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【ライブレポート】2023/2/18『THE SUN ALSO RISES vol.176』KEMURI / Five State Drive

KEMURIとFive State Driveという、スカパンク愛溢れるツーマンがF.A.D横浜にて開催された。前日には大阪・GORILLA HALL OSAKAにてGELUGUGUも入れたスリーマンが行われ、両バンドは連日の対バンとなる。

個人的に、F.A.D横浜を訪れるのは2008年2月17日の『SPACE BOYS presents”FEEL YOUR SPACE!!vol.3”~BIG MAMA 1st full album「Love and Leaves」release tour~』以来2度目。

あの日はイベントタイトルにもあるSPACE BOYSやBIGMAMAをはじめ、TOTALFAT、さらにはsumikaになる前のbanbi、そしてRIDDLEも出演。

RIDDLEは、今日のKEMURIでサポートドラムを担う宮崎雄斗くんが今、KEMURIとは別にサポートしているバンドでもある。ちょっとした縁も感じつつ、いざ(まさしくちょうど)15年ぶりのF.A.D横浜へ。

Tシャツ着用、首にはタオルなかつてのライブハウス然としたフロア。たくさんの観客が今か今かと開演を待っていると、場内が暗転して、名古屋発のスカパンクバンド Five State Driveの登場だ。

Five State Drive

KEMURIのロゴが刻まれたタンクトップを着るMontero(Vo)が「今日は俺達、名古屋スカパンクFive State Drive、ぶちかましに来ました!よろしく!」と一発かますと、「Anthem」でライブスタート。

一瞬にしてフロアはトップギアへとスイッチし、あっという間にダイブの嵐。「F.A.D、来いよ!」というMonteroの煽りに喜び勇んで飛んでいく。

さらに「F.A.D!お前らに会いに来たんだ!一緒に踊ろうぜ」というMonteroの声と共に始まった「Don't Let Me Down」では、キッズによるステージダイブも飛び出した。パフォーマンスを阻害しない、慣れた振る舞いにおもわずニヤついてしまう。

ステージ袖に目をやれば、KEMURIのサポートドラム・雄斗くんが笑顔をこぼしながら見守っていた。

「Raise the Flag」は、ポップなメロディで心も踊るキャッチーなナンバー。手持ちの荷物を全部放り投げて踊りだしたくなってしまう。

「お前らスカパンク好きだよな? じゃあ知らなくても踊りまくってくれ!」というMonteroの言葉もあったが、まさしくスカパンクは初めて聴く曲でも思いきり楽しめるのが大きな魅力だ。「予習」しなくても弾けられる、それがスカパンクのライブだということを体現していくFive State Drive。

MCでは「これはブチ上がっちゃうね。こんなF.A.Dやったことないよな。すげえ人入るじゃん! さっき、KEMURIのおねえさん、やっと後半で踊ってくれたな! 今日はどんだけKEMURIのTシャツの人が踊ってくれるか、勝負なんで。いつもFive State Drive観に来てくれる人も、ありがとね!」と、KEMURIファンとFive State Driveファン、両者に向けてのメッセージも。

ライブはまだまだ続く。「D.H.C」、そしてHora(Gt)のギターソロも気持ちいい「F**K YOU」を披露すると、コール&レスポンスを挟んで「Msncheese」を演奏。マスク着用とはいえ、大きな声が飛び交うライブハウスを目の当たりにすると、本来のライブハウスの息遣いが感じられて嬉しくなってしまう。

セットリストには、往年の名曲で映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でのマイケル・J・フォックスの名場面でもおなじみ、「Johnny B. Goode」のスカパンクカバーも組み込まれていた。エレキギターが何よりの見せ場なHoraのプレイや、GORiLLA(Ba)のベースも楽しい一曲だ。

「Would you like to play volleyball?」なども演奏し、メンバーからは「速いスカパンクで足が追いつかない感じがいい」とフロアの様子を踏まえたコメントも。

「レジェンドのKEMURIと、大好きなF.A.Dでツーマンできてめちゃくちゃ嬉しいです」「KEMURIと2DAYS、ご褒美です」「まだまだいける?」

そんな、MonteroのKEMURIリスペクトなMCに続いては「Warning」「Song for Babylon」といった曲をプレイし、フロアを徹底的に踊らせる。

10周年を迎えるという彼ら。まだ曲もないのに、ライブのオープニングアクトをやらせてほしいとライブハウスに売り込みに行ったという、結成当時の思い出を振り返りながら、KEMURIとやりたいという夢がこの2DASYで叶ったことを喜んでいた。そして「そういう(一緒にライブをやりたいと思ってもらえる)バンドにもなりたい」とも付け加える。

「スカが好きってマインド持ってくれてる奴がおったら、バンド始めようぜ! 俺らと一緒にやろう。いいんだよ、おじさんでも。スカパンク楽しいぞ! 俺はスカパンクとライブハウスと、好きな友達がいれば、ここは、パラダイスだ!」

ビシっと決まったMCからの連動で流れるように入った「Paradise」で、俄然熱量が上がっていくフロア。さらに畳みかけるように、彼らのアンセム「Nice Coke!!」へと突入する。Monteroがフロアへと降り立ち、周囲を巻き込んでスカンキン炸裂。本人によるステージダイブも飛び出すなど、これ以上ない盛り上がりを見せた。

ラストを飾った「Theme of FSD」で完全燃焼、と思いきや、持ち時間が余ったということで本日の1曲目「Anthem」をおかわり。

サークルモッシュにダイブ、コール&レスポンスと、「ライブハウスといえば」な瞬間が盛りだくさん。スカパンクやライブハウス、そしてKEMURIへの愛たっぷりなステージで、Five State Driveが自身の魅力を存分に発揮した60分だった。

KEMURI

続いて登場するのは、もちろんKEMURIだ。ライブ前にはメンバー自身がステージに出てきてサウンドチェックを行うDIYスタイル。ホーン隊が音を合わせただけで会場から歓声が沸き起こるなど、Five State Driveのおかげでスタート前から臨戦態勢のキッズたち。

やがておなじみのSE、NOFX「All Outta Angst」が流れてステージに登場するメンバーたち。今回のサポートも、“いつメン”ともいえるこの4人。

宮崎雄斗(Dr)
山縣健太郎(Tp)
永田こーせー(T.Sax)
須賀裕之(Tb)

最後に登場した伊藤ふみおさん(Vo)が、左手にマイクコードをグルグル巻きつける恒例の動作を終える。そして一度バンド全体で音を出した後、一瞬の静寂を経てドラムカウントから山縣さんの美しいトランペットが鳴り響き、(個人的には)まさかの「in the perfect silence」でライブの幕が開いた。

KEMURIの中でも一番大好きな曲と言っても過言ではないこの曲で始まったライブが、盛り上がらないはずもなく。待ちかねてたキッズたちの、まさしくカオスと呼ぶにふさわしい弾ける様が目の前に広がる。

続く2曲目に「our PMA」と、ライブの火にガソリンを撒くがごとくの選曲でうねるフロア。津田紀昭(Ba)さん、そして田中“T”幸彦(Gt)さんが笑顔で演奏する姿が見られるのも最高に幸せな気分だ。

「どうぞ助け合って最後まで楽しんで帰ってください!レッツゴー雄ちゃん!」

そんなふみおさんの言葉から「I am proud」、そして「Blue Moon」がたて続けに演奏されると、F.A.Dの熱気はさらに上昇していく。

Tさんギターのギターが優しくメロウな旋律を奏でると、須賀さんのトロンボーンが超絶に美しい、あのメロディを吹いて始まったド名曲「prayer」。ゆったりとしていてスケール感のある冒頭からのBPM急加速な、ライブ鉄板破壊力MAXなナンバーだ。

曲中、演奏パートがないときは須賀さんがスカダンス、山縣さんも軽くヘドバンするなど、自身がステージで楽曲を楽しんでいる、そんなシーンも。

津田さんのループするベースラインやTさんのカッティングギターが耳心地の良い「Workin' Dayz」では、私自身、荷物を手にしながらも思わず飛び跳ねてしまうほど興奮してしまった。珍しく(?)ふみおさんが、両手を交差させてメロイック・サインを繰り出すという貴重な場面も。

冒頭がとてもユニークかつ印象的な「Patience」。同曲での永田さんの派手なサックスプレイは必聴。サポートに入りたての頃に比べると、山縣さんも永田さんもチームに馴染んでいるというか、ライブをより楽しんでいるように感じられて、ファンとしては嬉しくもあり、頼もしくもある。ちなみに雄斗くんは初期の段階でガッツリKEMURIの一員として、グイグイ大先輩たちを引っ張るようなプレイだった印象。

「新曲だから練習しようか」というふみおさんの合図で軽く合わせた後に披露したのは「Cancel Me」。新曲、というよりは「最新曲」という表現のほうがしっくりくる、1年ほど前にリリースした楽曲だ。山縣さんのスカダン姿も見られて、こちらのテンションもグッと上がる。

Tさんの威勢のいいギターで始まる「Mr.SMILING」は、スカダンスがバッチリハマる一曲。ステージ袖にはMonteroが食い入るようにライブを見つめており、まるで何かを吸収しようとしているようだった。この曲では後半の見せ場に、タオルを振り回すアクションがある。たくさんのKEMURIタオルがブンブン舞っている光景は、またひとつ、あの頃のライブハウスを思い出させてくれた。

須賀さんと山縣さんがまるでユニゾンかのごとく、ふたり揃って踊る姿に頬が緩む「SOLIDARITY」。ふみおさんは時折、めちゃくちゃチャーミングな笑顔を浮かべながら熱唱する。

少し間をおいて、「レッツゴーTさん!」の合図からかき鳴らされたギターで誰もが大興奮する、ライブ鉄板アンセムのひとつ、「Ohichyo」。拳を上げ、飛び跳ねて、そしてマスクを通しての《Ohichyoのように》のシンガロング。待ってたこの時を。もはやデトックスか、というくらいに、いろんなものが声と一緒に吐き出されていくあの感覚を久々に味わった。

鉄板シリーズはまだ続く。お次はファン以外にも浸透している名曲「P.M.A」の登場だ。スカダンスにシンガロング、そしてフロアはもちろん、ステージも(雄斗くん以外)全員がジャンプ!

なぜ自分はパーカを着ているんだ、と後悔するくらいの熱・熱・熱。真冬でもスカパンクが鳴り響くライブハウスは激熱だという記憶がよみがえる。

本編ラストを前に、バンドを代表して、Five State Driveのメンバーやスタッフへ感謝の気持ちを伝えるふみおさん。

「リハやライブを拝見して、心の底からスカパンクってかっこいいって思いました」

ヘイスミのツアー等にも出演する彼らに対して「たくさんいろんな景色を見た彼らとまた一緒にライブやることを、とても楽しみにしています」とエールを送る。さらにライブハウスに対しては「毎回企画に誘ってくれるF.A.Dのみなさん、バンド代表して心からお礼言います。どうぞ、どうぞ、これからもよろしくお願いします」とコメント。

そして「照明、カウンター、物販、音響、楽器、その他スタッフの皆さん、ホントにありがとうございました」とスタッフたちへ礼を伝えると、「そして何よりも、最後まで残ってKEMURIを観て、汗たくさんかいて、マスクしながら歌ってくれたみんな。最後までみんなの熱気を感じてライブすることができて、今日、忘れられない瞬間をたくさん作ることができました」と挨拶する。

続けて、「出会いがあれば別れもあるし、別ればっかりみたいに思えるときもあれば、ポコっと素晴らしい出会いがあって人生変わったりすることもある。だからみんないろんなことがあると思うけど、またF.A.Dで会いましょう」「最後に一曲、いろんな気持ちを込めて歌います。演奏します。歌えたら一緒に歌って!」

そんなメッセージと共に演奏されたのは、前日の大阪ライブで須賀さんが「近年一緊張した」という「白いばら」のイントロ。約20年前、当時メンバーだった森村亮介さんの事故がきっかけで生まれた、鎮魂と別れ、そして再起の想いが込められた名曲だ。

つい最近も偉大なバンドマンがこの世を去り、大きな悲しみに包まれた。まだそのダメージを負ったままのキッズもたくさんいるだろう。突然の別れに憤って、ふてくされて、それでもいつかちゃんと整理をつけて「さよなら」を言えたらいいな、と、そんなことを思いながら「白いばら」を味わった。

大きな感動と共に本編が終わると、もちろんフロアはアンコールを求める。少し時間をおいてメンバーが再登場すると、ふみおさんは言った。

「ツーマンのガチ対バンだから、アンコールはどうかと思うんだけどさ」

どっちが上とか下じゃない、そんな姿勢が言葉に表れていたが、この後に放った「クソレジェンド扱いされてイラっとすることもある。レジェンドでもないのに」というコメントにも、そんな思いが込められていたように思う。

「すぐそこに出口見えてるけど、また次に来るときはもっと楽しくなってるはずだから。もっと安心して歌えたり、ダイブしたい人はダイブして、グルグル回りたい人はグルグル回って、それ見てブツブツ言いたい人はブツブツ言って」

ダイブやサークルモッシュの肯定=それに異論を唱える存在の否定、になりがちだが、ここで「ブツブツ言う人」も込みで、みんな楽しもうと話すふみおさんが最高だ。

アンコールでは、贅沢にも「Don't Know」「New Generation」「Ato-Ichinen」の3曲を披露。本編では“見学”感のあったFive State Driveのメンバーたちもステージで一緒にわちゃつきながら、コーラスしたりスカダンしたりと大暴れ。これぞツーマンライブのアンコール。

コロナ禍、様々な制限下でもKEMURIのライブを観てきたが、その時々に応じた対応で、できる限り楽しめるようなライブを繰り広げていた。そして今日、マスク着用の制限はあるものの、いろいろなものが解禁となったライブハウスで、そのポテンシャルを十二分に発揮していたように思う。

フロアのリアクションは確実にステージへと反映される。ライブとは、ステージとフロア、アーティストと観客による、心と体と声のコミュニケーションなのだとあらためて実感する、そんな最高の夜だった。

セットリスト
01.in the perfect silence
02.our PMA
03.I am proud
04.Blue Moon
05.prayer
06.Workin' Dayz
07.Patience
08.Cancel Me
09.Mr.SMILING
10.SOLIDARITY
11.Ohichyo
12.P.M.A(Positive Mental Attitude)
13.白いばら

EN.
14.Don't Know
15.New Generation
16.Ato-Ichinen

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