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【ライブレポート】2021/6/20 エナツの祟り(ex. ジュリアナの祟り)ワンマンRAVE「キミと過ごした青春のJuly and 夏を取り戻せ !!2020 を取り戻せ !!2021」

エナツの祟りのワンマンライブに行ってきた。彼らのライブを観るのは、2019年3月に開催された後楽園ホール以来。当時はまだ「ジュリアナの祟り」と名乗っていた時代だ。

平成の最後に活動を休止し、令和元年開始直後にエナツの祟りと改名して再始動。結果的に改名から2年間、その活動の集大成にもなった今日のステージを振り返ってみたい。


会場となったLINE CUBE SHIBUYAはディスタンス確保のため客席に空席を設けていたが、それでもバンドグッズであるピンクのTシャツを着たファン(=タタラー)でいっぱい。桃色に染まる客席は壮観だ。

開演から10分ほどしてメンバーが登場する。ステージと客席を隔てる半透明の幕が落とされ、ついにライブが始まった。

ステージは2階建てになっており、後方に設置された大きなスクリーンには今この場で行われているライブ映像がエフェクトを交えて流される仕組みとなっている。

オープニングを飾るは江夏亜祐(Dr)のボーカルパフォーマンスによる“キミクロニクル”だ。電子音バリバリのユーロビートに乗せて、平成を象徴するダンスを披露するエナツの祟り。さすが、かつて「ジュリアナ」の名を冠しただけのことはある。

スクリーンではライブ映像とともに合いの手となるフレーズも映し出されるため、ライブ初見の観客でも楽しめる工夫がなされていた。

2曲目“薄紅色の淡い夢の中で~バブルの呪文は AYATRA~”に入るタイミングで

Vo.蕪木蓮
ヴォーカル イラスト
Ba.矢島銀太郎
ベース 120kg

といった具合にメンバー紹介の文字がスクリーンに流れ、各メンバーが受け持つ役割に合わせてそれぞれのポジションにスタンバイ。

江夏はドラムを叩き、矢島はベースを弾き、佐川ネル秋吉(Pf)と翌桧ダンク冬雪(Pf)はステージの左右に広がりパフォーマンス。サポートのノブ(Gt)もギターを構え、蕪木が歌を歌う、バンドセットでのパフォーマンスが始まった。

本日無料で配布された、オリジナルのハリセンを駆使した振付によるダンスで会場は一気に熱を帯びていく。

その後も“結論”“夏のyou”といった曲を投入するエナツの祟り。ステージ上ではネル、ダンクのパフォーマーだけでなく楽器隊も一緒になって踊る。観客たちも負けじと踊り、跳ねることで盛り上がりはますます勢いを増していった。

2階ステージ奥から現れるスモークによる演出は会場を非日常的な空間へと仕上げていく。情感たっぷり、表情豊かに歌う蕪木のボーカリストとしての表現力も見事で、観客たちをより一層ライブへと没入させていった。

ネルダンのふたりによるパフォーマンスはボディアクションにとどまらず、喋りでもアジテートして会場をコントロールする。

歌と演奏、そしてパフォーマンスが三位一体となったステージに、スクリーンによる映像、そして照明やスモークといった舞台演出が加わり、すべてがひとつになってLINE CUBE SHIBUYAを楽しませていた。

“ギリギリ勝負な僕たちは”からは撮影可能タイムとなり、観客たちにスマホ撮影とSNS拡散を促す。前回足を運んだ後楽園ホールでのライブでも行われていたので、エナツの祟りとしては恒例ともいえるプログラムなのだろう。

ステージの1階だけでなく2階でもライブパフォーマンスを披露したり、ポップアップ(ステージ床下からジャンプして飛び出す演出)を活用したりするなど、立体的な見せ方を意識した構成はヴィジュアル面でインパクトがある。さらに付け加えるなら、これら演出を生で体感する迫力は見た目+アルファの感動を呼び起こしてくれる。

特技を生かしたダンクによるタンバリンパフォーマンスも印象的だ。

撮影可能タイムはまだ続いていたが、最初はスマホでガッツリと撮影していた人たちも、その数は徐々に減っていき、気づけばほとんどの人がスマホをしまい、メンバーたちのアクトに夢中になりながら上半身を使って楽しそうにダンスを踊っていた。エナツの祟りのライブは、「観る」よりも「参加する」といったほうが適切なのかもしれない。

やがて撮影禁止の時間を迎えると、「ここからは蕪木の歌を楽しんで!」という言葉とともに“SAQRA”が披露される。心情や情景が伝わってくるような歌詞と日本人の琴線に触れる叙情的なメロディが染み渡る楽曲だ。

前半ブロックの終盤では、“九月の雨~scene88~”での速度メーター表示の付いたドライブ風映像や、まるで雲海がステージ床から客席へ流れていくような“キミリウム”でのスモーク、さらには“New Scene”での、ステージ2階に設置されたターンテーブル風の舞台の上でウォーキングをする蕪木、といった趣向を凝らした演出や装置が登場。一瞬たりとも観客を飽きさせない、そんなポリシーがあふれ出るようなライブが続く。

一見、落ち武者のような風貌がインパクト大な矢島のベースソロと、リズムに合わせて首を左右に振る可愛い仕草にギャップ萌えを感じたり、様々な演出が繰り出される中でも、力強く鍛えられた蕪木の歌声に圧倒される瞬間を何度も味わったりと、メンバーが放つ個性も髄所で光り輝いていた。

ライブ中盤、一度メンバーがはけた後で佐川ネル秋吉が再登場し、DJタイムスタート。さらには翌桧ダンク冬雪によるマジックショーも始まるなど、「バンドによるワンマンライブ」という字面からかけ離れたプログラムが展開。楽しいと思うことや楽しんでもらえると思うことは貪欲に取り入れていこう、という彼らのスタンスを感じさせる一幕だ。

前半戦の蕪木ボーカルによるバンド編成から切り替わり、楽器を手放してのライブ、いわゆる「ハッスルトランスタイム」へと突入。まずはスペシャルメドレーということでボーカルも江夏に変わり、フロアも一気にダンスタイムへ。

「ハッスルトランスタイム」の名にふさわしい、テンションの上がるド派手なダンスナンバーが続き、前半のバンド編成とはまた違った楽しみ方ができる構成だ。1つのライブで2度、3度と美味しくいただけるのがエナツの祟りのライブなのかもしれない。

観客たちは声が出せないので、普段であればコールする場面でもハリセンや手拍子で代用する。不自由に制限されている中でも、それを逆手にとってエンターテインメントにしてしまおうというスピリット。

この1年強のコロナ禍において、様々なアーティストたちが今まで通りのライブができない状況に直面し、試行錯誤していた様を見てきた身としては、ひとつの答えを見つけてライブに落とし込む彼らの姿が頼もしく思えた。

ライブ終盤には、“紫陽花モードで責めてくれ!”“無敵シュプレヒコール~このSを、聴け!~”といった、ユーロビートかハードコアテクノか、というアグレッシブな曲たちが怒涛のごとく投下され、まさに時代は昭和→平成バブルの極み。


本編ラストとなる“あーもー!アモーレ!!~アイツのタタリ~”ではステージ階段を駆け上っていく江夏の姿が。最後の曲がいちばん激しいのでは、と思うアクションで会場をヒートアップさせてくれる。


本編終了後、手拍子による再登場リクエストが続く中で、スクリーンにはある告知が表示された。これまでのバンドの歴史、ビートたけしに命名された「ジュリアナの祟り」としての活動と「エナツの祟り」への改名。そして本日のライブについては「最後の渋谷公会堂ワンマン」という表現が使われている…。

想像できる結論は2種類ある。バンドの終焉か、あるいは。果たしてどっちなんだ?というドキドキとともに、発表された答えは…「ジュリアナの祟り」への再改名!さらに縁の地・渋谷CLUB CRAWLでの無料ライブを皮切りに、リベンジとなる新宿BRAZEをファイナルとするライブイベント「July and 夏をやり直そうか!」シリーズ開催も決定。

歓声を出すことはできないので直接音で感じることはなかったが、会場に足を運んだタタラーにとって胸が熱くなる瞬間だったに違いない。

新しい衣装を身にまとい、「ジュリアナの祟り」としてアンコールに登場したメンバーたち。バンド編成の曲、楽器演奏レスな曲を織り交ぜて、晴れやかな表情で新曲“フタリで、、、”を含む全4曲を歌い、踊り、演奏した。

代表曲のひとつ“バブリー革命~ばんばんバブル~”では本来、《ばんばんバブルばんばばんバブリー”》というフレーズを観客がコールする流れになっているようだが、コロナ禍の今、それはできないということでハリセンや手拍子で表現する。喉ではなく体で生み出された音が綺麗に揃い、《ばんばんバブルばんばばんバブリー”》と聞こえてくるようだった。声を出せないからこそ生まれるこの一体感に、メンバーも喜びを感じていたように思う。


「ジュリアナの祟り」復活ライブともいえるこのアンコールで蕪木は涙を流し、江夏は「ただいま!」と叫ぶ。

ラストの“アクシデント”では《運命的に君が好きだ》の歌詞を《運命的にみんなが大好きだー!》と変え、感情を爆発させて叫び歌う蕪木の姿があった。


すべての曲目を終えて、最後の挨拶。今日の公演はもともと1年前に予定されていたものだが、コロナの影響で延期になってしまったという経緯がある。江夏は、延期になってしまった分たくさん練習してアイデアも出し合い、コロナ禍で楽しめる演出を考えてきたと話す。そして、声を出せない中でもレスポンスをしてくれたことに感謝の言葉を述べた。

大きなイベントを蕪木の誕生日に合わせて開催してきた歴史を踏まえ、蕪木からもコメントを、と促す江夏。すると蕪木は「ここまで来てくれて、お誕生日のお祝いも兼ねて来てくれて本当にありがとうございます」と来場に対する感謝を伝え、「これ以上喋れません!」と感極まっていた。

そのまま引き継いだ江夏は、彼の思いを吐露していく。

2年前に開催した国際フォーラムでのワンマンライブ時、4年後には日産スタジアムでのライブができるかもしれないと話し、国民的バンドになるとファンと約束していたと語る。

さらに言葉を続け「でも全然、約束を守れなくて…悔しかった」とこらえきれず涙を流す江夏の姿には、今日を含め2本しかライブを観ていない自分でも、胸に来るものがあった。


「僕らは自分たちの体力を削ってひたすらライブをやって人と会って、ということをたくさんやってきたバンドなのに、ライブができなくなって、打つ手がなかったんですよ僕らには…」

悲痛な叫びだった。

アーティストたちは皆、苦しんでいたと話す江夏だったが、バンドやライブシーンを追いかけていた自分にも、その苦しみは痛いほど伝わってきた。ライブ活動ができない、ということをきっかけに音楽から離れた者もいれば解散や活動休止に至ったバンドもたくさんある。エナツの祟りがそういう結論を導き出していた可能性もゼロではなかっただろう。

とてつもない苦悩に直面しながら、コロナ禍においても応援してくれたファンたちのおかげで、ちょっとずつ、0.1歩ずつでも後ろに下がることなく続けることができたと話す江夏。

さらに緊急事態宣言下で、来ることをよしとされなかったかもしれない中、自分たちに会いに来てくれたことに対して感謝の気持ちを伝える。

そして日産スタジアムでのライブ実現も、まだ2年猶予がある、と。ワンチャンあるかもしれない、いや、ワンチャン叶えよう…まだ諦めていないと力強く語った。

最後に江夏が伝えたのは、感謝の言葉と未来への希望だ。

「これまでに出会ってくれたみなさんも」
「これから未来に出会うであろう方々も」
「一緒にジュリアナの祟りを育てていってください」
「よろしくお願いします!」

「赤字しか出ないってわかってたのに」
「僕のわがままをきいてくれたスタッフも」
「遊びに来てくれたみなさんもありがとうございます!」


記念の集合写真撮影も終わり、いよいよ幕が下りる。その立ち位置だと彼だけ幕の外側に取り残されてしまうことに気づいたスタッフが、慌てて佐川ネル秋吉をステージ内側に引きずり込むという、なんともお茶目なワンシーンを刻んで、【エナツの祟り(ex. ジュリアナの祟り)ワンマンRAVE「キミと過ごした青春のJuly and 夏を取り戻せ !!2020 を取り戻せ !!2021」】は終演となった。


頻繁にライブができない状況でこの体力とこのパフォーマンス。しっかりと準備してきたことが伝わるステージだと感じた。そしてあの手この手で観客を楽しませようという、舞台に立つ者とそれを支える者たちのプロフェッショナルな仕事ぶりも見事なライブだったと思う。

かつての名前を取り戻し、逆境に負けず突き進むジュリアの祟りの、ますますの活躍が楽しみだ。


セットリスト
※記事初出時、セットリストに誤りがあったため訂正しております。
01.キミクロニクル
02.薄紅色の淡い夢の中で~バブルの呪文は AYATRA~
03.結論
04.夏のyou
05.ギリギリ勝負な僕たちは
06.だーりん
07.儚きピオニー
08.SAQRA
09.九月の雨~scene88~
10.キミリウム
11.New Scene

~DJ TIME and MORE~
12.泡沫の罪な夏
13.キラキラ☆hero
14.【事勿れ主義】SNSメッセンジャー【痛い人】
15.パンティーナイト♂

16.愛しのmy☆姫
17.紫陽花モードで責めてくれ!
18.無敵シュプレヒコール~このSを、聴け!~
19.あーもー!アモーレ!!~アイツのタタリ~

EN1.リグレット
EN2.フタリで、、、(新曲
EN3.バブリー革命~ばんばんバブル~
EN4.アクシデント

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