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【ライブレポート】2021/7/9 KEMURI TOUR 2020 "SHUKUSAI"@HEAVEN'S ROCK さいたま新都心

ネタバレを含んでいるのでツアー参加前の方はご留意ください。

KEMURIのツアー「SHUKUSAI」に行ってきた。KEMURIのワンマンを観るのは2017年の「FREEDOMOSH」以来。※そもそも対バンが多くてワンマンは貴重。ちなみにHEAVEN'S ROCK さいたま新都心に来るのは、同じくKEMURIのツアー「Ko-Ou-Doku-Mai」以来、3年ぶりだ。

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今回のツアーはKEMURI初期のアルバム『LITTLE PLAYMATE』『77DAYS』に加え最新作『SOLIDARITY』からセレクトした曲たちを披露するというもの。コロナ禍ということもあり、開演時間を繰り上げて、ライブ時間も90分弱とコンパクトサイズでの開催。

入場時、スマチケの不具合でちょっとバタついたものの、その時対応してくれたスタッフさんがとても丁寧で、トラブルだったにも関わらず、気持ち的にはむしろアガってしまう結果に。あの時のスタッフさん、ありがとうございました。

物販ではKEMURIのTシャツ等に加えて、津田さんの友人であるAkiさんという方が作成したファンジンも販売している。実は今日のライブ、KEMURIのステージを観る以外のもうひとつの目的が、このファンジンを購入することだった。

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このファンジン「Save Star's Life」の売上は、先日の伊豆山土砂災害で被災されたAkiさんの友人家族のための支援に充てられるとのこと。この災害に対する募金や支援の窓口もたくさん設けられていると思うが、自分にとって親しみを感じる存在のひとつにその窓口がある、というのはとてもありがたい。

1冊たった500円。津田さん含む全28アーティストに関する、おススメのアルバムや影響を受けた音楽等についてのインタビューが掲載されている。おそらく今回の残りのツアーでも各会場にて販売されると思うので、余裕のある方はぜひチェックしてみてほしい。(募金箱も設置)

※7/10追記
なんと、このファンジンは昨夜の時点でデッドストック含め完売したとのこと

ということで入場直後にこのファンジンをゲットしてまず第1の目的を果たし、フロアへと進む。ドリンク交換は迷うことなくペットボトルの水。足元にはディスタンスをキープした目印が設置され、各自このポイントでスタンバイ。

モッシュもダイブも当然禁止、の割にほとんどの人がTシャツ&スニーカーという、動きやすい身軽な格好で臨んでいるのがなんだか嬉しい。自分もKEMURI Tシャツの上に着ていたボタンシャツを脱いで準備OK。

まん延防止等重点措置の関係で終了時間が明確に決まっているため、18時30分の開演時間通りに場内暗転。NOFXの「All Outta Angst」が流れてメンバーが続々とステージに現れる。最後にふみおさんが登場し、「Anchor the Mind!」と叫んでライブスタート!

ホーン隊が生み出す陽のサウンドと軽快なスカのリズムが、一瞬でヘブンズロックをHAPPYな空気で満たしていく。

「ANCHOR」「Blue Moon」とアルバム『SOLIDARITY』からの曲で“今”のKEMURIを披露。代表曲をいくつも持つキャリア25年、いや26年になる大ベテランバンドが、最新曲でライブの幕を開けるってめちゃくちゃカッコいいじゃないか。まずは有名曲で観客の心を温めてから…なんて守りの姿勢ではなく新曲たちで一気に駆け上がろうとするギラギラしたおじさんたちにワクワクが止まらない。

「拍手ありがとう!」「伝わる!」

声が出せない観客たちの、思いを込めた拍手がふみおさんに届く。

「New Generation」では、普段ならめちゃくちゃ激しくなるフロアも今日は皆、自分のスペースをしっかり守りながら、精一杯の拳を挙げて前のめりでライブに参加。SKA好き、KEMURI好きはきっと多少の逆境にはへこたれない。跳ねる者、その場で小さくスカダンする者など、制約ある中でそれぞれの遊び方を見つけてエンジョイしている。

今日の公演、そして明日も明後日も来週の浜松公演までもソールドアウトであることを明かすふみおさんは、クソみたいなことも多いがハッピーなこともある、とソールドアウトに上機嫌。

そしてクソみたいなことといえば…と続けて、肌の色や宗教で差別するなんておかしい、というような意味を込めた歌だという紹介から「Heart Beat」を披露。

その後も『SOLIDARITY』収録曲と「Ato-Ichinen」などの代表曲を織り交ぜながら、確実にフロアの熱量を上げていく。

いつもなら観客の声がさく裂する場面でも、皆黙って静かに、でも心の中では叫びながらライブを満喫している。直接言葉で聞くことはなくとも、隣にいる人の横顔や前にいる人の背中から伝わってくるのだ。

「今日来てくれたみんなに贈ります」というふみおさんの言葉とともに演奏された「I Love You」によってフロアは愛で満たされた。KEMURI解散直前に出演したフジテレビ系「僕らの音楽」でも披露された名曲。あの夜の切ない感情は今もまだ胸の中にある。

激しい曲ばかりがKEMURIの魅力ではない。「Contemplation」のようなボーカルレスのミディアムテンポなインスト曲で会場もゆったり身体と心を揺らす。メンバー個々の確かな演奏技術とグルーヴを生む呼吸のなせる技。ふみおさんもどこか誇らしげだ。

コロナ禍で夜中に一人、部屋の外を見た時に感じたことを曲にしたという「My Ghost Town」。暴力はダメ、という紹介とともに披露した、ユニークな合いの手も楽しい「Patience」。そして《当たり前だった景色がどこにも見当たらぬ 新しい世界を》と歌う「KIBOU」。

個性豊かな最新アルバム収録曲たちが次々と投下され、KEMURIとしての厚みがさらに増していく。一体どこにそんなエネルギーがあったんだと驚くほど、再結成後は精力的に新曲を生み出していくその姿がカッコよすぎる。

音源を聴くだけでは完成しない。やはりKEMURIの音楽は生の音を体で受け止めて初めて本当の意味で「誕生」するんだと思わせてくれるようなライブ。

音楽、そしてライブもまた、人と人とのコミュニケーションのひとつ。そんな思いを強くする今日のステージ。ふみおさんは、フロアにいる観客に声をかけていく。
【いいね!】と書かれたタオルを掲げたファンに。
かなり昔のKEMURI Tシャツを着たファンに。

さらに、先述した伊豆山土砂災害に関する支援について触れたり、津田さん率いるTHE REDEMPTIONとTHE INEVITABLESによるスプリットの7インチを紹介したり(途中で津田さんに譲ったが)。音楽や言葉でメンバーとファンを繋ぐ。心なしか、以前のライブよりも言葉数は多かった印象。なかなかライブができない状況で、直接伝えたかったことがたくさんあったのかもしれない。

ライブ後半には初期の名曲「Prayer」「Along the longest way...」を投入。ボタンシャツを脱いでおいてよかったと思うくらい、体がグンと熱を帯び、ちょっと懐かしいあのライブハウスの感覚がよみがえってくる。

本編ラストには「小さな島だから団結するしかない」という言葉とともに「SOLIDARITY」を演奏する。

おそらくアルバム『SOLIDARITY』収録曲はすべて披露したはず。再発見した曲も多く、あらためてこのアルバムをじっくりと聴き直したくなった。音源を聴くとライブで味わいたくなり、ライブで体感するともう一度音源に触れたくなる。この循環を作り出すのがいい曲、いいライブの証といえるのかもしれない。

時間に限りがあるので、アンコールはシンプルに1曲。個人的“KEMURI四大傑作イントロ曲”のひとつ、「白いばら」でKEMURI TOUR 2020 "SHUKUSAI"のHEAVEN'S ROCK さいたま新都心公演は幕を閉じた。

ライブ中、ゴキゲンだったせいか珍しくエア&口パクギターを披露したふみおさん。今日も数回飛び出した“ふみおジャンプ”はとても美しかった。「サバイブすること」「とことん楽しむこと」というメッセージを伝えてくれたふみおさんの思い、確かに受け取った。

ピック弾き、指弾きを使い分け、熟練のテクでSKA特有の跳ねるリズムを生み出す津田さんのベースは今日も輝いていた。

真っ直ぐ力強いまなざしで集中力たっぷりにドラミングする庄至さん、まさしく気合十分。

「白いばら」での美しい須賀さんのトロンボーンは必聴。

キャップが脱げるほどアグレッシブなギタープレイを披露したのは田中‘T’幸彦さん。

POTSHOTでも活躍したミッチーさんは、ふみおさんとぶつかるハプニングにも動じない、頼りになるトランぺッター。

ステージ上でスカダンしたり1回転ジャンプしたり、コーラスも頑張る、ついでにエアでトロンボーンも吹いちゃう、常に楽しそうな姿がまぶしいサックスのコバケンさん。

ボーカルのふみおさん以外にもキラ星のごとく揃った個性派ミュージシャンたちが作り上げるKEMURIのステージは今日も抜群に最高だった。

まだまだ続くツアー、ライブ。コロナによる影響でこの先どうなるか不透明な部分も多いが、どうか無事に全日程、開催されることを祈る。

そしてどの会場もたくさんの笑顔とスカダンスで溢れますように。


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