)。
大腸伝導粛降を助ける。
*五行=
下焦に属する。
*経脈は 手の陽明大腸経
と表裏の関係にある。

“陽明大腸経” の走行

示指末端(商陽穴)に起こり、示指の橈側白肉際(肌目の際)を循り、第1中手骨と第2中手骨の間(合谷穴)に出て、前腕後外側を上り、肘窩横紋(肘の皺)の外端(曲池穴)に入る。上腕の外側を上行して、肩峰突起(肩の端にある盛り上がったところ)の外端の肩髃穴に至り、巨骨穴を過ぎ、大椎穴(督脈)に至って諸経と会する。大椎穴より下って鎖骨上窩欠盆穴:足の陽明胃経 )を経てを絡い、下ってを貫き大腸に属する。

その支なるものは鎖骨上窩欠盆穴)より分かれて頸部(首)に上り、頬を貫いて下歯中に入り、還り出て左右に分かれてを挟み、鼻下の人中に交わり、左は右に、右は左に行き、すなわち左右交叉して、鼻孔を挟んで鼻翼両側迎香穴)に終わる。ついで 足の陽明胃経 に連なる。

Wikipedia「手の陽明大腸経」、太字化はNoelが実施

」は、「第二の脳」と呼ばれるほど重要な臓器です。

」は「」(ヘッド・センター)とダイレクトにつながった “”(エーテルセンター)なのです。

陽明大腸経」の左右の経脈が「人中」で交差することも、「」との関係性をうかがわせます。骨格筋を動かす運動神経(遠心性神経)は 延髄 で交叉し(錐体交叉)、左大脳の指令は右半身へ、右大脳の指令は左半身へ向かいます。

で、この錐体交叉のおきる延髄は、「人中」と同じ高さにあるのです。

赤いところが延髄動画のソース

この部位は、肉体の「シンボルオブライフ」(ダスカロスの教え)における「第3の十字架」の位置です(注:場所は延髄ではなく小脳とされています)。

“陽明大腸経” のデルマトーム、“脳神経” 支配

デルマトーム」をみると、「陽明大腸経」が走行する領域の皮膚感覚は、C3C7脊髄神経が支配します。

陽明大腸経」は顔面も走行します。顔面部の感覚は、三叉神経(12対ある「脳神経」のひとつ)が支配しています。

表情筋や眼球の運動視覚聴覚味覚嗅覚も「脳神経」 支配です。骨格筋にも「脳神経」支配のものがあります。胸鎖乳突筋 と 僧帽筋 は第Ⅺ脳神経の副神経(求心性の感覚神経ではなく遠心性の運動神経)支配です。

動画ソース
動画ソース

胸鎖乳突筋僧帽筋は相互に影響しあっているので、胸鎖乳突筋が悪くなると僧帽筋も悪くなります。首や肩のコリや痛みには大体この2つの筋肉が関係しています。

胸鎖乳突筋の周辺や僧帽筋の上を走行する経脈は、すべて「陽経」です。

胸鎖乳突筋=陽明大腸経、少陽三焦経、陽明胃経、少陽胆経
僧帽筋=陽明大腸経、太陽小腸経、太陽膀胱経、少陽三焦経、少陽胆経

背中の痛みやコリには、「陽経」への刺激が効きます。

“陽明大腸経” の経穴

【LI1 商陽大腸経の井穴/皮枝はC7】

商陽」(しょうよう):人差し指の親指側基部に取る。

陽明大腸経」の経穴は「下の歯の痛み」に効くとされます。ちなみに「上の歯の痛み」に効くのは「陽明胃経」です。歯はしばらく悪くなってないので試してないですが、“” の流れを追うと確かにそんな感じですね。

【LI2 ニ間大腸経の榮穴/皮枝はC5T1】

ニ間」(じかん):第2中手指節関節の指先側の陥凹部、てのひらと手の甲の境界に取る。

【LI3 三間大腸経の兪穴/皮枝はC5T1】

三間」(さんかん):手の甲第2中手指節関節の手首側の陥凹部に取る。

【LI4 合谷大腸の原穴四総穴 /皮枝はC5T1】

合谷」(ごうこく):手の甲第2中手骨中点の親指側に取る。

面口は合谷に収む」といわれる通り、大腸の原穴合谷」は顔面部の疾患の特効穴です。

【LI5 陽渓大腸経の経穴/皮枝はC6】

陽渓」(ようけい):手首の背側のシワの上、親指を人差し指から離して強く伸ばしたときにできるタバコ窩に取る。

【陽渓 → 曲池】

陽渓」から肘の「曲池」までは以下の部位を通ります。

陽渓」から 橈骨 に沿って 腕橈骨筋 の縁の溝をなぞり、指が止まる凹みが「曲池」です。肘を曲げると腕橈骨筋が蝕知しやすくなります。

【LI11 曲池大腸経の合穴/皮枝はC6】

曲池」(きょくち):肘関節を深く曲げたときにできる肘のシワの外端陥凹部に取る。

曲池」は腕の疲れ痛みを取るのによいだけでなく、心身の緊張を和らげるのにも使えます。同じような効果が「合谷」にもあります。

【曲池 → 肩髃】

曲池」から「肩髃」(けんぐう)は、まず上腕骨に沿って肩に向かい、三角筋 上腕骨付着部から三角筋の上を通り、肩関節の上に行きます。

【LI15 肩髃/皮枝はC4】

肩髃」(けんぐう):腕を真横に挙げると肩関節の上にできる2ヶ所の凹みのうち、前方のほうの凹みに取る(後方の凹みは「肩髎」)。

【LI16 巨骨/皮枝はC4】

巨骨」(ここつ):鎖骨の末端と、肩甲骨の肩峰の間にできる凹みに取る。

肩峰は、肩に指先を置いて腕をグルグル回すとわかります。上腕骨頭は動きますが、肩峰は動きません。

【巨骨 督脈の大椎 陽明胃経の欠盆  天鼎】

巨骨」からまず 督脈 の「大椎」(だいつい)に行き、そこから前胸部に向かって鎖骨の凹み(鎖骨上窩)にある 陽明胃経 の「欠盆」(けつぼん、正中線から4寸)に抜けます。

臓器の「」の最上部は、鎖骨よりも上にあることを覚えておいてください。「欠盆」は「」を刺激する経穴です。

この「欠盆」から経脈は2手に分かれます。ひとつは「」を通って「大腸」に入り、もうひとつは首にある「天鼎」(てんてい)に向かいます。

【LI17 天鼎/皮枝はC3】

天鼎」(てんてい):胸鎖乳突筋後縁、喉にある 輪状軟骨 と同じ高さに取る。

陽明大腸経」は「天鼎」(てんてい)から下顎に入り、「」を巡って「人中」で交叉して「禾髎」(かりょう)に至ります。この「天鼎」から「禾髎」のルートは、“十二経脈” の中で唯一「左右の交叉」がみられるポイントです。

【禾髎/皮枝はV2(上顎神経 三叉神経の第二枝)】
【迎香/皮枝はV2(上顎神経
三叉神経の第二枝)】

禾髎」(かりょう):人中溝中点鼻孔外縁の下方に取る。

迎香」(げいこう):尾翼外側縁中点に取る。

上顎神経は、目の下、頬、上唇、上顎の口腔内の感覚を支配する神経です。「禾髎」と「迎香」は鼻づまり、嗅覚障害、蓄膿症、耳の詰まった感じなどに効果を発揮します。

【陽明胃経への連絡】

迎香」からは鼻梁に沿って目頭まで上がり、つぎの「陽明胃経」の最初の経穴「承泣」(しょうきゅう)につながります。

つづく