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上田聡子
2021年10月5日 17:19
アパートのチャイムが鳴ったとき、私はまだ布団のなかでまどろんでいた。口の端によだれをつけながらあわてて飛び起き、廊下に飛び出して玄関ドアを開けた。宅配業者のおばさんが、私に向かって笑顔で大きな段ボールを渡そうとしている。「サインもいただけますか?」ええ、と答えて段ボールを受け取り、上がり口に下ろす。箱は予想より重かった。おばさんが帰ったあと、ふわあとひとつあくびをして、私はあらためて差し出