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【ライブレポート】2023/3/19 LACCO TOWER「独想演奏会~四人囃子編~」@渋谷WWW X

LACCOTOWERのイベント『独想演奏会~四人囃子編~』へ行ってきた。松川ケイスケ(Vo)の喉の不調からライブ活動の継続が困難になったLACCO TOWER。しかしボーカルレスのインスト編成というかたちで対バンイベントへの出演も行い、さらには『四人囃子と御客人(おきゃくじん)』と題して、インスト編成のまま活動の継続を決定。このスタイルのファイナルとなったのが、今回の渋谷WWW Xにて開催される『独想演奏会~四人囃子編~』だ。

さらにこのライブは、4月開催の『I ROCKS 2023[JAM]』とのWネームとなり、インスト編成時のメインゲストであるバイオリニストのLisako(大島理紗子)に加え、『I ROCKS 2023』にも出演する、内田直孝(Rhythmic Toy World)、河内健悟(ircle)、真行寺貴秋(BRADIO)、寺口宣明(Ivy to Fraudulent Game)、堀越颯太(KAKASHI)、DJガッツいわせwithスベリー・マーキュリーといった盟友たちが集結。

『I ROCKS 22』でも「JAM」と題してゲストとのセッションライブを実施したが、同じく「JAM」の名のもとに、様々なアーティストたちと繰り広げた“今日しかねえ”ライブを振り返ってみよう。

お馴染みの登場SE「狂想序曲」が流れるなか、重田雅俊(Dr)、真一ジェット(Key)、塩﨑啓示(Ba)、そして細川大介(Gt)の4人がステージに。いつもなら最後に松川ケイスケが出てくるのだが、四人囃子に彼は不在。その代わりに、Lisako(Vn)が登場。彼女のバイオリンが主旋律を担う、LACCOTOWER ~四人囃子~ feat.Lisakoのライブがスタートした。

幕開けを飾ったのは「林檎」だ。バイオリンの滑らかでありながらキレも感じさせる音色が曲をリードしていく。そしてもう当たり前のような景色だが実際、決して当たり前ではない、そんな大介のレフティギターがバイオリンとのコンビネーションで「林檎」を色付け。早くも真一が椅子の上に立って演奏するなど、かかり気味にスタートダッシュを決める。不思議とLisakoのバイオリンが脳内でケイスケの歌声と重なり、そこでケイスケが一緒に歌っているような感覚になった。

「やってきましたLACCOTOWER ~四人囃子~ feat.Lisakoです! 思えばケイスケが12月に他界してから…」

「他界してない! 1曲目だぞ、寄り道すんな!」

こんな大介と啓示のやり取りで会場を和ませると、『I ROCKS 22[JAM]』ということでさっそく1発目のゲスト、DJガッツいわせwithスベリー・マーキュリーを呼び込んだ。

いわせが「一緒にマネして体を動かしてくれたら嬉しいです」と告げると、真一の鍵盤が軽快な音を鳴らして「檸檬」がスタート。わかりやすくて参加しやすい振り付けで踊るいわせとスベリー・マーキュリーに合わせてフロアも楽しそうに踊っていた。

途中で真一も加わり、3人が縦に並んで、まるで千手観音のように手を広げるパフォーマンスで会場を楽しませる一幕も。

啓示の気持ちのいいベースラインや大介のギターソロなど、さすがLACCO TOWERな個々のメンバーの見せ場をたっぷり楽しめる「檸檬」だった。

MCで自己紹介する際、スベリー・マーキュリーが「Hello!JAPAN!」と挨拶すると「どっから来たんだよ」と大介がツッコミを入れ、重田が「小田原」と呟く。これにすかさず「小田原って言わないで」「一応ロンドンからってことになってるんで」と、いわせとスベリーが懇願する、フォーマットのような美しい流れが笑いを誘う。

そしていわせが「なんで僕たちが一番目なんですか! 楽屋でいろんなボーカルの人が発声練習している中で、隅っこで振り付け練習。肩身が狭いぜ」と愚痴をこぼすと、「のっけからいってほしかったのよ、あなたたちに」と啓示の真意が明かされる。さらに「『檸檬』は10年以上前の曲。あんなふうになるなんて、曲が喜んでるよ」と、ゲスト冥利に尽きるひと言も。

そのままの勢いで、「夜明前」へと突入する。両手を応援団のように横、そして前へと振り下ろす振り付けで会場が一体となるなか、いわせとスベリーはそれぞれ「大介」「Lisako」の文字が飾られた“応援うちわ”を手にパフォーマンス。そんなステージにLACCO TOWERのメンバーたちも笑顔を浮かべ、リラックスモードで楽しそうにプレイしていた。

いわせとスベリー、そしてLisakoと入れ替わりで登場した2組目は、堀越颯太(KAKASHI)だ。言葉を発するよりも前に『笑っていいとも!』のタモリでお馴染み、わーっと盛り上げてからの3発手拍子という例のやつでさっそくフロアとコミュニケーション。

「ケイスケの件を12月に発表したとき、『俺なんかやりますよ、歌いますよ』とラーメン屋で言ってくれたことを覚えている」と感謝する啓示は、さらに「ひとまわり違うけど、LACCO TOWERのマインドを持った群馬のバンドなんで、KAKASHIをよろしくお願いします」と後輩を紹介。

堀越は「スベリーさんとガッツさんの背中を観てたら、今日は『I ROCKS』ですね、すげえ感動しました。悔しいけど」と1組目のゲストを賞賛していた。

そんな彼が、ギターを携えて披露するのは自らのバンドKAKASHIの楽曲「ドラマチック」。右利きスタイルに変えて演奏する大介、そして堀越と2本のギターが活躍する、いわゆるギターロック感に溢れた一曲で、これをケイスケ不在とはいえ、ラッコのメンバーが演奏しているという構図がイレギュラーで面白い。

大介のソロプレイ時には、堀越が温かい目で大介を見守りつつ、やがて重田や啓示とも視線を合わせて、それぞれが笑みを浮かべるという、なんともピースフルな光景が広がっていた。

続く5曲目の「後夜」では、Lisakoが再登場。どうやら今日の形式としては、ゲストボーカルが登場して、所属バンドの歌を歌う場合はボーカル+LACCO TOWER。一方ゲストがラッコの歌を歌う場合にはLisakoも参加する、という基本フォーマットのようだ。

「今のKAKASHI、今の堀越颯太は、LACCO TOWERがいなければ、ないと思ってます。今のLACCO TOWERは、今日みたいな日を選んだあなたがいないと、ないと、今日思いました」

「LACCO TOWERに貰ったもの、返せるタイミングをずっと探していて。恩とか気持ちとか、いろんなものを貰ってきたので。LACCO TOWERを支え続けたあなたに返したいと思っていました。それが、今日な気がしています!」

そう語った堀越の、LACCO TOWERとラッ子(ラッコファンの呼称)に向けて届けた熱い気持ちがそのまま乗っかったような、パワフルな歌いだしで始まった「後夜」は、力強くたくましい歌声のまま、ラストまで一気に駆け抜けていった。

あまりのエネルギッシュさに、早くも「疲れた」と発するメンバーだったが、まだゲストは2組目が終わったばかりだ。間髪入れずに3組目のゲストを呼び込むべく、「次に出てくる唄歌いの人は、たぶん一番練習してきてくれてるような気がする」と語る大介。その瞬間、ピンときた。これは内田直孝に違いない、と。彼はそういう男だと。

案の定、大介の口から出たのは「Rhythmic Toy Worldから、内田直孝!」

「練習とかしたことないっス」とカッコつける内田が愛らしい。啓示は、今回のライブに向けたリハの際に、LACCO TOWERへの想いが溢れていた内田の歌唱に感動し、思わずRhythmic Toy Worldのマネージャーに「君んとこのボーカルすごいよ」とすぐ連絡してしまったというエピソードも明かしていた。

そんな内田を招いての楽曲は、「いろはにほへと」。演奏前には《い・い・いろはに い・い・いろはに い・い・いろはに》《ほへとほへと》のコール&レスポンス練習を実施。マスク着用なら声出しOKというレギュレーションながらも、まだここまでおとなしめなフロアの喉を緩める意味で最高のタイミングで放り込まれた「いろはにほへと」だ。

Rhythmic Toy Worldのそれとは明らかに違うバンドサウンドがとても新鮮に響く。もはやどの曲で右利き、左利きだと触れることすら野暮ではないかとすら思うほど、曲ごとに左右のギターを弾き分ける大介の進化ぶりも凄まじい。大介アレンジも施されたギタープレイも華やかで、内田と向き合いながら演奏するシーンも華がある。

声出し練習が功を奏したのか、曲終わりにフロアからは大きな歓声も出始めていた。

内田は「上手く伝わるかな」と断りを入れながら「本当はこんな日、ないほうがいいと思ってる。今日はすげえ日。だけど本来(自分たちのようなゲストが)このステージに立って歌っていいものじゃない」と、このライブが生まれた経緯、つまりケイスケが歌えなくなってしまったことへの複雑な思いを、内田らしい言葉で綴っていく。

「俺がLACCO TOWERの歌を歌って、ケイスケさんが歌うLACCO TOWERを超えられることなんて絶対できないんだよ」

「だけど、俺が歌うLACCO TOWERの歌、それを超えられるのは、俺しかないの」

「それとおんなじ。みんながLACCO TOWERが好きな気持ち。それを隣にいるやつと比べる必要なんてないんだよ。君のその気持ち、いつだって勝てるのは君しかいないし、これまでもこれからもずっとそうだと思う」

「そういう心みたいなものをLACCO TOWERに教えてもらいながら、ここまでやってきたと思ってます。今日は俺の歌で勘弁して。その代わり、俺史上最高のLACCO TOWERの歌を歌うから。みんなの心のど真ん中めがけて。どうか、受け止めてほしいと思ってます」

君の気持ちに勝てるのは君しかいないという、その言葉が心の芯を抉ってきた。推し活におけるマウントの取り合いや妬み、引け目といった負の要素を短いメッセージですべて吹き飛ばすような、内田による言葉の魔法がかかった瞬間…、いや、推し活に付随するドロドロとした邪悪な魔法が解けた瞬間でもあった気がする。

ピュアな気持ちで包み込まれた会場に届けられたのは、「遥」。内田の恐ろしいまでのビブラートモンスターぶりが発揮され、大小の歌声の波がフロア最後方まで寄せては返す。

Lisakoのバイオリンも、ケイスケの歌の代わりではなくストリングスパートとしての本領を発揮して、「遥」をよりドラマチックに仕上げていた。

8曲目の「花弁」は、1曲目と同じLACCOTOWER ~四人囃子~ feat.Lisako編成。バイオリンと鍵盤だけのゆったりした、穏やかな始まりを経て、バンド全体で音を合わせて熱量を上げていく構成の妙にこちらのテンションも上昇。

そこにいないはずのケイスケの歌声を感じながら、酔いしれるという言葉がふさわしい、そんな時間を過ごすことができた。

「花弁」が終わると、ここで本日4組目のゲストとして、河内健悟(ircle)が登場する。

「マジで感動してます」と河内。「ゲストのおかげ」と大介が言えば、「ゲストが歌えるのはLACCO TOWERのおかげでしょ!」と河内が切り返す、お互いを立て続けるエンドレス感漂う流れを「曲でやろうぜ」と啓示が遮り、「柘榴」へ。

まるでガレージロックかのような荒々しい河内の歌声がフロアいっぱいに轟く。Lisakoと大介が向かい合いながら演奏するなど、息の合ったパフォーマンスはライブを重ねてきた成果だろうか。巻き舌を交えてがなりながらの歌唱となった河内。サビでは歌唱を通り越えてもはや絶唱状態に。曲終わりにひと言「(キーが)たけぇよ!」と叫んでいたのが印象的だ。

10曲目となるのは河内のバンドircleから「セブンティーン」。楽曲の勢いを加速させる啓示のピック弾きに、河内の荒ぶる歌声と対照的ともいえる綺麗な大介&真一のコーラスも映える。

ラスト、河内は「今日も思いっきり生きてみるといいよ」の言葉を残してステージを去っていった。

MCを担う大介は、ここまでまだちゃんと喋っていない重田や真一にも話を振っていく。重田は「奇跡的な一日、こんなことは二度とないと思います」と話すと、お馴染みのコール&レスポンス「まさに今日は今日しか」「ねえからな!」で会場と会話し、続く真一は「今日は奇跡な日ってことだろ! It's a miracle day!」「今日の合言葉出ましたよ」とさっそく我が道をゆく。

そんなプチ暴走を拾った大介は「miracle dayを彩る、miracle boyを紹介します! 寺口宣明!」と次のゲストを呼び込んだ。

当の寺口は「miracle boyはやめてください、ダサいです」と言いながらステージへ。重田が「ノブがIt's a miracle day!って言ったらカッコいいんじゃない?」と提案すると、「2曲の間に言うかもしれないけど、シラフでは言いたくないです。酔ってから言いたい。酔わせてくださいよみなさん!」と上手に切り返してフロアを沸かせていた。

寺口を迎えての曲は、Ivy to Fraudulent Gameの楽曲「メメントモリ」。ハンドマイクを手に歌う寺口の歌唱には色気がある。特に時折織り込まれるファルセットがめちゃくちゃセクシーだ。確かな歌唱力も備わっており、魅せて聴かせるボーカリスト。

アウトロでは啓示と大介がステージ前方に出てきて圧巻の演奏を披露すると、寺口は「I'm miracle boy!」と叫んで公約(?)を果たしていた。

同じく寺口ボーカルによるLACCO TOWERカバー曲は、「薄紅」。繊細かつ強くて艶やかな寺口の歌声とそのドラマチックな歌唱が「薄紅」と相性バッチリで、3月という桜の季節にもピッタリ。「薄紅」カバーなら寺口、と定番にしてもいいくらいの収まりの良さだった。

ライブは早くも終盤戦へと向かう。次なるゲストは、「ビジュアル的にはいちばんケイスケに近い」(?)という男、BRADIOの真行寺貴秋だ。

ワインレッドなスーツを身にまとい、ビシっと決めた真行寺。「パーティの向こう側へ行こうよ」と語りかけると、「会いたかったぜみんな!」「We are LACCO TOWER!」と告げてゴキゲンなBRADIO曲「flyers」が始まった。

本来のラッコではまず聴けない、ファンキーでグルーヴィーなダンスナンバーに会場の熱も上がる。ファルセットな真一コーラスも美しく、重田は楽しそうな笑顔を浮かべていた。また、ギターソロ中には真行寺が「大介」の応援うちわで煽り、乗せられた大介もくるりと水平回転。真行寺とBRADIOのパワーがLACCO TOWERに「陽」のエネルギーをもたらす。

とにかく明るい真行寺、のようにも思えるが、昨年コロナに罹患して歌えない時期が一ヵ月あったという。結果、ライブも何本か飛ばしてしまい、歌を歌っている人が歌を歌えなくなると孤独なんだと語る。しかし、当時バンドメンバーがBRADIOを止めるわけにはいかないと、今日と同じ形で、いろいろな歌い手を呼んで何本かのステージをやりぬいたそうだ。
そのことで個人的にも救われ、メンバーは彼の帰る場所を作ってくれてたんだなと感じたという。

歌えなかった時期があり、同じ体験をした身から、真行寺は「バンドを止めずにいてくれてありがとうございました」とステージにいるLACCO TOWERのメンバーにお辞儀をして、「そしてケイスケさん、おかえりなさい」と言葉を添えた。

真行寺と共に披露するLACCO TOWERカバーは「花束」だ。ビジュアル的にケイスケに近い男、というツッコミ待ちの紹介で登場した真行寺だったが、「花束」の歌いだしを聴いて驚いた。歌い方がケイスケに近く、歌声にもケイスケ味がある。本来ファンキー&ソウルフルな真行寺ボーカルと「花束」がここまでマッチするとは。ボーカリストとしての彼の底が見えないポテンシャルを感じさせてくれるステージだった。

そしていよいよ、本日ラストとなるゲストが登場する。大介は「僕らが12月からこの形態を続けていたのは、今から来るゲストを待ち続けるため、このステージを守るため」と話し、「これだけ仲間のボーカリストが出てくれるっていうなかで、ひとりだけ何もしないわけにはいかないと、出演してくれました。LACCO TOWERから、松川ケイスケ!」とゲストを呼び込む。

白シャツ&黒パンツに、どこかラフな髪型で登場したケイスケは「あらためまして、LACCO TOWERのボーカル、松川ケイスケです」と挨拶。

そして「105日ぶり、皆さんの前にようやく顔を出すことができました。とりあえず、ただいまです。待っててくれてどうもありがとう。今日出てくれたゲストに大きな拍手を!」と、ファンや仲間への感謝を示すと、「信じてやっているものは終わらない、いい出会いに別れはないということを証明しにきました。どうぞよろしく!」と告げて本日15曲目となる「証明」を披露する。

手拍子を促して反応を確認し、「お上手です」と褒めるいつものケイスケ節に、ついグッときてしまう。

「四人囃子あらため五人囃子です、どうぞよろしく」「渋谷、お手を拝借!」といった具合に歌が始まる前からその言葉で、バンドを、そしてライブをグイグイ引っ張っていく。これぞバンドを背負ったフロントマンだ。

歌いながら「ただいま、みんな!」と声をかけたり、間奏で啓示や真一の頭を撫でたり、久々のステージをじっくりと楽しんでいる様子。

ケイスケ、啓示、大介という3人が揃ってステージ前方でパフォーマンスする光景に、あのLACCO TOWERが戻ってきた…!という感動が沸き起こる。

今日ここまでの数々のセッションで、終始笑顔で楽しんでいたメンバーたちも、ケイスケを迎えた「証明」では引き締まった表情で演奏しており、緊張感の帯びたプレイにこの1曲に懸ける想いのようなものが伝わってきた。

曲が終わって、大介は「ギターを弾いていて、ケイスケが隣にいる幸せを感じていました」「4月からまたこうやってケイスケの横でギターが弾けるんだと想像して、嬉しくなりました」と語っていたが、いよいよLACCO TOWER復活の幕が開く、そんなワクワクを感じさせてくれる時間でもあった。

このままケイスケと共に最後の曲を演奏するという選択肢もあったが、「今日はLisakoを入れた5人でやらせてほしい」と大介は言った。

ケイスケ不在となった状態でも、LACCO TOWERを止めないという判断が正解かどうか悩んでいたという。周囲からも、「ボーカル不在での活動は変では?」「休んだほうがいい」といった意見があったそうだ。

しかし、この決断を、間違ってなかったと証明するために3か月間活動してきて、ケイスケが横に立ったとき、やってきてよかったと思えたという大介。そう思えたのは、ケイスケ不在でもライブを観に来てくれたファンがいたからだと、感謝の言葉を添えていた。

また、ケイスケではなくLisakoと共に演奏することになる、本編最後の曲について大介は、こう語った。

「インストはどんな物語にも変えていけると思ってる。最後の曲は悲しい曲なんだけど、今日だけは未来への希望に向けた曲とイメージしながら聴いてください」

そして始まったのは「最果」。大介のこんな言葉があったからだろう、確かにイントロから鍵盤とバイオリンの悲し気なメロディが流れるのだが、それはまるでこれまでの苦難を示しているようで。そしてそこから続くサビでは、LACCO TOWERとしてさらにパワーアップした5人の道が続いていくのだという、明るい未来を表現しているような気がしてくる。

バイオリンとベース、ギターという3種の弦楽器によるハーモニーも美しい。リズムを担いながら、ふと真一のほうを向いて笑顔になる重田の姿も含めて、ボーカル不在という状況を乗り越えてきた4人とLisakoのチームワークが凝縮されたようなステージだった。

メンバーがステージからはけると、フロアからはラッコ節と呼ばれる、LACCO TOWERオリジナルのアンコールが沸き起こる。かなり長い時間、勢いが落ちることなくコールは続き、数分後にメンバー再登場。

大介は「声出しOKになったからラッココールが帰ってきたね、ありがとう!」と、ラッコ節への感謝を伝える。

啓示はケイスケの言い回しを真似しながら「最初に『ラッコ』って言った人誰やねん」と、コール発端の功労者をねぎらう場面も(個人的にも、最初に声を出してからずっと叫び続けた、コール発端の子たちに拍手を送りたい)。さらに、ラッココールはもちろん、ケイスケについても「おかえりですよね」と話して、会場から大きな拍手が沸き起こった。また、ボーカル不在のバンドでもライブ出演を受け入れてくれた各主催や会場、対バンと、足を運んだ観客への感謝の気持ちを伝えた。

Lisakoは、開口一番「みなさん、お邪魔しました!」と挨拶。コロナ禍でのライブでストリングスとして参加したのがラッコとの出会いだったが、ケイスケ不在となった際に声がかかり、不安ながらも自分にやれることがあるなら、とすぐ返事をしたという。感極まって涙しながらのMCではあったが、こうして帰ってきたケイスケとステージを共にできたことに感動し、また一緒にプレイできるよう、自身もバイオリンを頑張る、と力強いメッセージを届けていた。

重田は、そんなLisakoについて、LACCO TOWERの一部が増えたと思っていると発言。5人にLisakoも加わった、パワーアップしたLACCO TOWERが観れる日を楽しみにしててほしいと話すと、「俺たちはまだまだ続けていくんで」という嬉しい言葉の後に続けて「サンキューロッキュー。今日は今日しか…」と普段よりクール気味に言うと、観客が「ねえからな!」とレスポンスしてMCを〆た。

ここでいつものお約束、真一飛ばしの流れで大介が「やりますか。以上のメンバーで…」とコメントを挟んで、真一の「お-----ーーーーい!」を引き出す。そのあと何故か真一は今さらの自己紹介をして笑いを取りながらも、激動の日々を思い返しながら、グッときている様子だ。

歌モノバンドから歌が消え、代わりに楽器でメロディを弾いたライブで観客が感動してくれる。これが大きな自信になったという。自分たちが作り上げてきたものが認められたと感じた真一は、最後に「It's a miracle dayでした」と決めてラッコの笑い担当としてその役割を全うした。

大介は、四人囃子のLACCO TOWERになってから出会ったファンもいるかもしれず、あのときにバンドを止める決断をしていたらこんな出会いもなく、素敵な仲間たちとステージに立てることもなかったので、やって良かった思っていると力強く語る。

そして「慣れないMCをやるのも今日が最後です! 僕のマイクをケイスケに返します」と付け加えると、ステージにケイスケが再登場。

「『以上のメンバーで』って言いたかったですけどね」と、真一イジリができなかった悔しさをにじませながら、四人囃子~ feat.Lisakoの輪の中に加わったケイスケ。

登場こそ笑いから入ったが、ケイスケは、活動を止めずにいてくれたメンバーたちへの想いを吐露する。

「俺のせいでバンドが立ち行かなくなってしまって、何を決断するにもお先真っ暗な状況が続いてしまって。そのときに他の4人が、お前が帰ってくるまでやるよと言ってくれて」

「四人囃子を引っ張ってくれたのは大介。MCもできへんのにやることになって、噛みまくりやねん。『細川大介』まで噛むねんから。何年言ってきた名前やねん。そんなやつが引っ張ってくれた」

「12月に歌えなくなってから、いろんなところに、ライブハウスに頭下げてくれたのは啓示」

「Lisakoちゃんを呼ぶとなって、譜面どうするとか、構成やアレンジを考えてくれたのは真一」

「喉が苦しいってなったとき、この病院に行ったらいいと思うと言ってくれたのは重田でした。意外やろ笑」

それぞれが何をしてくれたのかを観客に伝えると、真行寺の「歌えなくなったボーカルは孤独」発言を引き合いに出しながら、自分もそうだったと語る。「でも」、と続けて今日のステージで、袖にいる仲間やメンバー、Lisakoが言ってくれたことを受け止め、孤独じゃないんだと思うことができたと話す。

そして、自分が不在のなかでLACCO TOWERを支え続けたファンへの感謝の気持ちも伝えていた。

さらに「完全復活するのは『I ROCKS23』。そこでは、『ごめんね』じゃなく『おかえり』の4文字で、みんなが『ただいま』の4文字で帰ってこれるように精一杯、あと1ヵ月楽しみにしていきたいと思います!」と続けると、「それでは最後、I ROCKSのテーマでお別れしたいと思います!」と告げ、本日のラストナンバーとなった「星空」を披露した。

《五つの角が生えて空へ飛びついた》の歌詞を歌う際、Lisakoを入れた自分以外の5人を指さすケイスケ。この3ヵ月の彼らの活動に対する思いが表れていたような場面だ。曲後半、今日出演したゲスト陣全員をステージに呼び込んでのパフォーマンスは、まさにI ROCKSの大団円を思わせた。涙で目を腫らしているいわせや、目が赤い内田など、ゲスト陣もそれぞれに感極まっている様子。

最後は会場一体となっての《ララララ~♪》のシンガロングが鳴り響き、『独想演奏会~四人囃子編~』は幕を閉じた。

各ゲスト出演者たち、そしてLisako、四人囃子の名を出し、最後に「100%LACCO TOWERでした!どうもありがとう!」と大きな声で挨拶をしたケイスケ。

「100%LACCO TOWER」という“いつもの5人”は、この一年ほどで当たり前にそこにいる存在ではないんだという現実に直面したわけだが、いよいよ「100%LACCO TOWER」の本格的な活動が始まる。4月7日・8日・9日に伊勢崎で開催される『I ROCKS2023』で、完全復活した松川ケイスケと100%LACCO TOWERをあらためて味わえることが今から楽しみだ。

ピンチをチャンスに変える、というのは口で言うのは簡単だが、それを実現させるのは相当の苦労を伴うもの。LACCO TOWERは、様々な理由で開催危機に直面しながらも『I ROCKS』を続けてきた。コロナ禍では積極的にオンライン配信ライブに挑戦し、リモートライブやホールを借りてのライブも実施。大介のジストニア発症でも、レフティギタリスト宣言で新たな武器を手に入れるという信じられない逆転劇を、今まさにリアルタイムで見せつけてくれている。

そして今日、ボーカリストが歌えなくなるというピンチに陥ってなお、ボーカルレスのまま4人+バイオリン編成でライブを続けるという判断を下した彼ら。その結果、盟友たちとの絆がより強固なもとなり、かつバンドメンバー自身の底力アップへとつながったのではないだろうか。

私が大好きなとあるベテランバンドの歌に《どちらにしようか迷ったら どっちがROCKだ? コレで決めるゼ!》という歌詞がある。LACCO TOWERはこの歌詞を体現するようなバンドだとあらためて感じたし、こういう決断を支え続けたチーム・I ROCKSも素晴らしい存在だと思う。

何度目かの雌伏の時を経て、また再び飛躍の時代へ。LACCO TOWERの2023年の活躍を楽しみにしたい。

セットリスト
01.林檎
02.檸檬(feat. DJガッツいわせwithスベリー・マーキュリー)
03.夜明前(feat. DJガッツいわせwithスベリー・マーキュリー)
04.ドラマチック(feat. 堀越颯太)
05.後夜(feat. 堀越颯太)
06.いろはにほへと(feat. 内田直孝)
07.遥(feat. 内田直孝)
08.花弁
09.柘榴(feat. 河内健吾)
10.セブンティーン(feat. 河内健吾)
11.メメントモリ(feat. 寺口宣明)
12.薄紅(feat. 寺口宣明)
13.Flyers(feat. 真行寺貴秋)
14.花束(feat. 真行寺貴秋)
15.証明(feat. 松川ケイスケ)
16.最果
EN.
17.星空(100%LACCO TOWER feat. Lisako)

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