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【ライブレポート】2020/7/23 LACCO TOWER「再燃 ~ライブハウスと電波にのって編 非幸福論者の再燃~」

まず最初に、このレポにはライブの詳細を残していますので、まだ配信を観ていないという方はぜひアーカイブでライブを味わった後、観賞後の思い出のひとつとして楽しんでいただければと思います。
アーカイブはこちらから↓

※8/22(土)23:59まで視聴可能
※※販売は8/22(土)22時までですが、トータル2時間半ほどあるのでご注意を


毎年、結成記念日である7/21近辺で、恵比寿リキッドルームにて周年イベントを実施してきたLACCO TOWER。コロナ情勢下である今年も、自粛解除の流れのなかで無観客ながらメンバーが集まり、リキッドルームからライブを配信する予定でした。

しかし都内感染者数が連日200人を超えるという新たな状況が発生。考慮の結果、メンバーの自宅からリモート配信でのライブ開催へと変更されました。

苦渋の決断と言えるのかもしれませんが、一方で日々変わる状況に柔軟に対応し、様々な可能性を探りながら導き出した結論でもあるわけで、どんな形であれライブを届けてくれることには変わりません。

すでにこの形式での配信も経験済み。ノウハウも蓄積している彼らは一体どんなパフォーマンスを見せてくれるのでしょうか。

開演までの時間、画面上には恵比寿リキッドルームの外観や今日のイベントを告知する張り紙、さらには2Fのロビー、そして1Fへと降りる階段にバーカウンターといった写真が次々と表示されていく。リキッドに通ったことがある人にはおなじみの場所。恵比寿に行けば当たり前のように観ることができたこの景色も、今は残念ながらはるか遠くに感じてしまう。

この半年近くの間に起こった世の中の変化を思い感傷に浸っていると、流れてきました「狂想序曲」。LACCO TOWERのライブには欠かせない登場SEです。画面にはリキッドのステージが映し出され、中央にはドドン!とLACCO TOWERのバックドロップも。

ライブハウスとの共同開催、自宅配信なれど心はリキッド。そんな気持ちが伝わってくるオープニングです。


重田さん、真一さん、啓示さん(蝶ネクタイ)、大介さん、ケイスケさん(蝶ネクタイ)という順番で、黒衣装で統一したメンバーがステージに登場。

まずはケイスケさんの口上です!

「リキッドルームへお越しのみなさま」
「電波の上からこんばんは」
「今宵はみなさま最前列」
「19年目のロックバンド」」
「今日も今日とて新人がごとく」
「初ライブがごとく」
「再燃した思いは燃え尽きるがごとく」
「出し尽くすつもりで参りますので」
「どうかみなさまご一緒に楽しんでいただけますでしょうか」
「LACCO TOWER参ります、どうぞよろしくお願いいたします!」

俄然勢いついて1曲目「葡萄」でライブ幕開けです。オープニングにふさわしい疾走感あふれるナンバー。ケイスケさんの歌声はもちろん、4人の音がしっかりと耳に届く。配信画面には各メンバーが個々に表示されているウィンドウがあり、それぞれの表情もしっかりと堪能できます。

「19年目一発目のギター頂戴よ!」とケイスケさんが発して早くも大介さんのギターソロ炸裂。音の切れ味抜群です。

本日最初のMCでは、本来なら今日、無観客ライブを予定していたものの、コロナの影響が大きい中で無観客とはいえ映像、音響、照明、ステージ各スタッフを集めてライブを実施することのリスクを考え、自分たちの家から配信ライブをやることになった、と経緯を説明します。


自宅兼スタジオからのお届けするということで、普通のライブではできないこと、つまりタブレットを用意してMC中に観客(視聴者)のコメントを拾っていくスタイルでライブは進んでいきます。


ケイスケさんは「(タブレットを持ちながら)アホみたいに楽器持ってるから(コメント)見られないだろ?」と他のメンバーを煽りますが、すかさず重田さんが「アカペラにさせるぞ」と強烈な一撃をお見舞い。「それだけはやめてくれ…」と懇願するケイスケさんでした。


LACCO TOWERの配信ライブでは投げ銭が用意されており、そのメニュー名も「ラッコタワー誕生日おめでとう」「ギター泣いてるよ、大介」といった具合にユニーク。楽しい気持ちとともに投げ銭ができます。

そんなZAIKOのシステムについて説明しつつ、そろそろ次の曲ということで「近所迷惑にならないよう思いきり叫んでください」との言葉から2曲目「斑」へ。グルーヴ感たっぷりのイントロはMCでの中断を感じさせないほど、あっという間にライブの熱や勢いをもたらしてくれます。早くもジャケットを脱いで歌うケイスケさんの色気は画面越しでもよく伝わる。啓示さんのベース音の粒ひとつひとつが気持ちいい。指使いを見せつけるかのような大介さんのカメラアピールも楽しい。そして真一さんのコーラスも映える。


3曲目「十六夜」は曲中で拍子が変化する独特の構成を楽しめる曲。IT担当(?)としてモニターチェックしながら演奏する真一さん。カメラに目線を送りキメるケイスケさん。軽々と叩いているように見えるのにド迫力な音を次々と繰り出す重田さん。こうしてメンバーそれぞれのパフォーマンスをしっかり感じ取ることができるのはリモート配信ならではの面白さですね。同じ曲でも聴くたびに異なるポイントがツボにハマることがありますが、今日の「十六夜」で感じたツボはアウトロのギターでした。これはカッコいいな。

MCでは
大介「非幸福論の衣装暑いね!」
ケイスケ「ようこれでライブやってたな、俺ら」
なんてやり取りの中でケイスケさんが蝶ネクタイを外します。今日はどこまで脱ぐのだろう…。

2013年から8年連続で周年企画の会場となった、今日の共同開催相手でもあるリキッドルーム。そのスタッフであるワタナベさんからの手紙を読み上げる一幕もありました。ライブの打ち合わせ時に突拍子もない提案をされて不安になった思い出や、LACCO TOWERへの理解、そして18周年への祝辞などが詰まった内容にグッときてしまう啓示さん。メンバーもこの配信で初めて手紙の中身を知り、喜びをかみしめていたようでした。

ちょっと感傷的なモードになったところで、再びギアを5速に入れるかのごとく、ぶちこんできましたLACCO TOWER。次なる曲はまさか配信で楽しめるとは思っていなかった「傷年傷女」です!


演奏前から満を持してショルキーを準備する真一さん。「この曲は飛ばさせていただいて」とケイスケさんによるいつもの真一イジリを味わいながら、光るショルキーにワクワクが止まりません。この曲はLACCO TOWERのライブにとってある意味欠かせない存在であり、真一さんがショルキーをもってステージ中、いや、ステージを飛び出して会場中を動き回る最高にアグレッシブな一曲なんですよね。でもリモート配信、部屋の中でのライブでどう表現するつもりだろうと思っていたら。

均等に配されている、メンバーごとの5つのウィンドウが突然変異。画面の5割を真一さんウィンドウが占拠し、残る4人は端に整列するという驚きの画面構成が生まれました。斬新かつ大胆なカメラワークならぬウィンドウワークに思わず拍手。さすがラッコ、創意工夫のスピリッツは半端じゃない。グラサン装着でやりたい放題、真一さんの暴れっぷりにケイスケさんも笑いをこらえながらの歌唱。LACCO TOWERのポテンシャルの高さを見せつけてくれました。


続く曲は「火花」。ライブの勢いを加速させ、先ほどのエンターテイナーからロックスターにスイッチを切り替えた5人のパフォーマンスが展開。“五月蝿い手前 しゃしゃり出たら”で炸裂するケイスケさんの巻き舌や、腹にズシンとくるリズム隊に興奮し、真一さんのピアノが作るアクセントにきゅんとなる。自パートがないタイミングで踊り出す大介さんやフレームアウトギリギリまで動きまくる啓示さんといった具合に、メンバーの動きから目が離せません。曲が終われば、いつもと同じようにザスパクサツ群馬のタオルを掲げる啓示さん。ライブハウスで観る景色と変わらないなあ。


ここまで激しい展開が続いていましたが、6曲目からは空気が変わります。

しっとりとしていて独特のムードを帯びた「茜」は勢いでごまかすことができない、演奏力が問われる1曲かもしれません。曲への入りが個人的にお気に入り。

直後に演奏された「朝顔」も切ない名曲。イントロがいちいちカッコいいな、とライブ中思わずメモするくらい良い。ミディアムテンポでも熱さが伝わってきます。イントロだけでなくアウトロも魅力的なのがLACCO TOWER。最初から最後まで聴き逃がせません。

MCタイムに入るとケイスケさんはカメラをOFFって(布で隠して?)換気を実行。暑さとウィルス対策でしょうか。この時間は主に視聴者からのコメントを拾いながら進行。「朝顔」について、ケイスケさんの親戚の結婚式で真一さんとふたりで歌ったというエピソードや、レコーディング中に大介さんが泣いちゃった曲、なんて話も飛び出しました。MVを作るならどの曲がいいか、といったテーマのトークも盛り上がり、ライブは早くも折り返しを迎えます。

「歩き方に迷ったときに聴いてほしい曲」とケイスケさんが言葉を添えて、届けてくれたのは「歩調」。美しいピアノから始まったこの曲は、包み込むような優しさと、背中を押してくれるような力強さを兼ね備えているように感じます。アウトロでは凛々しく歩く背中に光が差すようなポジティブな景色が思い浮かんで。表現力豊かな歌と演奏があるからイメージも沸く。聴いた人それぞれにいろんな情景が浮かんだのではないでしょうか。


曲が終わるといったん4人のウィンドウがブラックアウトし、真一オンリーかつ大画面でのピアノソロが展開します。美旋律が静かに降り注ぎ、しばしの心の休息を得ると再び5人がスタンバイ。

「電波の上のみなさま、後半戦準備よろしいですか」
「今宵はみなさま最前列」
「ひとりひとりにどかんと伝わるように」

そんなケイスケさんの口上から「閃光」へ。真一さんソロの間にジャケを脱いでタンクトップに変身していた重田さん。スパート準備万端です。啓示さんも蝶ネクタイ外して戦闘モード。

テンポはそこまで速くないけれど雄々しい曲で、ギターリフを聴くと力が湧いてくるよう。ケイスケさんも思わずスタンドマイクを握る手に力が入る…と思って観ていたらハンドマイクにして熱唱。画面からアグレッシブっぷりがビンビンに伝わってきます。ラストのベースとドラムが刻むリズムもめちゃめちゃ痺れた。

「非幸福論」でも引き続きマイクを持って歌うスタイルなケイスケさん。長い髪を振り乱し演奏する大介さん。首をフリフリしながらドラムを叩く重田さん。ビリビリと感じるスラップベースを轟かせる啓示さん。みんなの個性が溢れ出ています。

曲が終わる際には、ついにベストも脱いでケイスケさん白シャツ一枚に…というおまけつき。贅沢。

演奏を終えると新曲「歩調」「閃光」への手ごたえを語る大介さん。啓示さんは今回みたいな周年イベントは一生忘れないと話します。ちなみにこのMCパートで啓示さんもジャケ脱ぎましたね。重田さんは、毎年リキッドで開催していたイベントも当たり前のようで当たり前ではなかったと珍しく(?)真面目なコメント。

「歩調」について、メンバー同士一度も会わずに新曲を披露したのは初めてだそうで、中身とは別の視点で、LACCO TOWER史上に残る一曲になったのかもしれません。


投げ銭の途中経過で「鍵盤最高、真一」メニューが2位に躍り出たことが速報されると、ケイスケさんによる無茶ぶりから即興ソング「鍵盤最高、真一」を披露する真一さん。本人も言っていましたが、アーカイブが1か月残るので気になる方はぜひ、チェックを。


ここからは次の歌への先導となるメッセージ。
「人に会えなかったり普段できることができないと、落ちる」
「陰鬱な気分になる」
「そんなときこの曲を歌ったら、いなくなってしまうかもしれない」
「…そんな気持ちの人に刺さればいいなと思って書いた曲」

そして「霙」を歌う。MCで散々笑わされたあとでのこの曲ですよ。こんなギャップがまたLACCO TOWERの大きな魅力のひとつ。ケイスケさんの、感情が乗った歌声が心にグサグサと刺さる…。


最後となったMCパートでは5人それぞれが、想いのこもったメッセージを届けてくれました。このレポではごく一部をピックアップしておきますので、フル尺で味わいたい場合はぜひアーカイブをご覧ください。

■大介さん
「今できることを精一杯考えてこれからも届けていく」

■重田さん
「サンキューロッキューだね」

■真一さん
「リモートでもライブができるのは幸せだと思う」
「唯一遠いのは距離だけだから」×2

■啓示さん
「どうにか届けられるようにと、いろんなアイデア出しをしてきた」
「ピンチをチャンスにじゃないけど」
「いろんなことをポジティブに変換していく」

■ケイスケさん
「つなぎじゃなく、新しいエンタメを作りたいと思ってやっている」
「生のライブに勝てないことはたくさんあるけど」
「こっち(配信ライブ)が勝てることもある」


さあ、ライブもいよいよ最終ブロック。

「こんな時だからこそ」
「携帯に手を当てるのでも」
「画面に手を当てるのでもいい」
「あなたの文字、あなたの観てる画面」
「僕らが歌っている画面」
「電波の上で」
「リキッドの上で」
「共鳴しておりますように」

そんなケイスケさんの言葉に続いて「共鳴」が演奏されました。笑顔で歌うケイスケさんが印象的。歌の途中で画面へのタッチを促す。おそらくは全国にいるファンたちが、今配信を観ているスマホやタブレット、あるいはテレビの画面に手を触れたのではないでしょうか。まさしく、電波を通じて共鳴した瞬間。そんなエモいシーンに響く4人のコーラスが胸にくる。


「感じました?電波じゃなきゃでけへんぞこんなこと!」

配信ライブというある種のハンデを利用した演出。先ほどの啓示さんの言うとおり、ピンチをチャンスに変える創意工夫の勝利。

「やがてくる素敵な春にまた出会えるように」との言葉とともに披露された「薄紅」では、再びハンドマイクスタイルでの歌唱で感情をマイクに注ぎ込む。“染まれ 染まれ”を歌と一緒に呟くようケイスケさんが促すと、twitterでは“染まれ――染まれ――”の大合唱。SNSと連携した新しいスタイルです。そして改めて思います、ケイスケさんが歌う“染まれ 染まれ”はなんて綺麗なんだろうか、と。

薄紅はライブハウスでもついAメロから口パクで歌っちゃうけど、今日は部屋で観ているから声出して歌ってもいいのに、なぜかやっぱり口パクしてしまう自分…。そりゃ、ハコだろうが部屋だろうが聴きたいのはケイスケさんの歌声ですからね。

「うちのギター、見てあげて!」の号令からギターソロが鳴り響く。まさしく「ギター泣いてるよ、大介」でした…!

曲中に「今宵はみんなが最前線。あなたひとりひとりに歌ってるからね」と優しく語りかけるケイスケさん。絶妙なタイミングで最高の言葉をくれるなあ。


最後の曲を演奏する前に、正真正銘、ケイスケさんのラストMC。いろんなことが起こり、普段できることができなくなってしまい、体調を崩している人もいるだろうと話します。信じていたものが信じられなくなる、そんなことが簡単に起こってしまうのが今。そんな中で、電波の上で会える時間があるから想いを保つことができたと打ち明けるケイスケさん。そして、この5人で18周年を迎え、19年目に突入できることを誇りに思う…そう語ってくれました。さらにはLACCO TOWERの5人に加えてスタッフを6人目、ファンを7人目だと呼び、この7人でなんとかやっていける気がする、とも。

ガッカリすることがあっても、それ以上に喜ばせるから。絶対に大丈夫。ケイスケさんらしい力強いメッセージとともに、LACCO TOWERとこれからもずっと一緒に歩んできてほしいと語りかけます。


笑われても、他と違っても大丈夫。今日も雨だけどいつかは晴れるから。


こんな優しい言葉を紡いだ後で、最後に

「笑って会おうぜ」
「死ぬなよお前ら!」

こう叫んでラストソング「星空」へ。LACCO TOWER最強のエンディング曲と言えるかもしれない。I ROCKSを思い出すなあ。これは涙腺破壊ソングでもあります。2019年のI ROCKS終了後にアップされた、三木さん制作のAfter Movieが頭に浮かんでたまらない気持ちになりました。

I ROCKS2020は延期になったけれど、来年はきっとまた群馬で「ただいま」「おかえり」の挨拶を交わせると信じて。


「俺らは画面の前だけどそばにいるから」
「寂しいときは画面に手を当てて」

「また生きて会おう」
「また笑って会おう」
「最高の5人でやっていくからついてきてくれよ」

ケイスケさんの言葉が終わると最後は18周年にちなんで18発のリズムを刻んでフィナーレを迎えたのでした。

やれる範囲でやるというより、どこまでやれるのかを考え抜いて、そのアイデアを形にしてちゃんとファンに届けてくれたLACCO TOWER。自宅でライブでもおとなしくする必要なし。近所迷惑にならない程度でのアグレッシブなパフォーマンスもカッコよかった(途中までうっかり窓全開でプレイしていたという真一さんが心配ですが)。

スタジオで一度も合わせることなくライブ初お披露目となった新曲が素晴らしい出来栄えだったのに、今作っているという新曲にも自信を覗かせていたLACCO TOWER。コロナ禍の中でも前を向いて進む姿には勇気を貰えます。

そして配信を始めた当初はいろいろとトラブルにも見舞われてバタバタしていたのに、今は様々な演出を交えながらスムーズに運用しつつ、ちょっとした問題が発生しても冷静に対処するその成長ぶりがまた頼もしい。配信ライブのけん引役ともいえる真一さんはじめ、メンバーやスタッフの仕事ぶり、本当に見事だと思います。


あと1か月ほどアーカイブも楽しめるので、またちょくちょく再生しながら貴重なLACCO TOWERの配信ライブを満喫しようかな。啓示さんのベースだけを観ながら酒を飲む2時間半とか、最高かもしれない…!


ライブを観ていると久しく会えていないラッ子さんの顔もチラチラと浮かんできますが、またライブハウスなりホール会場なりで会って挨拶できる日が来ることを楽しみにしています。


それまでみなさん、どうかお元気で!


セットリスト
01.葡萄
02.斑
03.十六夜
04.傷年傷女
05.火花
06.茜
07.朝顔
08.歩調
09.閃光
10.非幸福論
11.霙
12.共鳴
13.薄紅
14.星空


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