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多角形のりんご

私は学校の宿題をきちんとやらない子供だった。
小学1年から高校1年まで、夏休み・冬休みの宿題はほとんどやらずに新学期を迎えたのだった。

夏休みに入ったばかりの頃は「ちゃんと毎日やらなきゃ」と思うのだが、日が経つごとに「毎日この位やれば終わるかな」と考えつつ、結局ほとんどやらずに終わる毎日。残り2日位になると「どのみち今からやっても間に合わない」と諦めの境地で手を付けなかった。

そんな夏休みをどのように過ごしていたかと言うと、ただダラダラと過ごしていた。「暑いなー」と言いながら、何もせずに過ごしていた(プールで泳いだり、合唱をやっていた時もあったが)。

中学1年の9月、二学期が始まった。
それまでの夏休みと同様、私はほとんど宿題をやらずに学校へ行った。宿題の提出はあれど、結局宿題はやらなくても何とかなるのだ。少しやって残りはどうにかごまかしていた。

その年の夏休みの宿題の中に、絵を描く宿題があった。一学期に『ポスターカラーで絵を描く』授業があったのだ。
パネルに紙を張り(大きさはA3位だっただろうか)、私は多角形のりんごの絵を描いた。そのりんごの絵はきちっと輪郭線からはみ出さずに赤い色で塗られた絵で、その出来栄えがまあまあ気に入っていた私だった。

美術の授業は少なく、一学期中に全員描き終えることが出来なかったので、残りは夏休みの宿題になった。

当然のごとく、私は絵を描かなかった。
そして二学期を迎えた。今回も適当にごまかせるかなと思い、りんごの絵は提出しなかった。

数日後、担任の先生から呼び出された。
生徒指導室に行くと、先生が、
「なぜお前は宿題を出さないんだ。」と私に向かって言った。
 私「………。」
 先生「黙ってないで何か言え!!」
 私「………。」
 そのうちに私は泣きだした。そこで担任の先生が、
 「俺は女の涙に弱いんだ。お願いだから泣かないでくれ。宿題はいつまでにやってくるんだ?」
 私「土曜日までに…。」
 先生「よし、帰れ。」
そして、私は生徒指導室を出た。

結局、絵は提出しなかった。
続きを描く気が全く起きなくなってしまったのだった。先生に怒られても描きたくないという気持ちの方が強かったんだと思う。
だから「なぜ」と言われても理由を言えなかった。正直に話しても許してもらえなかっただろう。

あの描き途中のりんごの絵。
とうの昔に捨てられ、この世にはないと思う。


この文章の一部は高校の時の交換日記に書かれていました。

夏休みの宿題は高校2年の時はすべてやり、高校3年の時は夏休み終了の数日前には終えていて、有終の美を飾りました。部活の合宿で宿題が出来たからかもしれません。
高校の部活については、後日書こうと思っています。

上の絵は今日描いた絵です。今描いてみると楽しいので、いつか作品として描いてみたくなりました。

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