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小泉進次郎さんの育休取得と、私の中の固定概念

小泉進次郎さんがお父さんになり育児休暇を取ると決めた、というニュースがテレビやネットで取り上げられている。賛否両論、かなり賑やかなようだ。

私は、現職大臣が何はともあれ「2週間取得」することを、良い前進だと喜んでいる。理由をいくつか書いておこう。

まず、UNICEFの調査によると、日本の男性の育休制度は、世界でも最も手厚い。にも関わらず、男性の育休取得率は、2018年度は6.16%で、先進国の中で最低レベル。制度が整ってもほとんど利用されてない。なぜかしらー。

先日、イクボス同盟5周年イベントで教えてもらったのだが、子どもが生まれたとき休みを取らなかった人たちに意向を聞くと、約7割が「育休取りたい」希望がある。では、どういう条件があれば取れるかという質問への回答は「上司が必ず『いつ育休取るの?』と聞いて環境を整えてくれる」「人事部が必ず『いつ取るの?』と聞いて環境を整えてくれる」がツートップだそうだ。ニッポンの職場では、それだけ、権限のある「上の人」が取得を促すことが大事なのだ。(調査レポートより

つまり、世界一の男性の育休制度があるのに、ほとんど利用されてないのは、社会通念や組織風土がネックなのだ。こういう状況では、影響力あるトップの行動は、社会通念を変える大きなきっかけになる。

賛否両論が出てきて賑やかなニュースになっているのは、その現れだ。進次郎さんが育休を取らなかったら、男性の育休のことなんて考えたり意見を言うこともなかった人が、結構いるんじゃないかしら。

ちょっと横道に逸れるが、国会議員の世界はかなり「男女分業」意識、かつ「男が上、女が下」意識が強いらしい。私と同年代の知り合いの旦那さんが少し前まで国会議員だった。彼女は日本大企業の研究職というバリキャリで、お子さんもいる。彼女が海外の学会に行くとき、夫の方が「そういうわけでその週は夜の会合は出られない」と与党の偉い人に言ったら「何だそれ?嫁ひとりマネージできなくて、どうする?」と怒られたらしい。なんという時代錯誤なコメント、って私もびっくりしたけど、思えば与党の偉い人たちは70代とかな訳で、彼らにとっては当然の感覚なんだろうと思われた。そういう人たちが女性活躍とか言っても、まあアレよね。

そんな話を聞いていたので、進次郎さんが育休と言い出し実現するには、まあ、さぞ、いろいろあったのではないかと想像しちゃった。突破してくれてありがとう、という気持ちで、見ている。

世代といえば、男性の育児参加って、すごく個人の感情に近くて、しかも世代によって価値観も行動も大きく異なるテーマだ。東京の大企業サラリーマン感覚でいくと、私の親(後期高齢者)世代は、仕事時間中には妻の出産には立ち会わないのが普通だった。私の出産時は、なるべく出産に立ち会えるよう、夫は仕事を1日だけ休むのが普通だった。そして現在、「もう少し長く休みたいけど、休めない」夫たちが7割いるようになってる。

そういえば25年前に働いていた大手銀行では、勤続10周年で1ヶ月休暇が取得できた。のんびり海外旅行する人が多い中、その休暇を育休(当時はそういう言葉はなかったけど)に充てた、男性の先輩がいた。私はすごく素敵だとうれしく感じたけど、そういえば彼の周りの男性は、どんな反応だったんだろう。今はどう思ってるんだろう。その先輩と同世代の経営者男性たちは「もっと一緒にいたかった」と動画で語っている。

小泉さんの育休取得に反対する声を聞いて、ちょっと心が痛くなる。男は外で女は内という分業意識が根強いなあ、男=外=偉い、女=内=従属、みたいな価値観もチラチラするなあ、と。だけど、私も自分のことを良く振り返り、私の中に「男女分業」「仕事第一」の固定概念が全くないか、無意識のバイアスとして残ってないかと言えば、そりゃありますよ、奥の方に。自分の中の固定概念が、母親として不十分だったんじゃないかとか、「男性並みに」職場に集中できていればもっとできたんじゃないか、といった「罪悪感」という痛みとめんどくささを引き起こしてるんだから。

そう思うと、進次郎さんの育休に声高に反対する声の中にも、何かの痛みを伴ったものがあるように感じる。子育てに関われなかった痛み、ワンオペで育てた苦労、諦めたあれこれ、それをぐっと堪えて乗り越えてきたのに…。育休に反対する人も応援する人も、「男女分業」「仕事第一」の固定概念に縛られていることと、それにより痛みを感じてることの2つで、実はつながっているかもしれないのだ。大臣の育休取得に賛成・反対の対立構造ではなく、「私たち」対「社会通念が作った固定概念」という課題なのかも。

男性育休取得が広がることを願って進次郎さんの育休取得を応援する私たちも、自分の中にある小さな旧体制の存在を認めた上で、対話が進めばいいなと思う。

今日は、以上です。ごきげんよう。

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