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神話や元型を感じたところ|アバター ウェイ・オブ・ウォーター

ひとつ前の記事につづき、アバター ウェイ・オブ・ウォーターの話。

やはり観ていない人にはなにいってるのだか?で、観た人にとっても「そーお?」かもしれないことを好き放題に。

お話の筋をいくつか引用しているので、これから上記以上の前情報なしにアバター2を観たいんだよねという人は、映画鑑賞後にこちらを読んでいただくことをお勧めしておきます(お待ちしてます!)。

劇場で観るべきスケール。
公開中、もう一回はいっときたい。


神話的だと思ったところ


1.スパイダーの矛盾ぶり、ロアクの劣等感など

とくにラストシーンで感じたが、スパイダーはとてもトリックスター的というか、神話の神様たちのようにハチャメチャだ。「それをやっちゃあおしめえよ」「あーあ」である。

父クオリッチ大佐と子スパイダー。父と子の因縁の原型に、クロノスとウラノス、ゼウスとクロノス、はたまたオイディプスなどがあるけれど、ウェイ・オブ・ウォーターではひと味ちがうようだ? 原型を破って、形態形成場から脱しているようにも見えた。スパイダーにとってはサリーという養父の存在も大きいので、父子というありていな構図だと取り違えることもありそうだけど。

そういえばスターウォーズも、あれは宇宙を巻き込んだ壮大な親子喧嘩の話なんだよと、こないだある人から解説を受けたばかり。父子というのも物語の原型として古来からよく扱われる構造でね、と語る人もおられるけど、ほんまやーー。

サリーとネイティリの次男ロアクの、劣等感と疎外感ゆえの暴走は、ああ、自分も身に覚えがあるし、人類あるあるなのではないか。。。
母に会えない悲しさに泣きわめいたり、姉アマテラスの御殿で狼藉をはたらいたりする困った弟神、スサノオのようでもある。

サリーとクオリッチの因縁のケンカもまた、何か原型があるのだろうか。 こちらはこちらで父子ではなく他人だが、星ふたつも巻き込んでどういうつもり?一騎打ちにしといたらいいのに、と思わなくもない。けれど、さもなくばシリーズの収拾はつかないのか。。。

2.ロナルの勇猛さは神功皇后を彷彿とさせる

海の民の長、トノワリの妻であるロナルはシャーマンの家系。序盤ではジェイク一家に辛口強火で、ジェイクの妻ネイティリとはシャーシャー言い合ってるのだが、その後少し態度をやわらげ協力してくれるようになる。ジェイクとネイティリの養女の発作を呪術で鎮めるシーンや、クジラに似た巨大生物トゥルクンと魂の絆を結んでいる様子など、ハイライトは多く、いずれも引き込まれる。

それより何より、彼女が身重の体で戦に繰り出すところには、日本の神話、神功皇后伝説を思わずにはいられない。

神功皇后は神託を受け、身籠ったお腹に「もう少し出てくるのを待っているように」と石をくくりつけて朝鮮半島に出兵する。そのありあまる勢いに新羅の王は戦わずして降伏、朝貢を誓う。それを見て百済、高句麗もつぎつぎにひれ伏す(三韓出征)。

ウィキペディア/神功皇后の項より
歌川国芳 - Waseda University Theatre Museum, Ukiyo-e.org


シチュエーションも意図もまったく異なるけれど、ロナルの猛々しい姿には、このとんでもない豪傑が暴れまわっている様子が透けてみえるようだった。

帰国したのち、無事応神天皇を出産した神功皇后は、安産と子育ての女神として祀られている。ロナルも、何があろうとピカピカの安産型をしている。

神話に出てくる神々は、なんというか、その人、そのまんま、だ。

「今、ここで!」とか、「こういう場合に!」とか、出てくる場所によってその人らしさは彩られ、カッコよかろうがわるかろうが、賢かろうが愚かだろうが、ああ、らしいなあーというまっすぐさに感動をもよおす一瞬に、こちらも生かされているのかもしれない。

星の一葉 ⁂ ホシノヒトハ


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