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【ライブレポート】2022/4/27 UPSET CRAFT presents「TERMINAR」


出演:NIYOCO / 板歯目 / THE雷楽 / MONKEY GROW

新宿Marbleにて開催された、UPSET CRAFT presents「TERMINAR」に行ってきた。目当ては数ヵ月ぶりにライブを観るNIYOCOと、そんなNIYOCOが大好きな板歯目の2組。他の2組は初めまして。

予習もせず、まったくのファーストコンタクトとなったTHE雷楽とMONKEY GROWも含めて、それぞれのライブを振り返ろう。

MONKEY GROW

千葉県平均年齢18歳のロックバンド。開演時、ステージにはクハラショウタロウ(Gt)、マツモトサキ(Ba)、イトウヒデノリ(Dr)の3人のみ。グルーヴを感じさせるインスト曲の演奏でライブはスタートする。

白シャツ&黒パンツでの衣装統一に3ピースでインスト始まりとは、なんかオシャレなバンドだぞ、と思っているとすぐに曲が終わり、ステージ袖からサイトウ・タナカ・ユウキ(Vo)が登場し、ここで初めて4ピースであることを知る。

上裸にジャケットを羽織ったスタイルでワイルドにキメるユウキ。横ノリを貫くバイブスに、ロックではなくロックンロールを強く意識させるバンドだと感じた。ユウキのビジュアルもあって、ここは70年代かと錯覚しそうになる場面も。

マイクスタンドを握り、身体を小刻みに震わせたり、ステージ前の柵に乗って激しいパフォーマンスを見せるユウキだが、声には少年性が漂っていて、この不思議なギャップが面白い。

サキは楽しそうに笑いながらベースを弾き、ショウタロウは止まったら死んでしまうのか、と思わせるくらい休むことなく動きまくっている。また、ヒデノリはほぼ、口を開けた状態で演奏し続けていて、各メンバーを見ていてもまったく飽きない。

ステージでのアクションとしてはユウキが派手に映るのだが、ショウタロウのほうがヤバそうな雰囲気を帯びている、そんな印象。

今日のラインナップ、トップバッターにふさわしい、ピュアで暑苦しい(←褒めてる)パフォーマンスだった。


THE雷落

RCサクセションの「ドカドカうるさいR&Rバンド」をSEにステージに現れた4人組は、その見た目から強烈なインパクトを与えてきた。

基本全員スーツ姿で、Ryuji(Gt)とTaisei(Ba)はストライプのジャケット、金髪リーゼント&バンダナなタクミ(Dr)は上裸でのストライプジャケットで首に直接ネクタイを締めている。そしてヤマト(Vo)はラメでキラキラ光る赤いジャケットが眩しい。

大阪堺から来たという彼ら。この後行われた板歯目のライブで千乂(Vo/Gt)が話してくれて知ったのだが、なんと全員19歳とのこと。まとまっている音、老獪とも思えるステージ運び、観客を巻き込む力、そして何よりその音楽性。まさか10代とは信じられなかった…。

メロディはキャッチー、演奏もしっかりしていてとても聴きやすく、四星球や忘れらんねえよ、あるいはTHEイナズマ戦隊のテイストも感じるような、熱くて楽しくてついつい頬が緩んでしまう、そんなライブを展開する。我々40代含めた高年齢層に刺さりやすい空気を上手に醸成し、バンドとしてのポテンシャルの高さを感じさせてくれた。

ザ50回転ズあたりと対バンしたらめちゃくちゃ盛り上がりそうだなあ、と思いながら楽しんでいたら、のちのMCで5月10日に下北にてザ50回転ズとツーマンライブを行うとの告知があり、いやもうそれ正解!とひとり納得してしまった。

ヤマトはフロアにいる観客一人ひとりの顔をしっかりと見るように視線を送り、「新宿!優しいところ見せてくれ」と訴えかけながらライブへの参加を促していく。

「月のダンスナンバー」が終わる頃、Ryujiのギターの弦が切れるハプニングが発生する。

「誰か貸して!」との声に、フロアでライブを観ていた男が名乗りをあげ、彼のギターを手にステージに戻ってきたRyujiが慣れないギターを巧みに操りながら、無事にライブを続行。

この救世主、MONKEY GROWのショウタロウだったのだろうか。ステージでめちゃくちゃ大きく見えた彼がフロアではこじんまりとしていて、あまりの違いに確信が持てず。しかし白シャツ&黒パン姿でギターを渡しに楽屋へ入っていった姿から、おそらくショウタロウだったのではないかと推察。

ヤマトは「ここが沖縄でも北海道でも、アメリカでもブラジルでも、君たちがいればロックンローラーになれます、ありがとう」と観客への感謝を伝え、さらには「歌舞伎町にはなじめなかったです。あの街を歩くのは怖かったです。俺一人やったら怖くなかったかもしれんけど、隣に金髪リーゼント(タクミ)がいるんで」と新宿見参エピソードも交えながら、ベテランかと錯覚するほどの巧みなステージングで最後までフロアを乗らせ盛り上げ楽しませ、持ち時間30分を駆け抜けていった。

こんな面白い出会いがあるから、ライブハウス通いはやめられない。

セットリスト
01.38度線を越えて
02.雷楽のテーマ
03.月のダンスナンバー
04.感情バズーカ
05.ガチャガチャゴー
06.女の子は魔法使い
07.BABYロックンロール


板歯目

この春、高校を卒業したばかりの板歯目。何度かライブを観てきたが、以前よりもさらにパワーアップしている印象。爆裂パワーでぐいぐい押し込んでいくだけでなく、一歩引いて3人の歌と演奏を丁寧に届ける曲もあり、バンドとしての幅が広がっている。

また、千乂詞音(Vo/Gt)のボーカルとしての表現力がさらにレベルアップしており、芯があって太く強い歌声でフルスイングするだけでない、繊細さを垣間見せるような歌唱もあり、その成長っぷりに驚かされた。

いったいいくつ引き出しを持っているのか。それは歌声だけでなく楽曲にも言える。最新のデジタルアルバムにも、ライブ鉄板な激熱ナンバーに加え、センチメンタルな感情が膨らむような曲たちが組み込まれているが、今日のライブでも様々な色を持つ楽曲たちがラインアップ。

強烈なストレートやフックでボコボコにされながら、距離を取ってからのジャブ連打を喰らったり時にはクリンチされたり。パワーファイターだったはずの板歯目がアウトボクシングまでやり始めて完全に掌の上で転がされ、気づいたらノックアウトで試合終了…そんな気分を味わった。

ゆーへー(Ba)は大きな体を大胆に使いながら、バキバキの5弦ベースプレイで魅了する。暴れ馬のような楽曲たちも庵原大和(Dr)のドラムが錨となってどっしりとした安定感を生んでいる。

三者による演奏のコンビネーションにも磨きがかかっていて、歌声もアタックがしっかりしているから以前よりも言葉が伝わりやすくなっている印象だ。

曲中で拍子に変化を加えてみたり、あるいはNirvanaの「Smells Like Teen Spirit」をオマージュしたフレーズを入れ込んでみたりと、随所に遊び心も散りばめて、ステージの3人も楽しそうにプレイする。

さっき決まったという“くだらない1日”とのツーマンについて簡潔に告知したあとで「私たち曲がたくさんあるから喋ってるとマジで時間なくなっちゃうので、いっぱい喋ったと思うし、あと5曲やって終わり!」とMCを〆ようとする千乂。いや、全然いっぱい喋ってない。

「次の曲、いーよ!」とメンバーに声をかけるも「(ドラムが)ネジ締めてるからだめだって」なんて言ってちょっとだけトーク延長する場面も。

今日のセトリの中で、音源として流通しているのは「絵空」「コモドドラゴン」「ラブソングはいらない」くらいだっただろうか。

初めて聴く曲がたくさんあったが、どれもこれもが魅力的で、音源化の期待も高まる。

すべての曲を演奏し終えると「終わり!ありがとうございました!」とシンプルなコメントでカラっと〆てステージを去る板歯目。

熱くて爽やかで清々しく気持ちいい。いつ世の中に見つかるのか、楽しみで仕方ない存在だ。


NIYOCO

今日のトリはNIYOCOだ。MONKEY GROWのユウキ、THE雷落のタクミに続いて上裸スタイルで登場したのはドラムのカンタ(彼はジャケットではなくジャージ)。

さらに末永(Ba)、サポートギターのマツムラタダトシ(Gt)、そして川瀬(Vo/Gt)の4人がステージに揃い、「存在ビーム」でライブスタート。

抑制からの解放をイメージさせるような、爆発力のある構成はさすがNIYOCOらしい。全員の動きが尋常じゃないレベルでキレキレ。映像ではなく肉眼レベルでも残像が網膜に映りこむようなアクションを炸裂させる。

2曲目の「マフエル」まで歌い終えると、突然ティッシュを取りにステージから消える川瀬。NIYOCOのライブは2021年11月以来の観賞となるのだが、このあたりの自由さは変わらない。

「ロックンロールを歌います」という言葉から、《ロックンロールなんて嘘ばっか》《ロックンロールを最高にかっこ悪くしたのは俺たちだ》と歌う「ロックンロールなんて」へ。

これまでギターを演奏しながらの歌唱だった川瀬はギターを置き、マイクを握り歌う。オープニングから続く攻撃的なアクションに加え、激しい照明の点滅演出も入ることでより一層、強烈なインパクトを与えるステージとなっている。

曲が終わると、毒気の強い歌詞も踏まえて川瀬は「ごめんなさい、恐い曲は終わり。ハッピーな曲やります。ドン引きしてるでしょ?」と語って会場を笑わせていた。

唐突に「水!」とペットボトルを要求する川瀬に、マツムラがなだめるように「水あるよー。水ねー」と優しく話しかけているシーンも面白い。

最近振られたと語り始めた川瀬は、サプライズで彼女が来てくれるんじゃないかと期待していたが、そんなロマンチックなことはないと落ち込んでいた。

「初めて恋愛でやられました」
「1ヵ月ギターも弾けない、音楽もできずメンバーにも迷惑をかけた」
「ギターは弾けなかったけど、いろんなことを考えることができて、それが歌になる」
「苦しいけど、成長するために課題を与えられたんだと思う」

「ごめんなさい、自分の話でしたけど、自分の話でしか歌が歌えないので」

「本気で好きになるから本気で不安になるし傷つく」
「もし悩みとか苦しいとかあれば」
「それだけそのことに対して本気なんだよと自分を褒めてください」

そんなメッセージを告げると再び川瀬はギターを手に取り、ほとばしるような感情と共に「ビー玉」を歌う。「楽になりたいなあ」と曲中に本音をこぼしながら、実にエモーショナルなステージが繰り広げられていく。これこそNIYOCOの真骨頂ともいえるパフォーマンスだ。

派手なアクションや何をするかわからない不安定さも確かにNIYOCO、そして川瀬の魅力ではあるが、やはり彼の繊細な歌声と感情をぶち込んだパフォーマンスが最もNIYOCOを輝かせるのではないかと、そんな気がした。

部屋にいて、窓の外を観れば青い空が広がっているのに、それすら視界に入らないと言うほどの落ち込み。必要とされたい、ひとりにしないでとつぶやく川瀬の失恋ダメージはまだ当分癒えることはないのかもしれない。

しかし満たされていないからこそ湧き出るものがある、そう感じさせるライブだったことは確かだ。

切実な思いを携えながら、空気…いや、心を切り裂くような川瀬のハイトーンボイスから始まる「ヘロイン」をラストナンバーに、もはや定番化している、ギターの弦切断というおまけもついてNIYOCOのライブは幕を下ろす。

生きることが歌になる。人生が音楽になる。これこそがNIYOCOなんだと再確認させてくれるステージだった。

セットリスト
01.存在ビーム
02.マフエル
03.ロックンロールなんて
04.ビー玉
05.ヘロイン


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