「マスコット・オブ・魔法少女」第1話

【あらすじ】
主人公の佐久間春秋は、魔法少女と悪魔の戦いに巻き込まれて命を落とし、マスコットの謎生物として新たな命を与えられた。
大活躍した魔法少女とそのマスコットには、願いを叶える権利が与えられる――春秋はこれを使って人間に戻るべくパートナーを探すも、少女を戦いに巻き込む決意ができずに失敗続き。
そんなとき、事故で両親を失った女子中学生の真白が、悪魔に「死ねば両親に遭わせてやる」唆されて自殺しようとする瞬間を目撃。
春秋は真白を死なせないために契約を結び、悪魔を撃退する。
人間に戻りたい春秋。両親を生き返らせたい真白。
譲れない願いのための契約した一匹と一人は、やがて唯一無二のパートナーになっていく。

【シーン1:夜の都会】
最初の1ページは、夜の街のイメージ映像を背景に、導入のナレーションを入れる。

ナレーション
「近頃、この街に奇妙な噂が流れている」
「『夜の街には悪魔が現れて、契約すれば願いが叶う』」
「『だけど、悪魔の企みはうまくいかない。なぜなら――』」

ページの最後に、夜空を背にビルからビルへ飛び移る魔法少女のシルエットを描写する。

ナレーション
「『魔法少女が悪魔を倒すから』」

【シーン2:主人公のアルバイト先のバックヤード → 裏路地】
ナレーション「東京都千代田区秋葉原」

時刻は夜。メイドカフェのバックヤードで、休憩中のメイド服の従業員が噂話に興じている。
主人公の佐久間春秋(さくまはるあき)はウェイター風の制服の裏方男性スタッフで、年齢的には大学生くらいのフリーター。

メイドA「なんか凄いよね。悪魔を倒すのが魔法少女って」
メイドB「分かるわー。最初に聞いたとき、そこは天使じゃないんかい! って突っ込んじゃった」
メイドA「魔法少女になるのと悪魔と契約するの、チカならどっちがいい?」
メイドB「いやいや、もう魔法少女って歳じゃないし。悪魔に優しい彼氏でもお願いしよっかな」

一方、春秋はまだ仕事中で、ゴミを捨てるためにバックヤードを通り抜けようとしていたところ。
噂に興じるメイド達に冷めた視線を向けつつ、店の裏手に場面移動。
店の裏のゴミ置き場にゴミを捨てながら、春秋は心の声で色々な不満を漏らす。

春秋
(くだらねぇ噂。魔法少女とかアニメかよ)
(悪魔が本当にいるなら、さっさと出てきてもらいたいもんだな)
(一億円くらい願っとけば、こんなバイト暮らしからはオサラバできるだろ)

そのとき突然、頭上で何かがぶつかり合う大きな音がした。

春秋「何だ?」

咄嗟に顔を上げる春秋。
この描写を見開きページの左下に配置して、次のページへの引きにする。

春秋の頭上、裏路地の左右にそびえる雑居ビルの谷間を戦場に、魔法少女と異形の怪物が空中戦を繰り広げている。
魔法少女の方はフリルスカートにハイソックスの典型的な魔法少女スタイル。
怪物の方は両腕が異常に巨大な狼男。まるでホラーゲームのクリーチャーのようなグロテスクな姿。
魔法少女は空中に浮かんでバリアのようなものを展開し、怪物はビルの壁面を蹴って三次元的に動き回って、魔法少女に大きな腕で攻撃を加えている。

この魔法少女はメインヒロインではなくサブキャラクターなので、ビジュアルの描写はあまり詳細にはしない(読者にメインヒロインだと誤解させないため)

春秋「……っ!?」

愕然とする春秋を他所に、魔法少女と異形の怪物は空中戦を続けながら、裏路地の更に奥へ移動していく。
取り残された春秋も、何かに突き動かされるように一人と一体の後を追いかける。

春秋
「魔法少女と……悪魔……」
「……まさか、本物!?」

春秋が裏路地の突き当りに辿り着いた瞬間、魔法少女が異形の怪物に強烈な一撃を浴びせられ、吹き飛ばされてビルの壁に激突する。
魔法少女にトドメを刺そうとする悪魔。

春秋「やめろっ!」

異形の怪物は咄嗟の叫びを聞き逃さず、ぐるりと振り返って醜い顔を春秋に向ける。
このときの怪物の顔は、なんとなく笑っているようにも見える形。

悪魔「モウ一匹」

怪物は春秋が後ずさるよりも先に飛びかかり、巨大な腕を振り上げ、春秋を叩き潰す。
春秋が確実に圧死したと分かる描写の後、暗転したコマを挟んで次のシーンへ。

【シーン3:裏路地】
春秋が少しずつ目を開けていくという形で、段階的に暗転を解除していく。
ここからしばらくは春秋の主観視点。地面に倒れ伏している高さの視点からスタート。
春秋自身の姿は体の一部であっても絶対にコマに入れない。

謎の声「ああ、よかった。どうやら上手くいったみたいね」
春秋「だ、誰か……いる……のか……?」

二足歩行のデフォルメされたぬいぐるみのような何かが、春秋の視界の外から視界の中にテクテクと歩いてくる。
大きさは『魔法少女のマスコット』と聞いて連想する程度のサイズ感。
黒猫的なデザインで、口調も含めて全体的に女性的な印象。

謎の声改め謎の黒猫「一時はどうなることかと思ったけど、これであの子に顔向けできるわ」
春秋「ぬいぐるみが……喋ってる? はは……夢だな、こりゃ。こんなのが走馬灯かよ……」
謎の黒猫「今はあなたも同じよ。ほら、鏡どうぞ」

謎の声の主の黒猫が、丸い鏡を抱えて春秋の前に置く。
鏡に映し出された春秋の姿は、小動物的なマスコットになっていた。
実在の動物に喩えるなら、フェレットにキツネの耳と尻尾を足し合わせたような動物。
体色は白、カラーなら白い毛皮に青のアクセントが入っているイメージ。
あくまで魔法少女のマスコットなので、本物の動物よりもぬいぐるみに近い外見。

春秋「ななな……なんだこりゃあーっ!? おおお、俺どうなって……?」
謎の黒猫「落ち着きなさい。一から説明してあげるから。あなたがそんな体になった理由も含めてね」

謎の黒猫は鏡を脇に置き、混乱する春秋(マスコット状態)を宥める。

謎の黒猫「魔法少女と悪魔、噂くらいなら聞いたことあるでしょう?」
春秋「う、噂だけなら……本当にいたのか……?」
謎の黒猫
「概ね噂通りの認識でいいわ。夜な夜な悪魔を倒す魔法少女とそのパートナーってね」
「だけど、今回は不覚を取っちゃって。危うくあの子が……私の契約相手がやられちゃうところだったんだけど、間一髪あなたのお陰で助かったってわけ。まずはお礼を言わせてちょうだい」
春秋「俺の? いや、俺は何も……」
謎の黒猫
「あの悪魔、すっかりあなたに気を取られてたでしょ。その隙に何とか逆転したのよ」
「恩人を見捨てるわけにもいかないから、私と相棒で何とか蘇生させようとしたんだけどね」
「これがまぁ見事にぺっちゃんこ。あんまりにも損壊が酷いものだから、手持ちのリソースじゃ元通りの蘇生はできなかったの」

春秋は潰された瞬間を思い返し、げえっと不快そうな表情を浮かべる。

謎の黒猫「そこで、あたしと同じ魔法少女のマスコットに転生させたってわけ。見事なものでしょう?」
春秋「なるほど……って、いやいや!」

一瞬納得しそうになる春秋だったが、すぐにこれでは駄目だと気付いて首を横に振る。

春秋「こんな体で生き返ってどうすんだよ!」
謎の黒猫「そこは大丈夫。ちゃんと手段はあるわ」
春秋「ほ、ほんとか!?」
謎の黒猫
「もちろん。その前に、今更だけど自己紹介といきましょうか」
「お互いに呼び名が分からないと不便でしょう? 私はグレイ。あなたは?」
春秋「……佐久間、春秋」
謎の黒猫「いい名前ね。でも、今後はマスコットらしく『ハル』とでも名乗りなさい」

春秋(ハル)は文句を言いたげな顔をしたが、それをぐっと飲み込んで、別のことを口にした。

ハル「ところで、あの魔法少女……あんたのパートナー、怪我とかしてないのか?」
グレイ「ええ、お陰様で。夜も遅いから先に帰らせたけどね」
ハル「そっか……ならよかった」

ホッとした様子のハル。
それを見たグレイは、何やらハルのことを気に入ったように微笑んだ。

【シーン4:市街地 建物の上】
時刻は日中。フェレットに似た体型の春秋改めハルが、四本脚で建物から建物へ身軽に飛び移っていく。
その描写を挟んでから、前シーンの後にグレイから聞かされた内容を回想。

グレイ(回想)
「悪魔が消滅すると、その位格に応じた量の残骸……『カケラ』が残される」
「これを回収しておくのもマスコットの仕事のうちよ」

グレイの手元(前足)に宝石の破片のようなものが浮かぶ。

グレイ(回想)
「悪魔討伐の見返りとして、魔法少女はカケラと引き換えに相応の願いを叶えられる」
「元人間のあなたに分かりやすく喩えるなら、アプリにポイントを貯めて景品と交換するイメージでいいわ」
「そして、マスコットにも見返りがある」
「魔法少女はカケラを消費して願いを叶え、マスコットは『これまでに得たカケラの総量』に応じて、願いを叶える権利を与えられる」
「完全な蘇生にはかなりのカケラが必要になるけど、確実に蘇生できることだけは保証するわ」

回想終了。ビルの屋上を走るハルに再びフォーカス。

ハル
(魔法少女と契約して、悪魔を倒し続ければ人間に戻れる……現実離れしすぎて頭が痛いけど、これに賭けるしかないんだな)
(探すなら学校の近く……ここからだと、西に行った方が学校多いイメージがあるな……ええい、悩んでる暇なんかないっての!)

ここから丸1ページ分、ハルが色々な場所から色々な少女を観察する様子を、セリフなしのダイジェストで描写する。

時間経過描写を挟んで場面転換。イメージとしては文京区の千代田区寄り。
街の片隅でハルが頭を抱えて転げ回っている。

ハル
(全っ然ダメだ! 声すら掛けられねぇ!)
(悪魔との戦いってアレだろ! 昨日のアレみたいな!)
(ただの女の子にあんなことさせるとか、マスコットの倫理観どうなってんだ!)
(いくら魔法少女にもメリットがあるっていってもなぁ……!)

ハルは一瞬諦めかけるが、首を振って気をしっかり保とうとする。

ハル(ええい! 契約できなきゃ一生このままなんだ! 覚悟決めねぇと……!)

【シーン5:夜の街】
前のシーンから引き続き、ハルが屋上から屋上へ飛び移りながら、夜の街を移動する。
ふと何かに気付いて足を止め、今いるビルよりも高い隣のマンションの屋上に目を向ける。

ハル「何だ……?」

フェンスの外に、中学生くらいの少女が立っている。
長めの黒髪に制服姿、絶望で心が折れた陰鬱な表情。

その少女の背後に、死神のような姿の悪魔が浮かんでいる。
黒いボロボロのマントの中から骸骨の腕と顔が除き、脚は見えない。

悪魔「契約ダ。会ワセテヤル。サァ、早ク」

悪魔がささやきかけると、少女はふらりと体を傾け、屋上から飛び降りてしまう。

ハル「……っ! ヤベェ!」

少女を追ってビルから飛び降りるハル。虚ろな表情のまま頭から落ちていく少女。
ハルが空中でどうにか少女に追いつくと、眩い光が球状に二人を包み込み、落下も空中で停止する。

悪魔「!!」

光の中。落下中の逆さまの状態で浮かぶ少女に、ハルが焦りまくりながら呼びかける。

ハル
「ま、間に合ったぁ……!」
「おい、お前! 何やってんだ! 死ぬとこだったぞ!」

少女は小動物(ハル)が人間の言葉を喋っていることに驚く様子もなく、抜け殻のように虚ろな目で呼びかけに答えた。

少女
「契約なの。死んだら、願いを叶えてもらえるから」
「お願いだから、邪魔しないで。お願いだから、このまま死なせて」
ハル「……っ!」

再びの回想。グレイとの会話のフラッシュバック。

グレイ(回想)
「悪魔にとって、人間の願いを叶えるのは『撒き餌』に過ぎない」
「契約を結んだ人間の殆どは、知らず知らずのうちに悪魔の意のままに操られ、最終的には破滅を迎える。利益だけを得られるのは例外中の例外ね」
「特に危ないのは、心が弱りきった人間。そして何よりも――」

回想終了。回想のグレイの言葉の続きを、現実のハルが苦々しく口にする。

ハル「――命と引き換えにしても、叶えたい願いがある。そうなんだな?」
ハル「だったら、悪魔なんかとは手を切れ! どんな願いかは知らねぇけど、俺が叶えさせてやる! だから! 俺と契約して、魔法少女になってくれ!」

ハルの必死の呼びかけを受けて、少女の目に光が戻る。

場面転換。二人を包み込んだ光球の外からの描写に移行。
急激に輝きを増す光球。死神型の悪魔も異常を察し、マンションの屋上から光球めがけて急降下。

悪魔「横取リカァ!」

すれ違いざまに大鎌で光球を真っ二つにする。
(急降下の勢いで、悪魔の高度は両断された光球よりも下になる)
弾け飛ぶ光球。その中から、魔法少女に変身した少女が姿を現す。
衣装はシンプルで白基調。髪の色も白く変わっている。武器や道具は持っていない(まだ完全な変身ではないため白紙の状態)
メインヒロインの契約完了と初変身なので、大きなコマで全身を描写するなど、可能な限りインパクトを持たせる。
ただし、ここではあえて変身過程のシーンを描写しない。
少女の表情は決意と活力に満ちていて、肩にはハルが乗っている。

ハル「契約完了!」

死神型の悪魔が振り返り、大鎌を構えて急上昇。

ハル「やり方は分かるな?」
少女「うん、頭に浮かんでくる!」

少女は魔力を帯びた左腕で大鎌を受け流し、それ以上の魔力を込めた右腕を振りかざす。

少女「はああああっ!」

右拳が悪魔の顔(骸骨)を砕き、流し込まれた魔力が悪魔の全身を駆け巡り、その体を粉々に吹き飛ばす。
悪魔の消滅と同時に発生したカケラに、ハルが身軽に飛びつき、体に溶け込ませるようにして回収。
少女は夜のマンションの前に着地し、魔法少女の装束に包まれた両手を呆然と見下ろした。

少女「魔法少女……噂は本当だったんだ……」
ハル「この調子で悪魔を倒していけば、必ず願いを叶えられる。命を捨てたりしなくてもいいんだ」

ハルはフェレットに似た体を丸めて少女の手の上に乗り、申し訳無さそうに顔を見上げる。

ハル
「その、だな……あんな押し売りしといてアレだけど、今なら考え直せるぞ」
「悪魔との戦いは命がけだ。願いと引き換えに死ぬ必要はなくても、負けて死ぬってことは充分ありうる。もちろん、そうならないようにサポートはするけど……」
少女「やめないから。絶対に」
ハル「……そっか、分かった。改めてよろしくな、相棒」

【シーン6:マンションの一室】
前シーンのマンションの中にある、少女の自宅のリビングルームに場面移動。
ハルが少女に色々と説明をしている様子(セリフなし)を背景に、ハルのモノローグという形で読者向けの解説を提示する。

ハル(モノローグ)
『この子の名前は黒崎真白。中学二年生。ちょうど妹の冬夏と同学年だ』
『両親と三人暮らしで、俺でも名前を知っている私立中学校に通っているらしい』
『俺が本当は人間だということは、まだ秘密にしている』
『余計なことを教えても混乱させるだけだろうし、そうした方がいいとグレイからもアドバイスされていたからだ』

真白はハルから一通り説明を受け、真顔で小さく頷いている。
内気な雰囲気は飛び降り前と変わらないが、ハルの存在は普通に受け入れている。

真白「悪魔と戦って、討伐ポイント的なのを貯めたら、願いが叶う……」
ハル「今すぐ願いが叶うわけじゃないけど、悪魔と契約して破滅するよりはずっとマシだろ?」
真白「うん。でも……魔法少女なのに、全然ファンシーっぽくないシステムなんだね」
ハル「それは俺も思った」

ハルは呆れ混じりに同意してから、神妙な態度で話題を次に進めた。

ハル
「ところで……願い事の内容、聞いてもいいか?」
「必要なマナの量は、叶えたい願いによって変わってくる」
「目標値が分からないと、俺としてもサポートしにくいからな」
「赤の他人には話し辛いかもしれないけど……」
真白「いいよ。それじゃ、パパとママに挨拶しないとね」
ハル「へっ?」

真白はハルをひょいと抱え上げ、リビングルームの隣の部屋へと向かっていった。

ハル「お、おい! 魔法少女のことは秘密に――」

じたばたと暴れるハル。
だが、隣の部屋に繋がるドアが開けられた瞬間、目を剥いて黙り込む。
その部屋にあったのは、真白の両親の遺影だった。

真白
「パパ、ママ。私ね、悪魔と契約するのは止めて、魔法少女になったんだ」
「ほら見て、この子が私のマスコット。ハルっていうんだ」
「死んで会いに行くって約束だったけど、予定が変わっちゃった」
「もうちょっとだけ待っててね。絶対に生き返らせてあげるから!」

唖然とするハルを抱えたまま、真白はどこか病んだような不器用な笑顔を浮かべて、魔法少女になったことを両親の家に報告した。

【シーン7:真白が通う中学校】
翌日。私立中学校の教室で、生徒達が一限目までの時間を過ごしている。
そこに真白が登校し、教室全体に張り詰めたような空気が流れる。
モブの生徒達は真白に話しかけようとせず、ひそひそと小声で囁き合った。

生徒達「黒崎だ」「久し振りに見た」「交通事故だっけ」「親が二人とも」「可哀想」

無表情で席に着く真白。
一人の女子生徒が意を決して近付き、真白に話しかける。
(これ以降にも友人キャラとして出せるように、モブとは違うデザインにしておく)

女子生徒「く、黒崎さん! その……もう、大丈夫なの?」
真白「うん、ありがと。何とかなりそうだから」

真白が笑顔を見せたことで、女子生徒はホッと胸を撫で下ろす。
教室の張り詰めた空気も緩み、更に何人かの生徒が真白を元気付けようと話しかける。
クラス全体が真白を気にかける中、ただ一人、派手な容姿の女子だけは不服そうな顔をしていた(第2話の伏線)

時間経過、放課後。学校を出た真白の肩にハルが飛び乗る。

真白「行こう。悪魔を探しに」
ハル「お、おう……」

目が座った真白の様子に、ハルは戸惑いを隠しきれない。

【シーン8:活動ダイジェスト → 真白のマンションの自室 → 屋上】
ハルと真白の悪魔退治の活動を1ページ程度のダイジェストで描写。
戦っている相手は使い魔(小型の悪魔)で、1~2コマごとに1体、これを複数コマ。
このダイジェストに、ハルのモノローグを重ねて配置する。

ハル(モノローグ)
『次の日から、俺達は精力的に魔法少女の活動に取り組んだ』
『けれど、見つかるのは悪魔の手下の使い魔ばかりで、カケラも思うようには集められなかった』
『それでも真白は戦い続け――』

真白の自室に場面転換。寝巻き姿の真白が、疲れ果てた様子でベッドに倒れ込む。

ハル「おい真白。いくら何でも頑張りすぎだろ」
真白「私の願い事、カケラが何点分必要なんだっけ?」
ハル「……死者蘇生は一人一万点。だいたい下級悪魔百体分だな」
真白「今の得点は?」
ハル「百七十二点……」
真白「ほら、もっともっと頑張らなきゃ。パパとママが待ってるんだから」

真白はベッドに横たわったまま、横目でハルを見やった。
少し冷たい視線。願い事を隠していることを暗に非難しているような。

ハル「でもなぁ」
真白「ハルも叶えたい願いがあるんでしょ? 何なのかは知らないけど」
ハル「う……」
ハルも後ろめたさで答えに詰まる。

真白「だから……いっぱい……貯めな、きゃ……」

そのまま眠りに落ちる真白。
ハルは小さな体で毛布を引っ張って真白に被せ、一人で屋上に移動する。
そうして屋上で物思いにふけっていると、そこに黒猫似のマスコットのグレイが現れる。

グレイ「お久し振り。あまり上手くいってないみたいね」
ハル「まぁな」

ハルは夜景に視線を向けたままで、グレイの方を向いていない。

ハル「相棒の願いはカケラ二万点分の消費で、俺の願いは累計三万点分。そのくせ悪魔一体のカケラはせいぜい百点分で、使い魔に至っては数点か数十点。気が遠くなるよ」
グレイ「私が言いたいのは、そのことじゃないわ。あなたのパートナー、まだデフォルト・スタイルじゃない」
ハル「デフォ……なんだって?」

怪訝そうにグレイの方へ振り返るハル。

グレイ「デフォルト・スタイル。教えてなかったかしら? だったらごめんなさいね」

グレイは言葉では謝っているものの、申し訳無さは全く感じられない。

グレイ
「あの子が変身したときの格好は、単純な魔力攻撃や防壁しか使えない、全員共通の初期装備なの」
「そこから自分自身の専用スタイルを得て、独自の固有魔法を身につける……これでようやく一人前の魔法少女と呼べるわ」

上記の説明に合わせて、イメージ図をシルエットなどで描写しておく。

ハル「スタイル……どうやったら手に入るんだ?」
グレイ「魔法少女とマスコットの信頼関係が深まること。それが唯一の条件よ」
ハル「……は?」
グレイ「あなた、まだあの子に信頼されてないみたいね」
ハル「ははっ……確かに。隠し事なんかしてたら、信頼されるわけないよな」

自嘲気味に笑うハル。
そのとき、ハルが何かの気配に気付いてハッと顔を上げる。

ハル「悪魔の気配!? こんなにハッキリ分かるってことは……かなり近い!」
グレイ「ほら、見て」

グレイに促され、ハルは屋上の縁から下を見る。
一人で魔法少女に変身した真白が、自室のベランダから外に飛び出して、悪魔のところへ駆けつけようとしている。

グレイ「マスコットを待たずに飛び出すなんて。自分ひとりで頑張るつもりかしら?」
ハル「あの……馬鹿っ!」

ハルは屋上から飛び降り、独断専行した真白を追いかけた。

【シーン9:真夜中の公園】
緑が多い無人の公園で悪魔と戦い、大苦戦する真白。
相手は霧が集まって大きな人型を作った姿(公園の木よりも大きな上半身だけが地面から出ているイメージ)の悪魔で、打撃も魔力弾もすり抜けて通じない。
悪魔は霧を凝縮した刃物状の弾を連射して、一方的に真白を嬲る。
(できれば、一連の戦闘シーンには1~2ページを割り当てておく)

絶望しかけた真白に刃物状の弾が直撃しようとした瞬間、飛び出したハルが盾になって代わりに貫かれる。

ハル「がっ……!」
真白「ハル!?」

真白はハルを拾い上げ、公園の木立に飛び込んで身を隠す。
ハルの胴体には大穴が開いているが、血は全く流れていなかった。
そこに悪魔の攻撃が降り注ぐが、巨大から木立を見下ろしながらの攻撃なので、枝葉に視界が遮られて狙いが定まらない。

ハル「はは……マスコットって、意外と頑丈なんだな……」
真白「どうして! ハルにも願い事があるんでしょ? 死んじゃったら意味ないじゃない……!」
ハル「だよなぁ。何やってんだか……ごほっ!」

ハルは苦しみながらも無理に笑顔を作る。

ハル「俺、こうなる前は……人間、だったんだ。悪魔に殺されて、こんな格好になっちまって……だから、魔法少女を育てて……願いを叶えてもらって……人間に戻りたかった……んだけど、さ」

ハルの独白を、真白は今にも泣き出しそうな顔で聞いている。

ハル「……ははっ。また、体が勝手に、動いちまった。目の前で、死なれるとか……勘弁……して……くれ……」

ハルが意識を失いかけた矢先、真白はハルの胴体に手をかざし、カケラを消費して願いを一つ叶えた。

真白「お願い、ハルを治して!」

瞬く間に治癒していくハルの負傷。意識を取り戻して驚くハル。

ハル「お、おい! そのカケラは……!」
真白「パパとママは、私を庇って死んじゃったの」
ハル「……っ!」
真白「今度は絶対、死なせないから」

微笑む真白。そこに降り注ぐ悪魔の攻撃。
攻撃で立ち込めた砂埃が、真白を中心に発生した光の奔流に吹き飛ばされる。

ここで真白の変身シーンを描写。初期形態から強化形態への変身。
白基調でシンプルすぎた初期形態から、黒や紫をベースにした色彩になり、フリルやリボンなどの装飾も増える。
最後に魔法少女の衣装と合わせたデザインの大鎌を手にして、変身完了。

魔法少女マシロ、グリムリーパー・スタイル。
↑を変身シーンの最後の決めポーズに合わせて大きな書き文字で描写。
(※格好良い演出にならないなら止める)

変身完了後、即座に凄まじい速度で木立の外へ飛び出す真白(ハルは肩の上に)

ハル「やり方は分かるな!」
真白「もちろん!」

刃物状の弾の雨を切り払い、素早く掻い潜って悪魔に肉薄する真白。

ハル(真白の固有魔法は『討伐した悪魔の模倣』! これなら――!)

月を背に高く跳躍。
落下の勢いを乗せて、霧が集まった巨体を縦に両断する(可能なら大きな決めゴマで)

悪魔「無駄無駄無駄……」

霧の巨体がすぐに元に戻ろうとする。
しかし真白とハルは、既に戦いが終わったかのように構えを解いていた。

悪魔「霧ヲ刃デ殺セル……ト……?」
ハル「先輩マスコットから聞いたぜ。悪魔にだって魂はあるんだってな」

くっつきかけた霧の巨体が、両断されたラインでずるりとズレる。

真白「私が斬ったのは霧じゃない。薄く広がった、あなたの魂」
ハル「魂を断ち切る死神の鎌だ。良い斬れ味だろ?」
悪魔「オオオオオ……馬鹿ナ、馬鹿ナアアアアアアアッ!」

霧の巨体が爆発するように霧散し、突風のように夜の公園を吹き抜ける。
ハルがカケラの吸収を終えたところで、真白が疲労と達成感の籠もった溜息を吐く。

真白「ありがと、ハル。また助けられちゃったね」
ハル「これでやっと、スタートラインに立てたってところだな。お互いに半人前は卒業だ」

笑顔で頷く真白。ハルへの信頼が深まったことが見て取れる。

ハル「ところで、まだ変身解かないのか?」
真白「解いたらパジャマだからね!?」

【シーン10:夜の街の遠景】
一方その頃。屋上の縁に、真白とは別の魔法少女が腰掛けて、ハルと真白がいる方を愉快そうに見ろしている。
真白よりも小柄だが、見るからに荒っぽい雰囲気(目付きが悪い、八重歯orギザ歯など)

魔法少女「へぇ、久し振りの新顔だな。面白くなりそうだ」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?