モンタージュの世界


電車に乗る
ほとんど利用しなくなった コロナ禍のせいだけではなく 
電車に乗って どこかに行くような用事が 少なくなった
久しぶりの車内で 目にするのは
私にとっては大量の広告
興味を持って 
じっくりと
けれどすぐに もしかしたら
何十年と変わらない景色なのかも と感じ始める

有名人の顔ぶれについて
分からない自分になった
だから 広告に映る男女の顔の
有名無名が あやふやだ

そんな男や女の顔が
商品の写真と同じ画面上にあり
彼らは 広告の中で 商品に触れてさえいないこともある
一つの画面の中での ある意味「ショットの切り返し」によって
レイヤーの重ね合わせによって
なにかしらのイメージを形作ろうとしている

ある美容広告では
白衣を着た男性の写真が 隅の方にあり
この男性が何者であるか そこに一切の説明はない

駅に着くと
ある飲み物を宣伝する 大きな広告が目に入った
透明な液体が入ったグラスを持つ女性が
白い ポメラニアンのような犬を抱えて 緑あふれるテラスにいる
切り取られた飲み物の商品写真は レイヤーとして彼らの「上層」に貼り付けられる
女性が居る「層」には 商品は存在しないようだ
グラスの中身は ただの水かもしれない なんて思うのは ひねくれているだろうか

商品以外の 見えるもの全てが その商品のイメージだともいえる
イメージの良し悪しを決めているのは なんだろうか

私の知らない人たちの顔が 無言で並んでいる
青い空の隙間


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