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【ライブレポート】2023/3/28 ハク。 pre.『譲らない心で遊ぼう~東京編~』

ハク。の新EPリリースと下北沢Flowers LOFTの3周年を記念した企画『譲らない心で遊ぼう~東京編~』が開催された。

関西拠点のバンド2組と東京拠点のバンド2組による東西対決となったイベントを振り返る。

東京少年倶楽部

トップバッターは、関西バンドながら名前に「東京」を冠した東京少年倶楽部。ライブ自体初めて観るのだが、松本幸太朗(Vo/Gt)の、ジャケットを着た少し大人びたビジュアルと、ピュアな少年性を帯びた歌声のギャップにさっそく興味をそそられる。

「七月」という曲で静かに、ゆっくりと立ち上がったライブだったが、間奏で早くも熱量を帯びた演奏が飛び出した。

平日夜の一番手ながら、フロアにはたくさんの観客が集まっており、東京での知名度、あるいは勢いを感じさせる光景だ。

数曲ほど演奏を終えると「よう、東京」と松本がちょっと照れくさそうに語りかける。主催であるハク。へのお礼を伝えながら、「いつもどんがらがっしゃんってやるんですが、今日は歌うぜ、鳴らすぜってセットリスト持ってきたんで」と話し、次の曲へ入ろうかというタイミングで「俺、セットリストミスってんな」とポロリ。

すかさず古俣駿斗(Dr)が「好きにやれよ!」と声をかけ、松本も「(こんなことを)言ってくれるメンバーとやってます、Yeah!」とゴキゲンだ。

MCのとおり、激しさよりも歌をじっくりと聴かせる曲が多く、松本の特徴的な歌声含めてバンドとしての音をたっぷりと味わうことができた。

三好空彌(Ba)の、まるでギターかと思うようなベースの指捌きも楽しい。

“東京モード”な歌モノバンドの一面を見せつつ、ラストは「ばいばい」という曲でライブを〆て、イベントのトッパーとしての役目を見事に全うしてみせた。

Hwyl

2番手として登場したのはHwyl。あきたりさ(Vo/Gt)とクマダノドカ(Gt)の2人組にリズム隊のサポートを加えた4人編成だ。

「i don't know」でライブをスタートさせたのだが、どうもあきたのマイクの調子が悪く、時折音が途切れてしまう。キャパが大きくないせいもあってマイクが途切れても歌声自体は届くのだが、それでも違和感はぬぐえない。しかし本人たちの音の返り自体には問題なかったようで、ライブはそのまま続く。

せっかくのあきたのパワフルな歌声が100%のかたちで響かないのは惜しい…と思っている間にライブは次の曲「SIREN」、さらに3曲目「オマエアレルギー」へ。同曲のイントロでは、ふたりのギターの掛け合いが会場を盛り上げる。表情豊かに歌うあきたと、様々な音色を駆使するクマダのギターのコンビネーションも抜群だ。

相変わらずマイクの調子は、良かったりイマイチだったりと安定感には欠くものの、「i don't know」冒頭よりは聴ける状態にある。

このまま後半に進むかと思われたタイミングで、スタッフが登場してマイク交換。観客の不安も取り除かれ、胸を撫でおろす。この時間を利用したMCでは、あきたがハク。のリリースを祝い、さらにクマダは「(大阪バンドと東京バンドの)東西対決みたいなこともあると思うんですけど…頑張ります!」と意気込む。

無事にマイク交換も終わり、あきたが「今頑張って生活している人たちに届くように歌います」と告げて「わからないよな」へ。個人的に、まだそれほどライブで聴く機会のない曲なのだが、強く印象に残る曲。“轟く”と言っても大げさではないあきたの歌声と、めちゃくちゃ好みな美しいギターサウンドがたまらない。そして間奏でカポを放り投げてギターソロを弾くクマダの猛々しいギタープレイは必見。ふたりの武器がしっかり活かされた一曲だ。

ドラムがリズムを刻むなか、あきたが曲紹介のコメントを述べ、絶妙のタイミングでクマダのギターがインして始まる「暮らし」。この冒頭の流れだけでもゾクゾクしてしまう。あきたとクマダのギターの絡みあいも最高だ。

曲が終わると、あきたが「最近Hwylでめちゃくちゃ嬉しいことがあって。まだ発表できないんですけど」と話す。そのときは何だろうな、と思うくらいだったが、きっとこのニュースのことだったのだろう。

「前回ここに出たときはマジでお客さんゼロ人で。今日こうやってたくさんの人に見てもらえて、少しずつ前に進めているなと実感します」「これからもHwylらしく一歩ずつ進んでいけたらいいなと思っています」

そんなMCと共に6曲目「現在地」へ。曲のテーマともマッチした上手なフリも良いが、この曲での包み込むような柔らかいギターも絶品。あらためてギタリスト・クマダノドカの魅力にやられてしまう。また、ギターを置き、シンガーに徹したボーカリスト・あきたりさを存分に味わえる曲にもなっている。

最後のMCでは、5月のレコ発企画にゲストとしてpeanut buttersと35.7を迎えることも発表し、勢いを感じさせる彼女たち。そのままラストブロックへと進み、地元の家族や友人たちに“元気でやっているよ”と伝える曲だという「戯れ言」をパフォーマンス。観客に向けて手拍子を促し、ステージとフロアでのコミュニケーションを生みながらさらにライブを盛り上げると、ラストナンバーに「Treasure」を演奏。今のHwylをしっかりと届ける、そんなライブだったのではないだろうか。

1.i don't know
2.SIREN
3.オマエアレルギー
4.わからないよな
5.暮らし
6.現在地
7.戯れ言
8.Treasure

the pullovers

続いて登場したのはthe pullovers。転換時からどこか独特の空気をまとっていたのだが、とにかくクールで捉えどころがないCettia(Vo/Ba)のキャラクターが際立っていた。

佐々木理久(Gt)とサポートドラム(?)のふたりはめちゃくちゃ激しいプレイで魅せるのだが、Cettiaは表情を変えず、歌い続ける。

そんなCettiaの歌声は、顔の表情とは違っていろいろなカラーを見せてくれる。聴けば聴くほど、その不思議魅力に惹きつけられている自分がいた。

MCでの、告知まわり含めてきちっと説明する佐々木理久のスキルが見事。対照的に、Cettiaは「スタッフさん、ちょっと酒がなくなったのでお願いします」と、ペットボトルに入れた“酒”を飲み干して、酒がほしいとリクエストする。このふたりのキャラの違いはそのままthe pulloversの面白さにもつながっているのかもしれない。

酒リクエスト後に演奏した「むてきのふたり」でのCettiaの歌声がまた素晴らしく。同曲での一瞬の激情が表現された歌唱に思わず心をもっていかれた。酒飲み破天荒バンドマンに見えつつも、ボーカルとして光り輝くCettiaは、ついつい追いかけたくなる存在だ。

その後、酒が注がれたグラスがステージに届く。グラス片手にMCをするも、「やばいな。頭おかしくてすいません」と話すと、軽く口をつけてから佐々木に預けて、無事グラスはステージから退場。

ここからCettiaが少し長く時間を取って、メッセージを届ける。友人の引っ越しや会社の同期の退職に春を感じるという彼女は、生きていて、安定している自分もいいし変えたいなとも思うと話す。新しいことを始める際には怖さを感じるが、怖いと思えることは価値あることだと思う、とも語った。

「ステージの上から話すような人間じゃないんですけど、一緒に頑張ろうよって気持ちでthe pulloversやってます。こんなヤバイ奴でも生きてるんだって思ってみんなで頑張っていければ」

そんなCettiaの言葉に佐々木は「エールだったんだ」と反応すると「エールを送れる人じゃないから、みんなで頑張ろうぜって」とあらためて“みんなで一緒に”を強調。

日々、「仕事に行きたくない」と思いながら、ステージの上からリスナーと同じ目線で歌う。今日初めてライブを観たのだが、the pulloversに惹かれてしまう理由のひとつがわかった気がした。

セットリスト
1.結末
2.蹂躙
3.isle/島
4.むてきのふたり
5.この歌にのって
6.うみべの男の子

ハク。

トリを務めるのはもちろんハク。だ。あい(Vo/GVo)、なずな(Gt)、カノ(Ba)、まゆ(Dr)の4ピースバンド。白基調の爽やかでガーリーな衣装をまとい、音を紡いでいく。

そのビジュアルとも一致した、とても柔らかくて丸みを帯びた優しい音で溢れるステージに、心のささくれも癒されていくような感覚を味わう。

バンドサウンド全体に温かみがあるのだが、なによりあいの歌声がその象徴として、ハク。の色を表現しているようにも感じる。まゆはメンバーに視線を送りながら、時折笑みを浮かべてドラムを叩き、なずなは常にニコニコしながら、主張し過ぎずにバンドに寄り添いながらのギタープレイ。

そして今日いちばんの個人的発見となった、ベースのカノ。彼女が操るベース音はもちろんのこと、独特の首のリズムもめちゃくちゃグルーヴィーで、耳だけでなく目も釘付けになってしまった。「ハルライト」という曲では顔の表情が熱唱モード。「BLUE GIRL」という曲でのコーラスワークも美しく、とにかくもう、彼女が生む音、歌声、立ち居振る舞いのすべてが魅力的だった。

MCではあいが、今日出演のバンドの名を挙げて「一緒に対バンできてとてもとても嬉しいです」と話し、「どこにおられるかな?わからんけど」とフロアにいるであろう彼女らを探すとすぐに見つけて「あ、おられる~!」と喜ぶ場面には、フロアから笑い声がこぼれていた。

また、「何を伝えられるか、何をどう受け取ってもらえるかわからないけど、わからないっていうところに立ってやる。でも自分には“こうしたい”という意志がある。面と向かって音と耳があって…というこの状況がとても刺激的で、みんなにとっても刺激のある日になればいいなと思います」とも語っていた。

ライブ後半には「私が選んだ道、たぶん大丈夫って思って作った曲です。聴いてください、直感way」と最新EP収録曲を紹介。「直感、way」と一瞬のテンポを置いてふたつのワードを繋ぐ、そんなタイトルの言い方がなんだかとてもカッコいい。

本編ラストに「無題」という曲を披露して一度ステージから去るが、アンコールの拍手が鳴るとすぐに再登場。「こういうのはサッと出んといかんから」と話すあいが頼もしい。

今日のイベントの最後を飾るのは新曲とのこと。この曲についてあいは、「(音楽の世界について)どこまで続くかわからない怖さはあるけど、好きだからやる。突っ込んだから、足を。だから絶対に頑張りたいと思って作った曲です。(メンバー)4人とスタッフと、聴いてくれてる一人ひとりを思って作った曲です。誰かにとっての一曲になったらええなあと思っています」

そう告げて披露したのは「僕らじゃなきゃダメになって」。曲前のメッセージを受けて、という状況もあるだろうが、丸みの中にもどこか強さを感じるパフォーマンス。ギターの音が琴線に触れ、感情を刺激する演奏も心に残る。

初見ではあったが、とても印象的なステージで、カノの存在も含めてたくさんに刺激をもらったハク。のライブだった。


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