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【ライブレポート】2021/11/16 BUZZ THE BEARS TOUR BAND IS NOT DEAD IN 2021@高田馬場CLUB PHASE

※2021年11月17日現在、BUZZ THE BEARSは絶賛ツアー中となっている。このライブレポートはセットリストを含め、ネタバレ要素を多く盛り込んでいるので、これからツアーに参加する方は参加後に読んでいただくか、ネタバレでも構わないという方のみ、読んでいただければと思う。


BUZZ THE BEARSが現在敢行中のツアー『TOUR BAND IS NOT DEAD IN 2021』を観に高田馬場CLUB PHASEへと足を運んでみた。東京でのHOMEともいえるハコで、BUZZがどんなパフォーマンスを繰り広げたのか。

断片的ではあるが、感情が伝わってくるMCと併せて振り返ってみたいと思う。


18時スタートと、平日ライブにしては早い開演時間。都内はすでに時短要請も解除され、それに伴いもともと各種要請を踏まえて早めのスタートで設定していた様々なライブイベントがこぞって開演時間を通常営業に戻す中、当初の予定通りで進めるBUZZ THE BEARS。

とはいえ、仕事終わりの観客を見越してか10分近く(以上?)押してライブは始まった。

おなじみの登場SE、千住明の「わが心の銀河鉄道」が流れてメンバー3人がステージに。

最新アルバム『咆哮』の1曲目でもある「RUN」がライブのオープニングを飾る。合いの手のタイミングもバッチリなフロアに笑顔がこぼれる越智健太(Vo/Gt)。景気良く始まったワンマンは、続く2曲目で早くもアンセム「光り」が鳴り響く…はずだったのだが、ここで越智のギターが鳴り損ねて急ブレーキ。

ライブ自体は止まらないが、曲の序盤はギターの音が心細く、輝ききれなかった「光り」。「ちょっと不安にさせたな、取り戻すわ!」という越智の言葉通り、中盤から勢いを増すとし曲終わりから隙間を入れずに「羽根」へと突入し、上昇気流に乗って飛び出していく。

「チャートにランクインしたり、CDTVで50位以内に入ることが名曲とは思ってなくて、何年経っても、大きな声で歌い続けられる曲が本当の名曲だと思う!」

越智がそう告げると、「クライマー」へ。高速で叩かれるドラムを背にしっかりと歌い上げるボーカル。ふたつの対比が気持ちいい一曲だが、ここで越智が再びギターをミスってしまう。すかさず池田大介(Ba)が「やるぞー!!ありがとう!」と叫んでミス直後の微妙な空気をかき消していく。越智も「今日俺絶好調やわ!」言い放ち、その堂々とした振る舞いがフロアに安堵感をもたらしていた。

数年ぶりに札幌でワンマンを行ったという彼ら。久しぶりに行くということでMVになっているような、みんなが知っている曲中心のセットリストを組んだという。しかし今日の東京では、何度もライブをやっているので普段やらない曲を多めに入れてきたと話す越智。

いわゆるライブ定番ではない「CRAZY MISSION」「アイスクリーム」「MY WAY」「シーフ」を詰め込んだ「めったにやらない曲」ブロックを駆け抜けていく。

「MY WAY」での《へへへへ》と笑うほんの一瞬のタイミングで、越智にピンスポットが向けられる。照明スタッフとの息の合った共同作業が観る者のテンションを上げる。レア曲でもしっかりとリアクションする観客の姿に越智も安心したことだろう。

『TOUR BAND IS NOT DEAD』というタイトルで2回、ツアーを回ったというBUZZ THE BEARS。しかしようやくコロナのその先が見えてきて、ツアーを回ることも当たり前になりつつある今。ツアーバンドは死なない、なんてことを銘打つ必要もなくなってきたということで次はタイトルを普通に戻すと宣言。徐々に、ライブハウスに日常が戻ってきていることを感じさせるMCだった。

予想外にも、ライブ序盤に組み込まれた、個人的に大好きな「鳴りやまぬ歌」。いつ聴いてもグッときてしまうのだが、コロナに耐え忍ぶ時間を過ごしたうえで聴くといつにも増して感情が揺さぶられる。

「結構曲あるけどぼーっとしてんなよ、急げよ!」の煽りから続く曲はもちろん「Hurry Up!!」
感動で心がゆる~くなった直後に急げ!と慌ただしく乗せられる、なんとも緩急差の激しいセットリストだ。

「まわりに大人がたくさんいた時期があって、大人にやいやい言われて出したシングルも、今なら愛せる」というMCからメジャー時代の「声」も披露。自分はビクター時代のアルバム『GOLDCAGE』でBUZZ THE BEARSの魅力に気付いたので、彼らはその後ここを離れることにはなったが、この作品を世に出してくれたことに感謝している。

当時は思うところもあったのだろうが、今は愛せる、と言ってくれたのはファンとして素直に嬉しい。

「サクラ」で激しく燃やしたかと思えば「Love Song」でウェットな空気を醸し出すなど、再びの緩急差で観客をノックアウトする。まるで寒暖差が激しい環境に置かれて糖度が増すフルーツのごとく、フロアも“出来上がって”いく。

名門と呼ばれる大学に在籍する若いバンドマンと出会い、卒業後は銀行に就職したと知る。その順調過ぎるバンドマンについて越智は「そいつからバンド取っても銀行が残る。俺からバンドを取ったら何にも残らん…!」とぼやき、フロアやメンバーからも笑いが生まれる中で、ギターの音量を上げていく。

そこで池田が「え、曲いこうとしてる?無理!」「これで入んの??」と異議を唱える。曲前のMCとしてふざけてやしないか、という空気。ここからどう盛り返すのか注視していると、半ば力業で「仕切り直しであげていこう!」と煽り、さらに「上げた手が俺らの力になる。どんなんでもいいから反応返してくれ!」と叫んで次の曲「READY?」へ突入する。

フロアの拳が似合う『咆哮』収録の激しいロックチューンだ。越智のリクエストなどなくとも観客たちはきっと手を上げ、楽しんだことだろう。自然に拳を上げたくなる一曲だ。結果的に無理やりMCの温度を上げての曲突入は、仕切り直しのハードルをしっかり越えてフロアを盛り上げていた。

「花火」を演奏する際には、越智が彼の大好きなバンドマンの姿をフロアに見つけたようで、そのバンドマンと縁のある曲なのか、「セットリストにこの曲を入れておいて良かった!」と心底嬉しそうだった。

対照的に前回、ここ高田馬場CLUB PHASEでのライブに訪れた時、越智はMCで仲の良いバンドたち(INKYMAP、SECRET 7 LINE、MINAMI NiNE)は誰も来てくれなかったと悲し気だったことを思い出す…。

昔、下北や新宿のライブハウスに出ていた頃、当時同世代のバンドマンたちと対バンしていたその思い出が、綺麗に見えると話す越智。しかし、思い出も素晴らしいが今いる場所や最近いる場所、今そばにいてくれる人も大事にしたい。思い出もいいが今いる場所や人のほうが大事なんじゃないかと語り、そう思って作ったという「ウタタネセピア」を披露する。

《何だ今日鍋か》
《「野菜食べないと大きくならない」となぜかみんな笑った》
《もう戻れない あの頃に》
《立ち上がった湯気はもう見えない》

越智節と言ってもいいような、生活感をにじませる、人生の何気ない一瞬を切り取る描写が光る名バラードに酔いしれる。ちょっと不器用でいて力強さと柔らかさを併せ持つ越智の声だからこそ響く歌だ。

コロナ禍でのツアーではどこにも寄れず、ライブが終わって外に出ても街は暗くて、サービスエリアで飯を食べようと思ってもすでに閉まっており、結局コンビニ飯になってしまう。ただライブをやって、さようなら、という状況はツアーバンドである彼らを苦しめていた。

それでも、ステージからの景色を見たら救われるんだと話す越智。自分たちはバンドマンだから、ライブハウスにいることを選んだ。自分たちがライブをやることで、この場所を守れるんじゃないかという気持ちで、1本1本のライブを続けてきたと熱い思いを吐き出す。

そんなメッセージの直後に演奏された「ROCK'N'ROLL IS ALWAYS WITH YOU」の破壊力たるや。リスナーにとっても、ライブハウスにとっても、そしてバンド自身にとっても刺さりまくる、サビにもなっているタイトルのフレーズ。前作『MASSIVE』収録曲だが、これも10年、20年と歌い継がれていく“名曲”の予感。

続く「S・I・L・E・N・T」ではAメロから歌詞が飛んでしまうという失態を犯す越智。今日は2回の大きなギターミスもあり、越智風に言うなら“絶好調”ということになる。だが、完成された演出、完璧なフォーマットによるライブパフォーマンスが生む感動とはまた違うベクトルで、生身の人間が泥臭くも必死に表現し、伝えようとするパフォーマンスも観る者の感情を大きく揺さぶるのだ。BUZZ THE BEARSは、それでいい。


完成された演出ではなくとも、と書いたものの、MCの内容は次の曲を踏まえたものが多い。(銀行バンドマンの話は別)。このMCブロックでは、高田馬場CLUB PHASEの思い出を語っていた。昔、東京での初ライブがあり、UNLIMITS等も出演していたレーベル系のイベントに出たんだそうだ。CDも出してない自分たちのことは誰にも知られておらず、ノルマを払っての出演。悔しい状況ではあったと思うが、目に映るものが全部新鮮で、東京の凄さを感じたという17年前の思い出を話すと「夢しかなかったし、今も夢しかない」と続け、次の曲「ライブハウス」へと繋げていく。

《響き渡ってた歓声は》
《時に埋もれて消えてくけど》
《一緒に過ごした思い出は》
《消えない消えない消えない》

ライブハウスでの熱狂と興奮、そして終わった後の切なさと、心に刻まれた熱い思いを表現した名曲。ライブバンドが歌うライブハウスやツアーの歌には素晴らしいものがたくさんある。フラカンの「深夜高速」、Rhythmic Toy Worldの「ライブハウス」、BARICANGの「BAYSIS」、ハンブレッターズ「ライブハウスで会おうぜ」、MOROHA「四文銭」…。ステージとフロア、どちらに身を置く者にとっても響く曲たちだ。

「俺らは今日もここで夢を見てる!」と叫ぶ越智の姿にも胸が熱くなった。何年も前、O-WESTでのワンマンライブを行った際のMCでは、いつか武道館へ、といった話もしていた。今の彼らが見ている夢がどんなものかはわからないが、シンプルに大きなステージに立つBUZZ THE BEARSを見てみたいと思う。

ライブも残り数曲というこのタイミングで「BUZZ THE BEARS 咆哮リリースツアー、TOUR BAND IS NOT DEAD、高田馬場CLUB PHASEへようこそ!」と叫ぶ。心をくすぐられる憎い構成だ。そういう部分はしっかりと考えていて、ただ無策に勢いだけでライブをやっているわけではないことが伝わってくる。

だてに長年、ライブハウスを主戦場に戦ってきたわけではないのだ。


最後となるMCブロック。コロナ前のライブであればいつもしていたツアーファイナルの告知について、今回のツアーではしなかったという。県外移動もままならない時期だったため、「大阪に来てください」とは言えなかったんだそうだ。

しかし、今は違う。少しではあるが状況が変わってきた。ここ最近のライブでは、ファイナルの告知をするようになったと話す越智は、高らかに叫ぶ。

「2021年12月4日!大阪心斎橋、BIG CATでファイナルやります。東京からも、県をまたいで遊びに来てください!」

2年前ならなんでもない告知。大阪のファイナルなら自分には関係ないな…くらいに感じていたであろうメッセージがこんなにも心を揺さぶるとは。直後に演奏された「FOREVER ONE」。君は君の風に吹かれて、と歌う名曲を涙目になりながら噛みしめつつ聴いた。

「明日からまた、身体に気をつけて頑張ってください!」

そう告げると越智はラストナンバーのタイトルを叫ぶ。

「雨!」

モッシュもダイブも起きはしない。この1年半でキッズも体に染みついている。何がダメで、何がいいのかを。走り出したい衝動はあるだろうが、それを抑えながら、拳を握り、腕を上げて今できる最大限のやり方でライブを味わい、楽しんでいた。そしてそれは自分も同じだ。


「皆さんのお相手は90分間、ツアーバンドBUZZ THE BEARSでした!」

最後の越智の絶叫をもって、ライブは終了。汗まみれの池田、そして両手を合わせてお辞儀をする桑原智(Dr)もステージを去り、『TOUR BAND IS NOT DEAD IN 2021』東京ファイナルは幕を閉じたのだった。

無事にファイナルまで全うしてツアーを完走し、また2022年、新たなツアーで全国を飛び回り、各地で美味しいご飯を食べ、充実のツアーバンドライフを送ってほしいと思う。ツアーで東京に寄ることがあれば、また遊びに行こう。


セットリスト
01.RUN
02.光り
03.羽根
04.クライマー
05.CRAZY MISSION
06.アイスクリーム
07.MY WAY
08.シーフ
09.鳴りやまぬ歌
10.Hurry Up!!
11.サクラ
12.Love Song
13.声
14.READY?
15.サンライズ
16.スーパースター
17.FAR AWAY
18.花火
19.ウタタネセピア
20.ROCK'N'ROLL IS ALWAYS WITH YOU
21.S・I・L・E・N・T
22.全てを
23.ライブハウス
24.それでいい
25.FOREVER ONE
26.雨


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