見出し画像

波色ビール

泣きじゃくる自分の呼吸音。
ただ右手を握りしめてくる母。
その日、田舎のバスの運転手でしかない、
偉大な祖父が死んだ。

日本海はこんなにも荒々しかっただろうか。
波飛沫は安全地帯と舐めてかかった私の前髪を
容赦なく濡らす。

扇風機の音が徐々に大きくなってくる。
(気がする)
あっちを見たり上を向いたり。
時間と共に店内から人を減らしていく。

あの時の病院と同じだ。
機械音だけが強くなっていく。
彼女のキーボードを叩く音が
自分の鼓動に重なってきた。

オレンジ色のビール。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?