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【ライブレポート】2021/12/4 山人音楽祭2021 上州事変@高崎芸術劇場

2020年はコロナで中止となったため、2年ぶりの開催となった山人音楽祭に行ってきた。私が参加したのは2日間開催のうちの初日となる12月4日、その名も「上州事変」だ。出演は以下の通り。

FOMARE
LACCO TOWER
ROGUE
G-FREAK FACTORY


初めて山人音楽祭に参加となるので過去との比較は難しいが、まっさらな気持ちで臨んだ今回のフェスについて、振り返ってみたい。


今回はグリーンドーム前橋から高崎芸術劇場に場所を移しての開催。ホールで指定席という、これまでの山人やその前身であるGUNMA ROCK FESTIVALとは全く異なる状況だ。コロナ禍で様々なライブが姿かたちを変えて開催されている現在、こういった変化に対して多くの人が受け入れ、その結果実現に至ったと言えるかもしれない。

開演前の場内では、ストレイテナーやSCAFULL KING、SHANKといったロックバンドたちの音楽が流れ、観客を迎え入れてくれる。

しっかりと傾斜のある客席は縦列の並びも前の席と少しズレているため、どこからでもステージが良く見渡せるという点で最高のシチュエーションだ。

開演時間直前、ステージには山人音楽祭でおなじみとなっている(らしい)、NAIKA MCが登場し前説を行う。山人に関する案内やマスク等の注意事項、さらにここ数日騒がしい地震に関する避難誘導などのアナウンスも行い、その責務を果たすとバトンタッチ。トップバッターのFOMAREがステージに登場する。

FOMARE

立つか立たないか、少し迷う観客に対してアマダシンスケ(Vo)は立つことを促し、山人音楽祭初日の「上州事変」切り込み隊長としてその空気を作り出すと「君と夜明け」「Frozen」とたて続けに2曲を披露し、会場を温めていく。

芸術劇場という広いステージの上にギュッと詰まったセッティング。まるで小さなライブハウスかのように3人が密に連携を取りながらのライブは、ホールだからと言って決して背伸びせず、いつもの自分たちの100%を見せようという気概を感じる。

MCでは、GUNMA ROCK FESTIVAL初年度からずっと来ているこのフェスで受けた衝撃、衝動は今も変わらずにあると語り、良くも悪くもストレートにしかできない自分たちだから、今日もストレートに自分たちの思う、信じる、愛する山人音楽祭を最後までやっていきたいと宣言する。

また、G-FREAK FACTORYの群馬への愛や意地をずっと見てきたFOMAREとして、今度は自分たちが影響を与える番だとも語る。そして、「初期騒動を歌います!」と告げると「Lani」を演奏。

アマダの力強く、かつ味のあるたくましい歌声が突き刺さるように響く。今までじっくり聴く機会も少なかったFOMAREだが、改めてこの素晴らしい環境で耳にしてその魅力をまざまざと見せつけられた。

同期もなく3人の出す音だけで数千の観客と向き合うFOMAREの、まさにストレートな勝負が気持ちいい。

山人音楽祭、そしてG-FREAK FACTORYのファンだと話す彼らは、この素敵なフェスがずっと群馬で続けられるように、できることを続けて愛する場所を守りたいと話すと、そのMCと連動するかのような選曲で「愛する人」を披露。

カマタリョウガ(Gt)やオグラユウタ(Dr)によるコーラスも映える一曲をラストにFOMAREの清々しいステージは幕を閉じた。

セットリスト
01.君と夜明け
02.Frozen
03.Lani
04.タバコ
05.長い髪
06.夢から覚めても
07.愛する人


LACCO TOWER

転換中、黒衣装で統一したメンバーがステージに出てきて、セッティングを行う。リハとして「喝采」の触りを演奏し感触を確かめると、メンバー全員ひとりずつ拳を交わし、ステージからはけることなくそのまま本番へと突入。

LACCO TOWERにしては珍しい始まりだが、持ち時間を考えて、できるだけ曲を演奏するために登場SE「狂想序曲」ナシの演出になったのかもしれない。

LACCO TOWERもFOMARE同様、メンバー間の距離が近く、リキッドルームのステージよりも狭く感じるほど。

いつものように裸足で臨む松川ケイスケ(Vo)による「山人音楽祭へようこそ!ずっと違う道で、ずっと同じように戦ってきた、山人ルーキーの我々…」という自己紹介とともに、彼らの代表曲のひとつである「薄紅」でライブが始まった。

季節外れの桜が高崎に咲き乱れ、細川大介(Gt)がステージを舞うように軽やかにダンスする。セッティングはコンパクトならが、この場所を大きく使って魅せるやり方はさすが、ホールでの場数の多さを感じさせる。

「我々バンドと山人、お客様、この三角形ででっかい山を作ってやろうと思ってますが準備はいいですか?」というケイスケの合図で2曲目「檸檬」へ。

キーボードの上に立ち、手拍子にあわせて両手で頭上に大きな三角形を作る真一ジェット(Key)は、そのコミカルな動きから場内にささやかな笑いを巻き起こす。真一は因縁浅からぬG-FREAK FACTORY主催のフェスでもいつも通りのパフォーマンスでファンを安心させてくれた。

ライブでの盛り上がり度抜群な「未来前夜」を経て、ライブ後半戦となる次の曲を演奏する前に、真一が鍵盤で奏でたのはG-FREAK FACTORYの「ダディ・ダーリン」の一節。さりげなくも心意気を感じさせる構成に痺れる。

一方で重田雅俊(Dr)はシャツを脱いでタンクトップに衣装チェンジ。ワンマンライブならもっと曲を演奏してから見せるスタイルだが、今日は早くも3曲終えたタイミングでのタンクトップ。よほど気合が入っているのだろう。

後半一発目の「化物」での、変幻自在に切り替わる鮮やかな照明は印象的だ。光を上手に使う演出はLACCO TOWERの十八番と言っていいかもしれない。

ケイスケは「四十肩五十肩気にせず手を上げて!お上手です!すごい景色よ!」と観客を煽っていく。

5曲目に演奏したのは「火花」。ザスパクサツ群馬の公式応援ソングにもなった一曲で会場の群馬濃度が高まる。見せ場は何といっても塩﨑啓示(Ba)だ。曲のクライマックスではステージの端から端へとベースを演奏しながらの往復ダッシュを見せると、曲が終わると同時に倒れこむ。曲への思いが溢れる熱量MAXなパフォーマンスは圧巻。

最後の曲の前にケイスケはG-FREAK FACTORYとの関わりについて話し始める。

自身がバンドを始めた時からそのCDを持っていたくらい大好きな先輩であるG-FREAK FACTORYだが、彼らと最後に一緒にライブをしたのは8年前のGUNMA ROCK FESTIVALだという。

「そこから8年間、声がかかることはありませんでした」

G-FREAK FACTORYとLACCO TOWERについて話す際に、避けては通れない空白の時間に言及するケイスケは、さらに掘り下げていく。仲違いしたわけでないが、この8年間はすごく悲しくて寂しくて。LACCO TOWERが群馬で何かをやるたびに、薄っぺらいって言われてるような気がしていた、とも話す。赤裸々ともいえる告白。

しかしそれが活力にもなったという。G-FREAK FACTORYのようにカッコよくなればいいんだ、その背中が目印にもなったんだと。

今回のコロナ禍での山人開催にあたり、最初はローカルでやりたいということで声をかけてもらったことについて、「すげえ嬉しかったです」と素直に喜びを表す。そして、自分たちがやってきたことを見てもらえていたこと、さらには薄っぺらいことでも積み上げればこんなに分厚くなるということを少し見せられた気がして、嬉しかったとも語った。

「ごめんね、山人の話じゃないかもしれないけど」と謝罪を入れながら、自分たちが抱いていた正直な気持ちを吐き出したケイスケ。メジャーのフィールドで活躍し、キャリアを重ねてきたバンドとして、本来表に出したくない感情だったかもしれない。

それでも、大好きなG-FREAK FACTORYを前にして、呼ばれなかった寂しさと呼ばれたことへの喜びを伝えるケイスケの姿は胸にくるものがあった。

ライブの最後に披露したのは、最新曲「青春」。8年の時を経て再び交わる2バンドがこれからともに作っていく時間、それこそが青春なのかもしれない。

ここまでずっと鬼気迫る表情でプレイしていた啓示は、最後の曲にしてようやく、実に晴れやかな笑顔でライブを楽しんでいるようだ。その表情は6曲のステージがとても充実していたことを物語っていた。

すべてのアクトを終えると、メンバーはそれぞれにステージを去っていく。最後まで残った啓示は客席に向かって深々とお辞儀をすると、最後にステージ袖まで移動し、ステージ後方に飾られた「山人音楽祭」のシンボルに対して一礼をした。

空白の8年間に生み出した曲たちを多数並べたセットリストは、今のLACCO TOWERを見てほしいという思いからなのかもしれない。

セットリスト
01.薄紅
02.檸檬
03.未来前夜
04.化物
05.火花
06.青春


ROGUE

3番手に登場したのは、パラリンピック閉会式での歌唱も話題となった奥野敦士(Vo)が率いるバンド・ROGUE。事故により下半身不随となってしまった奥野だが、解散していたバンドを再結成させ、再びステージに立っているという、まさにレジェンドともいえる存在だ。

ライブを観るのは初めてなのだが、正直圧倒された。その歌声の説得力に。とんでもないボリュームと迫力で腹の底に響いてくるような奥野の歌は、素晴らしい魅力を持っている。そこには障害の有無など関係ないと思わせる、歌の力、声の存在感がある。

車椅子に乗っている状態から繰り出される歌声は誰よりも広く遠く、そして深く会場中にいる観客たちに届いていたのではないだろうか。

「やっと会えたな。コロナ禍でさ、2年も歌ってなかったんだな。俺、泣きそうになっちゃった」と照れくさそうに話す奥野の人間臭さもたまらない。

車椅子にも関わらず、ステージの下手、上手をダイナミックに移動し、たくさんの観客の顔を直接見渡しながら歌っている姿も印象的だ。

曲を披露するたびに巻き起こる盛大な拍手に「ロックコンサートって感じだね」「今日は短いけどさ、一緒に心の中で歌ってくれよ」と告げる。

「GOOD TIMES」「危険信号」といった曲たちで会場を熱くさせ、レジェンドでありながら決して飾りなんかではなく現役バリバリのロックバンドであることを見せつけるROGUE。

その名の通り踊りだしたくなるようなナンバー「DANCE DANCE」では、ステージ袖でライブを観ていたG-FREAK FACTORYの茂木洋晃(Vo)が飛び入りでコーラス参加する一幕もあった。ちなみに茂木は、ROGUEのライブをステージ袖で正座しながら観ている場面もあり、終始彼らへの敬意に溢れていた。

布袋で始まり最後は自分が歌ったパラリンピック閉会式は群馬が締めたようなものだと奥野が語れば、香川誠(Gt)は「しつこい茂木のおかげでこのステージに上がりました」「前に山人に呼ばれたとき、僕らは川原でした。今日は屋根があります」と話すなど、ユーモアのあるMCで会場を沸かしていく。

また、告知として2022年6月にROGUE主催フェス「GBGB」の開催を発表する。香川は「もちろんG-FREAK FACTORYは出るはずです」と話し、さらに「今日出たFOMARE、ラッコもよろしく」と、まだ正式に偉い人と話す前に公開オファー。もし本当に揃うなら、楽しみなフェスになりそうだ。

最後に披露した「終わりのない歌」も、これから何度も噛みしめたくなるような素晴らしい楽曲だった。

奥野のド迫力な歌声と楽器隊の気合の演奏、そして茶目っ気のあるMCと3拍子揃ったROGUEのステージは、自分のようなROGUE初体験の観客に強烈な存在感を刻んでステージを去っていった。

セットリスト
01.MY HONEY
02.GOOD TIMES
03.LIKE A MOON
04.危険信号
05.DANCE DANCE
06.終わりのない歌


G-FREAK FACTORY

トリを飾るのはもちろん、山人音楽祭オーガナイザー・G-FREAK FACTORYだ。

まずは原田季征(Gt)、吉橋"yossy"伸之(Ba)、渡部“PxOxN”寛之(Dr)の3人に三味線奏者の上原梅弦、さらにはROGUEの香川がステージに登場し演奏をスタート。

香川と原田、上原の3人それぞれが交互に見せ場を作りながら会場を盛り上げ、遅れて現れた茂木が加わり、「REAL SIGN」へ。香川はギターだけでなくコーラスにも参加する。G節ともいえる滑らかに綴られるリリックとレゲエ調のメロディ、そこに加わる三味線の音色。ごった煮の魅力がそこにはある。

上原が役目を終えてステージから去ると、2曲目にはROGUEのカバー「OVER STEP」を披露する。この曲の時か、あるいは「REAL SIGN」のタイミングだったか、香川のプレイが盛り上がりすぎて転倒してしまう場面も。少し心配になったが、そのあとは何事もなく華麗なギターを披露していた。

「Too oLD To KNoW」では茂木が「人も違う、場所も違う、でも山人、全員両手を上げろ!」と煽り、会場中が両手を上げて呼応する。声は出せない、しかし心の声は掲げられた両手を通じて、ステージへと届いていたことだろう。

「この2年間、与えられたのは“耐えろ、だけど絶やすんじゃない”、めちゃくちゃな難題です」と語った茂木。2019年で歴史が止まってしまった山人をなんとか開催しようと試行錯誤し、誰もが無理だと言った、年内での山人音楽祭開催を約束。そして迎えた初日。

「見てくれよ。ジャンルも年齢も全然違う、それがバックヤードでわちゃわちゃして。Beforeコロナとはちょっと違うけど、今日一日、足りないピースを埋めていこう」

群馬の3バンドが駆け抜け、バトンを繋いだこのステージ、今日の山人音楽祭が示した景色と意味、そして意思を確かめるように語る茂木。

群馬という“村社会”で開催することのリスクにも触れ、万全を期すため開催告知が遅れてしまったことを謝罪しながら、情報をキャッチして都合をつけ、県内外からここに来てくれた観客たちに感謝を述べていた。

ライブは後半戦へと続き、心震える熱唱とスケール感のある楽曲が胸を打つ名曲「Fire」、さらには東京進出を経て故郷・群馬に帰ってきた奴がいるんだ、という紹介と共にFOMAREのアマダを呼び込んで「らしくあれと」を響かせる。茂木とアマダの声の相性も良く、ふたりの個性がうまく絡み合いながら披露された、今日ならではの「らしくあれと」はレアな一曲となった。

「人間は敵がないと戦っていけない」
「その敵って言うのが自分の隣にあるのか遠くにあるのか」
「俺はできるだけ遠くの大きな敵と戦っていたい」
「遠くの大きな敵と戦うときはこの辺の奴みんな仲間になるだろう」

「どうだよ、今日の群馬。普段ブッキングライブほとんどやらない奴らが一緒に、どっか大きな敵と戦っている。そんなことがほんの少しだけできたと思います」

憧れの大先輩や可愛い後輩、そして同じように群馬を背負いながら近くて遠かったバンドを誘い、共闘したフェスの本編最後はG-FREAK FACTORYのアンセム、「ダディ・ダーリン」。過去に思いを馳せつつ、平和の中にいると平和を願う気持ちがわからないと歌う大名曲。

茂木の魂を削るような歌唱を全身に浴び、そのすさまじさに圧倒される中でライブ本編は終了となった。

巨大な余韻を引きずるも、アンコールでは空気が一変する。虎柄パンツに青ヘルという青鬼スタイルで登場する茂木。「明日は空気的にできるメンツじゃないから、今日やる」と言いながら、にこやかな雰囲気を醸し出す。

群馬のバンドは捨てたもんじゃない、そんな言葉を口にしつつ、地元を大事にしているバンドは強い、と話す。そしてLACCO TOWERともまた一緒にやりたいし、FOMAREともやりたいと茂木は続ける。さらにROGUEについては「大変だったんだぞブッキング!」と思わず本音が。

何度も断られたそうだが、自身の青春であるバンドと一緒にステージに立てることに感激している様子。また、この2日間のブッキングについてNGだったバンドはいなかった、との報告も。

そして最後にひとつだけ苦言を呈する。ROGUEが2022年に開催するGBGBについて、ファイナルと謳っていることに対し、「ファイナルだから出ろってのは違うと思いますが先輩どうでしょう?」と、これで終わることを惜しみ、もっと続けてほしいと願っていた。

山人音楽祭2021の初日「上州事変」、オーラスを飾ったのは「日はまだ高く」。どちらかと言うと激しく、心に重く響く曲が多いG-FREAK FACTORYの楽曲群の中でも際立つ、溢れんばかりの故郷への愛を力強く歌う一曲だ。

今日の出演者全員がステージ登場し、NAIKA MCによる即興ラップも飛び出し、G-FREAK FACTORYを中心に様々なバンドマンたちが混ざり合い、まさに祝祭のように幸せな景色がステージに広がっていく。一方の観客席では、与えられたスペースの中で手を上げたり飛び跳ねたりと、観客たちもそれぞれに精一杯の表現でその喜びを放出していた。

なんて幸福な瞬間なのだろう。これを観るために自分は今日、ここに足を運んだんだと確信できる、大いなる充実感に満たされた時間でもあった。

セットリスト
01.intro
02.REAL SIGN
03.OVER STEP
04.Too oLD To KNoW
05.Fire
06.らしくあれと
07.ダディ・ダーリン
EN.
08.日はまだ高く


群馬のバンドだけで構成された山人音楽祭 上州事変。各バンドがそれぞれのプライドを持ちながら、群馬という一本の太い柱で繋がり、大きな化学反応を生み出した夜。2021年というこの時代だからこそ実現したステージは忘れることのできない光景を作り出し、観る者の心にもしっかりと刻まれたことだろう。

これからの山人音楽祭がますます楽しみになる、素晴らしい一日だった。


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