見出し画像

「母の手作りマスク使ってもらえませんか」とツイートしてみたら

私60歳になる母が人生初の副業に挑戦しようとしていた。
でもそれは、スタートした瞬間に失敗しかけた。

しょんぼりする母の背中を見ていて、とにかく何か発信しないとと思いついたのがTwitterで。

画像12

ぽつりと投げたつぶやきが、終わりかけていた母の挑戦の風向きを大きく変えた。

母(60)が手作りマスク販売で人生初の副業に挑戦

新型コロナウイルスの影響で在宅ワークになり、これまで平日仕事、週末はHDDに録画しまくったテレビ鑑賞か孫の世話という母のルーティンが大きく変わった。

安定した職で仕事量も多くない母。通勤時間がなくなり、仕事はさらに減り、仕事一筋だった生活が大きく変わった。

仕事で全て埋めつくされていた母の時間がぽっかり空いたのだ。

ある日の午後、押入れの奥をなにやらゴソゴソやっていると思ったら、取り出したのは高級ミシン。

画像1


さらに押し入れの奥をまだゴソゴソ。次は何が…と思って見ていたら、「いつか使う時が来るだろうと少しずつ買って、大事にとっておいたの」と大量の布。

画像3

※これはほんの一部で、まだまだ出てくる大事にとっておいたという布たち。

そういえば母は手芸が得意だった。私が子供の頃は、チクチクと手縫いでいろんなものを作っていた。

画像4

※母の腕前を紹介するから、と深夜に母を無理やり起こして作品をもっててもらう。

パッチワークと言う手芸が特に好きで、小さな布と布を縫い合わせて大きな作品を仕上げていたことをなんとなく覚えている。

HDD大容量録画なんてなくてビデオテープ1本につき2時間しか録画できなかった、スマホもパソコンもなかった1990年代。 

あの頃の母は、趣味に没頭できる時間がたくさんあったんだろう。そして今の確かな腕前が母にはある。

メルカリ出品。5分後に自動出品削除。

メルカリでね、手作りマスクがたくさん売れてるんだって。作って売ってみようと思って。

高級ミシンと大量の布で、母はせっせと手作りマスクを作り始めた。

手作りのマスクなんて売れるのかなあ、と疑わしげだった私。出来上がった母の手作りマスクを見せてもらうと、しっかりできてる。これなら売れるかもと感じた。

いろいろな生地や柄で作ってどういうものが売れるのか試した方が良いだろうということになり、それから母は2週間ほどせっせとマスクを作り続けた。

そして今日、一度くらい試してみようかと私のスマホで出品してみた。

それから5分とたたないうちにポーンと通知が来た。え、まさかもう売れたの? と通知を開くと

規約違反です。出品削除します。

とメッセージが。
悪質な転売により市販品のマスクが出品できないことはニュースを見て知っていたが、手作りマスクもダメになっていたとは知らなかった。

出品が削除されたことと、メルカリで手作りマスクはもう販売できないことを母に伝える。

ダメかあ、としょんぼりする母。

その手元には、大量に型紙に沿って切り抜かれたマスクの材料。

画像2

「母、それ、売れなかったらどうするの?」
おそるおそる聞いてみた。

うん、そうだね、どうしようかな。近所の人や職場の人に配ろうかな。

いやいや、それはダメなヤツだ。

母のマスク製作時間も、大量に購入した布代も母は支出するばかりで、「タダならいいや」ともらう人がいるかもしれない。

母ダメじゃん。全然副業になってないじゃん。
せっかく売れるかもって初めての副業に挑戦したのに。

ダメかあ、としょんぼりする母に、売れたよって言ってあげたい。

どうしたらいいんだろう、とにかく発信しなきゃ。

メルカリはダメだとして、商品だけじゃなくて母の挑戦も伝わるように発信できるなにか。

こうして思いついたのがTwitterで、あわてて作成して投稿したのが冒頭のツイート。

画像13

問い合わせが数件、そしてクソリプはゼロ

それからなんと、すぐにリプを2件、DMも5件以上いただいた。
詳細の問い合わせはもちろん、お母さん応援してますというエールも。

発信したら、届いたんだ。

母、売れたよ! ってしょんぼりした背中に声をかけられるんだ。

もし売れなかったら、売れたよってウソついて私がお金払って、発送したフリして中国行きの荷物に隠して持ってくつもりだったのに。

Twitterやっててよかった。思いきってツイートしてよかった。

さらに驚くことに、来るなら来いやとビビリまくって待ち構えていたクソリプは今のところゼロ。
まあこれから時間差でやってくるのかもしれないし。ビクビク。

殺伐としてるとかいわれるけど、そんなのどこの世界の話だろうと。SNSにはなんて優しい世界が存在してるんだろうと。

娘がすくすくと元気なツイ廃に成長してよかったね、母。

こうして母の人生初の挑戦は、土壇場の大逆転でゆるやかな成功に着地できそうだ。

送料と布代で利益はほとんどない低価格。
副業で売上を立てることはできても、そこからさらに利益を出すことの難しさ。そして工夫しがいのある面白さ。

母の確かな技術に加えて、商売スキルが身についたら最強になれるだろうな。

母の手作りマスクはこちらからご購入いただけます

予約注文の殺到につき
とり急ぎオンラインショップを開店しました。
低価格の理由も商品説明に載せてますので、よろしければご覧ください。

最後までお読みいただきありがとうございます。もしうちの母の挑戦をご支援くださるという方は、文末に投げ銭機能(この記事を100円で購入)を用意しましたのでポーンとひと投げお願いします。100円です。

支援してもらったなんて母に伝えたら、はりきって高級マスク用生地を買いに走ってしまうでしょう。
原価管理から覚えてください、母。

自分の作品が誰かに必要とされて、その人のところに届くのが楽しんだよね、よかったね。

新型コロナウィルスが1日も早く収束して、みなさんに穏やかな日常が戻ってくることを本当に願っています。

追記① 販売開始6時間後

予想を大幅に上回る注文をいただき、まさかの販売開始6時間で完売しました!

ありがとうございます!!!

さっそく母が製作にとりかかりました。「売り物になるなんて、緊張する」と言いつつも、ひとつひとつ丁寧に作っています。

必要としている方のもとへ届きますように。

追記② 不測の事態「ゴムひもが全然足りない」

画像5

生地は大量、でも型を当ててていねいに切り取るのに時間がかかるから、なるべく切り取った生地から使わないと、と在庫管理をはじめた娘。

マスク用のゴムひもの長さをはかって着る重大任務を任された娘ですが、ここでやっと気づいた。

マスク用のゴムひも、全然足りない…ッッッ!!

「そのへんの手芸品店にはもうないよ」と母。

追加購入しようと在庫検索。10メートル300円で母が購入していたゴムひもが、どこも品切れ。

画像6

すぐに購入できるものを検索。その検索結果が衝撃的すぎて。

画像7

10メートル980円 or 2,499円

20メートル2,350円

((((;゚Д゚))))

原材料が価格3倍になってる…ッッッ!!!

ちなみにマスク1枚につき両耳で0.6mの長さのゴムひもが必要です。

マスクの注文数は100枚以上。このままだとゴムひもは70枚以上足りません…。

まさかこんなに売れるなんて思わなかった、母の手作りマスク。

でも作れば作るほど母が赤字に陥るのだけは嫌なんです。

低価格でも納得した出来栄えじゃないと発送しないと、ワンオペで手作りマスクを製作する母への支援として、文末の投げ銭100円をお願いさせてください。

いただいた投げ銭は全てゴムひも代に充当します。

どうかよろしくお願いします!

追記③ 完売後に送料値上がりが発覚

購入者様にご負担いただく送料。よし、ダブルチェックだ!

画像8

よしよし。クリックポストの送料は188円でまちがいない、と。

そしてオンラインショップの送料の欄に入力!

そして30日夜、めでたくマスク完売後。

発送準備をすすめているところに衝撃の表示が…

画像9

うっそーーー!!!

4月1日てアンタ、あさってやん…

((((;゚Д゚))))

ちゃんと確認したのに…ッッ!!!

こうして約100枚の送料の不足分、10円が販売利益から引かれることに

ビジネスって、ホントむずかしい…

追記④ 税別価格だと思って設定したのに税込み価格だった

コレは完全に私のミスでして。さっき気づきました。

BASEのオンラインショップで販売するには10%の消費税がかかることは出品時に確認済み。

出品時、わたしはなぜか「こちらが販売価格を入力したら、BASEが消費税を自動加算してくれるんだろう」と思っちゃったんですよね。

画像10

ほんとに売れたんだ、しかも完売だよ母…

と在庫管理個別対応発送準備を全並行処理でバッサバッサとやってるあいまに、完売したページをしんみりとながめたんです。

ん?

んんん?

こぴ

((((;゚Д゚))))

消費税込みの値段なのコレ!?

オンラインショップ店主の初歩的かつ致命的なミス。

こうして母の手作りマスク製作販売は

売値180円ー消費税10%ー送料負担10円=…

イコール…

。゚(゚´Д`゚)゚。

商売ってむずかしい。

※4/2 追記:消費税の納税方法について調べたところ、売上1000万円以下なら消費税は納めなくていいそうです! 勉強になりました。

画像14

参考: https://www.attax.co.jp/zei/mercari0221/

追記⑤ 異能バトル発生? せっかちな娘 vs 職人気質な母

「ごめん、もう無理かも…」

そう言いながら仕上がったマスクを私に渡して力尽きる母。

母は休日10時間、平日は仕事が終わってから6時間、製作に励んでいる。なんという職人気質と集中力。

ムリしなくていいよ、もう少しラクにしていいから。せっかちな娘は早く発送したくてしょうがない。

それなのに「せっかくだからていねいに作りたい」とあきらめない母。製作時間の長さに完成数が比例していかない。

つまりめちゃくちゃ遅いのだ。

その分、店頭に並べられてもおかしくないようなピシリと折り目のそろったそれはそれは美しい手作りマスクが出来上がる。

画像15

画像16

画像17

せっかちな気質と母の体調を心配する娘と、職人気質でこだわりぬきたい母で激しいバトルを繰り広げたけど、母は折れない。

仕方がないので今回は娘が折れた。発送予定が3日ほど遅れる旨を、該当の注文者さんにお知らせすることに。

技術とセンスは抜群、でも職人気質でこだわりがすごい。

母の副業はこれから軌道に乗るのかどうか。そしてなにより、健康第一で楽しんでやってほしいんだけどなあ。

追記⑥ 手作りマスク量産体制による母と娘の変化

前述の通り、母と娘のバトルは絶えないわけですが、おもしろいことにだんだん変化してきました。

お互いの生活スタイルに関してやちょっとしたものの言い方なんかで、毎日顔を合わせていれば自然と険悪ムードになったり我が家ですが

ちょっと嫌な言い方をしてしまったな、と反省してから、話題をがらりと変えてマスク製作について母に話しかけると、母も同じように感じていたのか、ケロッと話してくれたり。

海外生活も5年目で、1年に1週間くらいしか顔を合わせることがなかったのに、突然の事態によって居候生活が3ヶ月めに突入。

これまでは1週間いっしょにいただけでケンカばかりだったのに、こんなにも長期間生活を共にしてケンカしても引きずらずにいられるのは、マスク製作があったおかげにちがいありません。

気分転換に外出ができなくてずっと家にいても、母はマスク製作、私は完成したマスクの発送準備とオンラインショップの管理をせっせとする毎日。

母と私の生活に、マスク製作という単発イベントが発生しなかったら「二度と帰ってくるもんか!」って言いながら不満だらけで暮らしていたと思います。

追記⑦ 母のメンタルが超安定

母の趣味はテレビ。1日中テレビを流したり、大容量ハードディスクに録画した番組をずーっと見ています。

毎日のテレビの話題は、もちろん新型コロナウイルスにまつわるものばかり。マスメディアは恐怖をあおるっていうし、母の世代の人はテレビの情報で不安になったりする人が多いんじゃないかなあ。

テレビを一切見ない私は、ちょっと心配していました。

この心配は大きくはずれて、母は不安になるどころかむしろメンタルが安定している。

というのも、マスク製作がめちゃくちゃ楽しいらしくて、「手を動かしていると嫌なことを忘れる」とのこと。

あとは、マスクが届いた方からのレビューを母に見せると、ますますマスク製作に燃え上がる。

画像18

画像19

画像20

画像21

大量の情報が出回って、だれでも不安に陥りやすいこの状況。

そのなかでも、母がやりがいや楽しみに満ちていて、元気に暮らしてくれていてよかったなと、突発イベント・マスク製作に感謝します。

追記⑧ マスクが売れ残るようになってきた

初日にほぼ完売。安かったからねー。

完売後もたくさんの問い合わせをいただいたので(ありがとうございます!)ひっそりと数量限定・予約販売という形で再開。

第2弾もぽつぽつと減って、完売(ホントにありがとうございます!)して、現在は第3弾の予約注文を受付中。製作とお届けは4月下旬を予定しております。

ここに来て、売れ足が鈍くなりました。まだ残ってます。

ちょっと寂しい気もしましたが、よーく考えるとこれはいいサインかもなあ、と。

マスクが必要な人に行き渡って、「材料仕入れ値の高騰で値上がりしたマスクなんていらねーよ」ってなって、

いつか「まだ手作りマスクなんて売ってるの?もう誰もいらないよ」って日がくる。

それはこの新型コロナウイルス感染におびえる日々が終わって、新しい時代がくるサインなんだと思います。

めちゃくちゃ気が早いことは分かって言ってますが、マスクが売れなくなる世界が1日も早く来たらいいなと、オンラインショップの管理をしながら願わずにはいられません。

マスクが売れなくなったら母はどうするのか?

母の確かな腕とせっかちな娘の市場調査をかけあわせて、新製品の開発でもやって、ケンカしながら話し合いながら、母の副業を持続可能なものにしていくつもりです。

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?