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ペッパーミル

「We are grinding.」(コツコツ粘り抜こう) カージナルス キズナー選手

 2023年の明るい話題は、何といってもWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)での侍ジャパン優勝世界一だ。二刀流の大谷翔平選手が試合前から取材攻勢を受けている。そのなかで栗山英樹監督の思い切った人事が冴えわたった。それは、MLBカージナルスからラーズ・ヌートバー選手を呼び寄せたこと。WBCが始まる前、日本では彼はあまりよく知られていなかった。それがいざ試合が始まってみれば、「ヌートバー旋風」を引き起こし、彼のグッズはことごとく売り切れ、彼のご家族も毎日のようにテレビの取材を受けている。

 ヌートバー選手の良さを上げればきりがない。前向きで明るい性格。走攻守すべてそろった野球技術。一塁までの全力疾走。ヒーローインタビューで笑いを取れるセンスの良さ。そして、侍魂。WBCでの打率.269、出塁率.424、得点圏.375であり(2023年03月22日データより)、切り込み隊長として十分すぎる働きだ。彼はまさに私たちが求めていたヒーロー像にピッタリはまった。

 さらに人気を押し上げたのは、ペッパーミルパフォーマンスだ。ペッパーミルには「grind」、つまり、「挽く」と「コツコツ粘り抜く」という2つの意味が掛け合わされている。冒頭は、2022年カージナルスが不調だったとき、キズナー選手が他の選手に送った言葉だ。以来、カージナルスでパフォーマンスとして定着している。それをヌートバー選手が侍ジャパンに持ち込んだ。すると、侍ジャパンが勝ち進み、ペッパーミルパフォーマンスが選手にも浸透。タイムリーを打ったり、作戦が成功したりするたびに皆で手をキュッキュして喜ぶ。このパフォーマンスが巷でも大流行し、かっぱ橋で本物のペッパーミルが飛ぶように売れ、ラーメン屋では普通のコショウを下げてペッパーミルで出すほどだ。

 さて、中小企業診断士らしく、彼を分析してみよう。ヌートバー選手のこのような前向きな姿勢や他の選手への影響、試合結果を見てみると、リーダーとして理想である。リーダーシップは2つの軸で考えられてきた。それは、「目標の達成」(P)と「集団や組織の維持・強化」(M)とのPM理論だ。ご存じの通り、こちらの理論は三隅二不二氏によって提唱されたもの。


出典:マーキャリ(https://media.mar-cari.jp/)より引用

PM理論によれば、人は下記の4つのリーダー像に分けられる。
「PM型」は成果を上げ、組織をまとめられる理想のリーダー。
「Pm型」は成果は上げられるが、組織はまとめられないリーダー。
「pM型」は成果は上がらないが、組織をまとめられるリーダー。
「pm型」は成果も上がらず、組織もまとめられない合ってはならないリーダー。
どのリーダーがよいかは、一目瞭然だ。

 ヌートバー選手は「PM型」リーダーだ。勝利という成果をあげ、チームをうまくまとめている。彼が出塁すれば、得点に結びつくうえに、侍ジャパンの士気が上がっていく。まるで、創業時のベンチャー企業の社長のようだ。自身が目的をもって先陣を切ることで、より優秀なスタッフが意図を汲んで動いてくれる。彼の性格や行動は、PM理論においても、理想のポジションにある。このことを栗山監督は意識していたのだろうか。インタビューしてみたい。隠れた良い人材を見つける才能をお持ちだからだ。栗山監督もやはり「PM型」リーダーである。この結果、WBCで個性豊かな侍ジャパンが躍進を続け、今まで知らなかった多くの人がヌートバー選手に声援を送っている。

 ペッパーミルは英語で「pepper mill」である。頭文字をとれば、「PM」だ。彼のパフォーマンスを見るたび、PM理論が結びついて離れなかった。これはダジャレだが、中小企業診断士としての不思議な性(さが)でもある。人の上に立つリーダーなら小文字の「pm」ではなく、彼のように大文字の「PM」でありたいものだ。私は中央支部で広報部長を拝命しているため、理想のリーダー像としての思い入れも大きい。彼にあやかりたいと試合のたびにテレビに向かって声を枯らして応援していた。野球を通じてリーダーシップを実感できたことに感謝。この時期にWBCが開催されてよかった! 優勝おめでとう!

 ヌートバー選手の言葉を信じて、今日も仕事に立ち向かう。
「何があっても、これだけは忘れるな、常に自分を信じろ」
                               以上

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