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いい年こいてラージャン倒して大喜びするのはそれほどいけないことか

「いい年こいて何言ってんの」

これは最近友人に言われた言葉だ。僕がウキウキと伝えたことが余りにもくだらない内容だったので、こう返された。

僕は相当ウキウキとしていただけに、この言葉にかなりのショックを受けた。

そして怒りの余り我を忘れ、怒髪天を突き、その怒髪が金色に変化し、シュインシュインとオーラをほとばしらせながら「オレのことかー!!」と怒号を放ちそうになったが、言うまでもなく自分のことだと気づいてふと冷静になり、「アッハイ」と返さざるを得ないという、すこぶる酷い目に会った。


「いい年こいて」とはなんだろうか。ウキウキと話す内容と、ウキウキする年齢は関係ない。これは強く主張したい。


突然だが僕はゲームが好きだ。この血で血を洗う殺伐としたコンクリートジャングルTOKYOに生きる僕にとって、ゲームだけが心のオアシス。もしゲームが無かったら、僕はとうの昔に髪を緑かピンクに染めてクラブで踊りながらカクテルを飲み、イェーとかフーとか雄叫びを上げるような生活をしてたに違いない。

そんな僕は、モンスターハンターライズという人類の至宝ともいうべきゲームをプレイしていた。


そのゲームにはラージャンというモンスターがいる。(ちなみに今回はずっとモンハンの話になるので分からない方は飛ばしていただいて結構です。)


で、そのラージャンというモンスターは、ひと言で特徴を伝えるなら、エゲツないゴリラである。まず見た目がエゲツない。

近くで見たら怒れるゴリラ。遠目に見たら不満げに徘徊するゴリラ。この情報だけでも恐怖を感じるというのに、おまけにドでかい角まで生えている。まさに常軌を逸したゴリラモンスターだ。


そしてさらに恐怖すべきはその動きだ。

普通のゴリラの挙動は力強くとも俊敏なものではない。擬音にするなら「のそり、のそり」というイメージだ。

しかしラージャンの挙動は「シュババ、ドゴーン」である。もう音だけで怖い。とにかくものすごい速さで動き回る。

動き回ったあげく殴りつけてくる。エゲつなくゴッツいゴリラが、異様なまでの俊敏さで迫ってくるのだ。


両の腕が最強にマッチョ化しており、硬化した筋肉は斧の一撃をも弾き返す。

とどめは口からビームを吐く。もう全てがおかしい。常軌を逸しまくりだ。逸すること山のごとし。


想像してみて欲しい。あなたが動物園に行ったとする。

ある檻を覗くと、そこには角をはやした巨大なゴリラが、リスの如きスピードで縦横無尽に動き回っている。

そのゴリラはあなたを見つけると、檻の鉄格子を力まかせにこじ開け、岩を投げつけ、口からビームを放ってくる。恐怖しかない。どうなっているんだこの動物園は。


あなたがサイヤ人の王子ベジータだったら「フン…面白くなってきやがった」と汗を流しつつニヤリとするところだろう。

しかし一般人はそうもいかない。テレビ放送時のクリリンや悟飯のように「あ…あ…」とガクブルしながらいたずらに尺を稼ぐことになるはずだ。


とまあ、モンスターハンターにはこんなヤバめのモンスターがいるわけだ。

このラージャンはモンスターハンターには過去作から登場していて、僕はずっとソロで倒すことができなかった。ゲーム好きを自称しているにも関わらずだ。

僕は悔しくて完全体フリーザを前にしたベジータのように、ただ涙をポロポロこぼす日々を過ごしていた。


しかしついに、ラージャンをソロで討伐できたのだ。

誰の力も借りず、ひとりで恐怖のマッチョゴリラとの闘いを制したのだ。ラージャンが断末魔を上げた瞬間、思わずソファーから立ち上がり本気のガッツポーズを決めた。

小さめの歓声も上げた。何ならちょっとジャンプもしたし、テーブルのお茶もちょっとこぼれた。


その溢れんばかりの歓喜に任せて友人にひとこと、

「ラージャン倒せたよ(^^)v」

と浮かれた顔文字つきでLINEを送ったのだ。


しかし返ってきたのは「いい年こいて何言ってんの」という一言。

無情にも鼻で笑われ呆れられたのだ。

いや、文字だけでは鼻で笑われたかどうか、正確なところはわからない。しかし既読がついてから返信までの時間、そして顔文字すらつけない内容、そこに「フッ」と呆れた雰囲気が如実に表れていた。

僕がそう思い込んでいるだけの可能性は当然否めないが、そこはあえて無視する。


そして僕はあまりのショックに憤慨。憤&慨である。


奴の自宅に押し掛け、「いい年こいてゲームで浮かれたのがイカンのか。大人っぽくないのか。アレか、いい年だったら薄暗いバーで葉巻をくゆらせながらブランデーを窘めということか。『強い度数のブランデー、飲めたよ!(^◇^)』という内容だったら良かったというのか!」 と早口でまくしたて、リングフィットをグネグネさせながらにじり寄ってやろうか。


しかし僕が返した言葉は「アッハイ」だ。相手を尊重しこちらから折れたかたちになったので、結果的には僕の方が大人度では勝ったことになる。ラージャンの角も折るし、自らも折れるのだ。フフン。


ともあれ僕が言いたいのは、人はいくつになってもはしゃいで良いし、何に対してはしゃいでも良いということだ。

年齢にふさわしい趣味なんてものは存在しないし、年齢にふさわしい感情表現なんてものも存在しないと思う。

年齢を重ねるごとに喜びを押さえないといけないとしたら、それはあまりにも寂しい。


ラージャンだって、あの巨体から察するに相当の年齢のはずだ。にも関わらず、落ち着きが全くない。

ラージャンが地面をガンガン殴りつけて口からビームを吐く姿に「いい年こいて何やってんの」と言うのはナンセンスというものだ。

人もラージャンも同じだ。『年相応の態度』などというものは存在しないのだ。


もし友人が地面をガンガン殴りつけて口からビームを吐いていたら、僕は「いい年こいて何やってんの」とは言わない。きっと「ウザいぞ」と言うんじゃないだろうか。


あ、友人も単にウザいと言いたかったのかも知れない。だったらその通りだと思う。

ゴメンよ。ブランデー飲んで寝ます(^^♪


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