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【ライブレポート】2022/7/7 BUZZ THE BEARS 20th Anniversary ONE MAN TOUR 2022~WE WILL ALWAYS~ at 高田馬場Club Phase

BUZZ THE BEARSの20周年記念ツアー、初日となる高田馬場Club Phase公演に行ってきた。若干の当日券は出たが、ほどよく埋まったフロア。ダイブもモッシュもまだNG、そして場内アナウンスで明確にマスク着用必須、声出しNGと通達あり。

コロナ禍でのごく一部のライブでは、このあたりの緩みが生まれてしまっていた映像も見かけたが、今日はこうしたアナウンスに加えオーディエンスの意識がしっかりしていたからか、ライブハウスが求める基準を満たしていたように思う。

さて、肝心のライブだが、今回ツアー初日ということであまりネタバレになってしまう内容は伏せて、感じたことや一部MCなど拾いつつ振り返りたい。

いつものSEはなく、客入れBGMが流れるなか、すーっとステージに立った3人はそのままライブへと突入する。1曲目からグッとくる選曲であっという間にフロアの心を掴むと、実質のオープニングナンバーともいえるような、ライブの幕開けにふさわしい曲で一気に20周年記念ワンマンは加速していく。

もともと20周年に関連して何かをやるつもりはなかったと語る越智(VO/Gt)だが、今日7月7日だけはライブをやりたかったという。それは、20年前の7月7日が、BUZZ THE BEARSにとっての初ライブだったからだ。

『おいしいです』(?)というイベントに呼ばれて奈良のライブハウスで初ライブだったそうだが、他のバンドがMCでイベント名を連呼するなか、自分は意地でもこのタイトルは言わん!と一切口にしなかった、そんな懐かしい思い出話を語る。

さらにはノルマを払ってライブに出ていた頃、ライブ出演をかけたオーディションにも出演し、池田(Ba)がまったく別の曲のベースを弾いてそのまま曲終わりまでやり切ってしまうというハプニング(?)に見舞われながらも無事合格したというエピソードも。

20周年ということでMCはそういった過去の話が盛りだくさん。東京での初ライブはここ、Club Phaseで、3万円払って、自分たちを知っている人など誰もない状況でライブをして、それでも「東京すげえ!」と興奮したという、BUZZ×Club Phase鉄板トークも。

また、冒頭5曲披露したところで、イベントや対バンでは30分~40分で10曲程度のセットリストになってしまうが「今日はあと23曲あるんで」と焚きつけてフロアを大いに沸かす越智。

セットリストはライブでも人気の曲を中心に新旧様々な楽曲を投入。20年の歴史を振り返るだけでなく、最新リリース曲も入れ込み、アップデートしたBUZZ THE BEARSの姿も堂々見せつける。

ライブハウスで、声は出せずとも全身で楽しむフロアに越智も嬉しそうだ。池田は常に笑顔でライブが楽しくて仕方ないといった様子。桑原(Dr)はそんなふたりを見守りながら、あまり表情を崩さずクールにドラムをプレイし、ライブの根幹を支えていく。

キャリア20年について、もっと(演奏が)上手い人たちのことだと思っていたと、自虐を交え笑いながら話す越智と池田。決して超絶テクニックが売りのバンドではないが、それでも彼らにしか出せない音やグルーヴ、そして何よりライブハウスを巻き込むエネルギーがある。それは20年という積み上げてきた時間があるからこそでもあり、あるいはそういうパワーがあったから20年、ライブハウスシーンでサバイブしてきたとも言えるかもしれない。

リクエストに応えたという3曲(ツアーでの各ライブハウスそれぞれで違う3曲かもしれない)をプレイするという、ちょっとしたサプライズ要素も入れ込みながら1曲1曲、演奏するごとにライブハウスの熱を上げていく3人。

フロアの表情が見たいから照明をMAX明るくしてほしいという越智のリクエストにClub Phaseのスタッフに即座に反応するなど、メンバーとスタッフの息もピッタリだ。

再結成や活動再開など、活動していなかったアーティストが動き出すとそこに注目が集まり、ずっと続けているアーティストの存在は軽んじられてしまう。

そのことに対するモヤモヤも抱えながら…それでも。コロナ禍でもずっとライブハウスのステージに立ち続けたBUZZは、これからもこの場所で音を鳴らし続けるんだと力強いメッセージを、その言葉とそのアクトで発信していた。

その姿が頼もしくもあり、一方で少しだけ寂しい気も…。今から8年前、『“L”TOUR 2014 -FINAL SERIES-』ツアーでのO-WEST公演だったと記憶しているが、あのとき越智はMCで、「いつか武道館でやりたい」と宣言していた。当時の動員や勢いから、どこまで実現性があったかは何とも言えないが、そうなってほしいと願ったし、応援もしていた。

今のBUZZは、大きな会場でライブをするという道を捨て、ライブハウス(だけ)で生きていくことを選んだんだな、という寂しさだ。

もちろんライブハウスを主戦場に生きること自体に、寂しさなど1mmも感じない。むしろ嬉しいとすら思う。ただ、一度は武道館を目指したバンドがその目標に蓋をしてしまった、ということの寂しさを感じたのだと思う。腹をくくったのか、割り切ったのか。でもあれから8年を経てたどり着いた結論なのかな、と受け入れるつもりでいた。

しかし越智はライブ終盤に、嬉しい言葉を発してくれた。

いつか武道館で、大阪城ホールでライブをやりたい。源氏の舞台に立ちたい、と。特に源氏の舞台、と言った際にはフロアから大きな拍手が沸き起こっていた。今、ロックバンドにとってはもしかしたら武道館と同じくらい、京都大作戦の源氏の舞台は大きな存在となっているのかもしれない。

自分たちも諦めていないから、お前たちも「諦めるな」とフロアへ言葉を投げかける。40歳の夢見るバンドマンがここにいる。

Club Phaseに貰った時間は90分。「アンコールはやりません!」との言葉通り本編全28曲を演奏し、ライブハウスへの愛、そして会場に足を運んだ観客への感謝をたっぷり伝えたBUZZ THE BEARS。「Club Phase、ツアー行ってきます!」と叫んだ越智。ツアーへと旅立つバンドを送り出す、これぞ初日の醍醐味だ。

ライブハウスがよく似合うし、あのステージでこそ光る彼らだと思う。でも自ら夢見た目標を掲げて、そこに向かっていく姿もまたカッコいいに違いない。いつか大きなステージに立つ3人を思い描きながら、日々ライブハウスで暴れまくるBUZZ THE BEARSを観に、またライブハウスに足を運ぼうと思う。

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