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飲めないのに、居酒屋ものが好き

居酒屋にじっさいに足を踏み入れたのは、もうだいぶ前のことになるように思う。少なくともコロナ禍がはじまってからは一度も行っていないし、その以前であっても、夫婦ともに飲まないし飲めないので「よし、居酒屋いくべ」的展開にはならない。

けれど、私は居酒屋ものの番組、居酒屋を紹介したエッセイ、居酒屋ものの漫画がとても好きなのだ。自分がお酒がてんでだめだからこそ、憧れるし、何より番組や写真のなかでずらりと壁に並ぶ居酒屋メニュー、あれは壮観すぎて、目にするだけで楽しい。

先日も、このような居酒屋ものの本を見つけた。1冊目は作家の角田光代さんと、GOING UNDER GROUNDドラマーの河野丈洋さんご夫妻の、居酒屋をテーマにした共著「もう一杯だけ飲んで帰ろう。」新潮社から2017年に出ている。高田馬場でミャンマー料理を、高円寺の古本酒場で飲み会を、青山で飲みながら中華を食べ、という東京のあらゆる町で、飲み食べをし、角田さんと河野さんそれぞれの視点で、ひとつの居酒屋についてエッセイを書いている読み応えある作品だ。

刺し盛り、モツ煮、水餃子、湯豆腐、とうもろこしの天ぷら、鯛めし、お好み焼き、若筍煮、岩牡蠣……あらゆる居酒屋料理が文中に並び、二人の語る店内でのエピソードが楽しく、どの項から読んでも大満足だ。

2冊目は、2009年刊行でいまは絶版らしい(私は図書館で見つけた)太田和彦さんの「ひとり旅  ひとり酒」。京阪神エルマガジン社から出ている本作だが、こちらは店内での内観や店主の写真、料理写真のほか、旅先での風景写真も盛りだくさんの一冊で、読んでいると実際に、旅行しながら飲んでいるような(何度も言うように飲めないのだけど)気分を体験できる。

太田さんの文章からは店主の人となりも伝わってくるほか、店ができた歴史や、訪れた町の描写も盛り込んであり、眠る前に「今日はこの街のこの居酒屋の話を読みたい」と思えてくるような一冊である。本におさめられているたくさんの写真は、臨場感があり少しレトロで、古きよき居酒屋の雰囲気を目でも楽しめる。

太田さんの下記2作品は販売中らしいので、今度読んでみたいと思った。自分用のメモもかねて、掲載してみる。

そして、漫画はやっぱり一大ブームとなった「ワカコ酒」が好きだ。コミックス、漫画サイトで読めるようだし、これを機に私も再読したくなった。

村崎ワカコ26歳。酒呑みの舌を持って生まれたがゆえに、今宵も居場所を求めてさすらう女ひとり酒。――というのが本作を端的にあらわす紹介だけれど、まるっこいワカコのキャラ造形と、美味しいものを食べて飲んだときにワカコが発するせりふ「ぷしゅー」が、やたらとかわいくいとおしい。

そして、出てくる居酒屋メニューの美味しそうなこと!1話目は「鮭の塩焼き」……渋い、渋いよワカコ。1話が短いのだけれど、その短さのなかに魅力がたっぷりつまった本作、気温もぬるんできた春の夜の読書に最適ではないだろうか。

そして、最後にご紹介するのはBS-TBSの番組「おんな酒場放浪記」Tverや無料動画GYAO!などで見逃し配信もされているこの番組は、ちょっとこじゃれたお酒を出す店なども紹介されていて、観ていて楽しい。もちろん本家である吉田類さんの「吉田類の酒場放浪記」も熱心に見ている私だが、こちらもまた趣向が変わって、おもしろく視聴している。

実際の、居酒屋の雰囲気が動画からも伝わってきて、人と人が集まって楽しく飲み食いする雰囲気を、感じられてこっちもうきうきしてくる。

――最後、私や夫がなぜ飲めないかという話になるが、二人ともアルコールをあまり分解できない体質らしく、飲んだ翌朝は決まってすごく具合が悪くなるのだ。

それでも飲みたいときはたまーに(年に1、2回ほど?)飲むこともあるが、翌日倒れていて使い物にならなくなってもかまわない日だけにしている。

それ以外の日は、居酒屋もののエッセイ、漫画、動画を通して、気分だけでもほろ酔いになって愉しませてもらっている。

この世に、居酒屋ものの作品がたくさんあってよかった。
心から、そう思う。



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