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【ライブレポート】2023/2/22 「ONE ON ONE-NEXT-」@新代田FEVER

新代田FEVERで開催された、UK PROJECT企画のイベント『ONE ON ONE-NEXT-』に行ってきた。目当てのHwylをはじめ、若々しさ溢れる眩しいライブが繰り広げられており、最後まで楽しむことができた。

残念ながら仕事の都合でApesは数分しか観られなかったが、各バンド簡単(Hwylはちょっと厚め)に振り返ってみようと思う。

Apes

到着したとき、ちょうどMCをしていたところだった。彼らは普段、年上の人たちと対バンすることが多くて、楽屋で「若いね」と言われることが多かったとのこと。しかし今日はそれがなかったそうで、自分たちは“おじさん”だ、というちょっとした自虐トーク。

とはいえ、彼らもまだまだ若手。活きのいい音楽を鳴らしているのはわずかな時間でもじゅうぶん伝わってきた。坂井玲音(Vo/Gt)はスタンドにセットされたマイクに対し、頭を半回転させて下からアプローチする破天荒は歌唱シーンを披露。

バンドの音自体も迫力があり、小気味良いドラミングからギター、ベースと目移りならぬ耳移りしてしまう、そんなライブでイベントの露払い役を見事に担っていた。

Hwyl

本日2番手は、あきたりさ(Vo/Gt)とクマダノドカ(Gt)による2人組バンド、Hwyl(読み:ひゅいる)だ。

ライブ直前のセッティング時にさらりと「SIREN」「暮らし」を鳴らしてサウンドチェックし、一度はけてから再登場でライブスタート。

あきたによる《何十年か前に あと何十年後かに やってくるテロリスト》という歌いだしで始まる「i don't know」だったが、何やらステージの様子がおかしい。どうやらドラムのタム(?)のひとつがゴロリと落ちてしまったようだ。予期せぬハプニングも、あきたは動じず、クマダは苦笑を浮かべつつ、アクシデントも楽しいとばかりにギターをかき鳴らす。演奏は止めず、スタッフによる懸命の修復で無事、曲中には復旧した。

「ギター、ノディ!」というあきたの叫びに声に応えたクマダのギターソロは、まさに咆哮を呼ぶにふさわしいものだった。

続く「SIREN」での、あきたのスケール感たっぷりな歌声、そしてクマダのギタリスト特有ともいえる華やかな佇まいがより一層「SIREN」という曲を輝かせている。

声がかすれるほどの絶唱が響く「オマエアレルギー」の後、サポートのリズム隊を含むメンバー紹介を挟んで、初めて書いたラブソングだという「わからないよな」を披露。あらためて歌詞を確認したくなる、生活の匂いや人の息遣いが感じられる歌の世界がたまらない。あきたの歌声の横を、主張しすぎず、でも控え過ぎもせず、ちょうどいいバランスで鳴り続けるクマダのギターも素晴らしい。歌声が止む間奏でブイブイ言わせるギターソロも最高だ。

「いま、一人暮らしをしていて大変な思いをしている人や淋しい人、この春新生活が始まる人、夢を追って上京してきた人の味方に、この曲がなればいいなと思います」

そんなあきたのメッセージから「暮らし」へ。粒だった音が印象的なイントロのギター、そして音源同様に冒頭でしっかり咳払いを入れ込む細やかさもいい。カッティング、そして歪む音など多彩な音色で楽しませてくれるギターと、そのリアルな内容がバズるきっかけになったと言ってもいい歌詞を、感情を詰め込んで届ける歌声の強力タッグのコンビネーションが炸裂した。

6曲目には、ギターを降ろしたあきたが両手で包み込むようにマイクを握り歌う「現在地」をパフォーマンスする。

直後のMCでクマダは、バスケ経験者のふたりにとって『ONE ON ONE』というイベントタイトルは馴染みがいいと話し、また主催のUK PROJECTには自身にとってヒーローだと思っているアーティストがたくさん所属しているレーベルなので、そんなイベントに出演できて光栄だとも語った。

一方あきたは、音楽をやりたいと両親に伝え、家族会議を経て上京したという自身の過去を振り返る。そして、当時背中を押してくれた友人は社会人となり家庭も持っていて、自分は友人と異なる生活をしているものの、皆と音楽をやりながら元気にやっていると話し、そんなメッセージが届くといいなと思って書いたという曲「戯れ言」を紹介し、演奏をスタート。

音源とは異なり、冒頭であきたがギターを弾きながら歌いだしたのだが…何か違和感がある。クマダを見ると(ん?どうした?いいのこれで?)とでも言いたげな表情であきたを凝視しながら、半信半疑な面持ちで演奏に合流するも、結局演奏はストップ。

あきたのカポ位置が間違っていて、音がズレていたのだ。「ごめんなさ~い!」と平謝りなあきたに、苦笑いのクマダ。バッチリ決まっていた曲紹介もリセットとなってしまうが、2度目の「戯れ言」ではメンバーに促されて観客から手拍子が起こるなど、うっかりミスが消し飛ぶくらい皆でもっと盛り上げよう…そんなステージとフロアの一体感が生まれていた。

ラストは新曲「Treasure」。情熱的なギターと共に駆け抜ける演奏でキッチリ仕上げ、終わりよければすべてよし。ライブならではのアクシデントも含めてHwylの楽しさをしっかりとアピールし、彼女たちのステージはエンディングを迎えたのだった。

1.i don't know
2.SIREN
3.オマエアレルギー
4.わからないよな
5.暮らし
6.現在地
7.戯れ言
8.Treasure

ルサンチマン

『RO JACK』で優勝し、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019』出演、さらには『全国高等学校軽音フェス』優勝も果たすなど、軽音楽部界の“大阪桐蔭”(と私が勝手に思っている)、武蔵丘高校出身のルサンチマン。

ライブハウスのスケジュールやサブスクなどをチェックしていた際、かなりの確率でその名前を目にしていたのだが、今日やっと観ることができた。

SEなしで、拍手を浴びながらぬるっとステージに登場すると、ギターの音が静寂を破って濃度の高いライブが始まった。

伸びやかなギター、陰だけでなくひなたでも映えるようなベースなど、とにかくバンドの音が強い。北(Vo/Gt)の「ギター、NAKANO!!」という絶叫を合図に披露されたギターソロも含め、それぞれのパフォーマンスに迫力があり、今日の出演者の中でも随一といえる爆音でフロアを圧倒していく。

音だけでなくステージを包む空気そのものがうねり、時に爆発し、その影響はフロアへと波及。いつしか自分自身も熱を帯び、引き込まれてしまった。

最後までMCらしいMCはなく、ひたすらに音を繋いで爆走したルサンチマン。潔くてカッコいいバンドだった。

Conton Candy

女子3人の、ポップで愛らしいガールズバンド…と、バンド名の字面やそのビジュアルで安易に判断してはいけない。

ルサンチマンに続き、武蔵丘高校軽音部出身のバンドだ。さすが名門、層が厚い。紬衣(Vo/Gt)の、キュートでありながらパンチ力のあるボーカルに華があり、双子のリズム隊、楓華(Ba)と彩楓(Dr)はライブ中に何度も視線を交わすなど、まさに息もピッタリな演奏で紬衣の歌声を引き立てる。

演奏中にフロアを煽る際の紬衣の話し方(イントネーションなど)が、フォーリミのGENテイストたっぷり。歌い方がGENっぽい、というバンドはいたが喋り方が近いというのはちょっと新鮮。フロアに対する煽りも堂に入っており、紬衣はフロントマンとしての資質もしっかり備えているように見えた。(ちなみに、MC時の喋りにはGEN味はほとんど見られない)

また、彩楓は常にニコニコしながら楽しそうにドラミングしていて、HAPPYな空気の発生源としてステージをキラキラさせていた。

「東京で孤独だった私を救ってくれた、大切な人の曲」(紬衣)という新曲の「TOKYO LONELY NIGHT」や、紬衣と楓華が演奏中にふたりで何やら言葉を交わすシーンも印象的だった「envy」など、その歌詞を味わったりステージでの立ち居振る舞いに目を奪われたりと、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

音源で聴いていた印象よりも圧倒的にパワフルで、その名にもあるように、キュートでポップというよりも“混沌”としていてアツいライブをするConton Candy。ラストを飾った「ロングスカートは靡いて」では3人の声の重なりも美しく、約25分という短いセットの中でもしっかりと自分たちの魅力を発揮していたように思う。

peanut butters

ライブのトリを務めるpeanut buttersは、2021年に渋谷のWWWで一度ライブを観たことがあった。当時はコンポーザーである“ニシハラ”と、ボーカルの紺野メイによるユニットだったと記憶している。

今はボーカルが脱退し、サポートボーカルに穂ノ佳を迎えて活動をしているようだ。穂ノ佳は真っ白な衣装にヘッドフォンというスタイルでステージに登場。ソフトな声が耳に優しく、とても柔らかい歌声をフロアへと届けていた。

前回観たライブでは、ギターは生演奏ながら全体のオケは音源を使ってのパフォーマンスだったが、今回はガッツリとバンドセットで、演奏面では肉感たっぷり。

「ジャスコ、上野」というタイトルの曲では、《I just going now...》と英詞を日本語に聞かせる遊び心を見せ、フロントに立つメンバー全員がドラムを向いて歌い演奏する演出を入れるなど、様々な切り口で飽きさせない工夫を散りばめていた。

新曲だという「she so come!!!」は、peanut buttersには珍しいタイプの、勢いと疾走感があってキャッチーな楽曲。この速いトラックにふわふわした穂ノ佳の声が意外にしっかりマッチしていて面白い。

本編が終了したあと、観客による粘り強い拍手が続き、予定外だというアンコールへ。曲を用意していなかったこともあり、なにをやるかメンバー間で検討。そしてニシハラが「同じ曲か、ちょっと自信がないけど新しい曲、どっちがいいですか?」と観客に問う。答えは一択だ。

というわけで、新曲「悪魔くん」を披露することに。「自信ない」という言葉通り、演奏の入りで間違えてやり直すことになったが、始まってしまえばOK。peanut buttersらしい、ちょっとゆるくてポップなメロと《ぼくは悪魔になりそうで》というサビが印象的な曲で『ONE ON ONE-NEXT-』をしっかりと締めくくった。

1.グッドモーニングおにぎり
2.ツナマヨネーズ
3.スーパーハイパー忍者手裏剣
4.ジャスコ、上野
5.るるるるくん
6.she so come!!!
7.パワーポップソーダ
8.普通のロック
EN
9.悪魔くん

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