見出し画像

ショートショート王様|ショートショート

「あ、ショートショートおじさん来た」

駅前のコーヒーショップ。
そのおじさんは決まって月曜日の朝7時にお店にやってきた。
注文はブレンドを二つ。お持ち帰り。

「サイズはいかがいたしますか?」
「ショート、ショート」

そんなわけで、おじさんは「ショートショートおじさん」と呼ばれていた。

その日は、新入りのアルバイトがショートショートおじさんのレジにいた。
「サイズはいかがいたしますか?」
「ショート、ショート」

「お名前はなんとお書きしましょうか?」
今まで誰もショートショートおじさんには尋ねなかった質問だ。
店員全員がおじさんの答えに耳をそば立てた。

「キングとクイーンで」
「かしこまりました」

おじさんはいつものように、コーヒーを手に駅と反対方向へ歩いて行く。
住宅地を抜け、丘の上にある墓地に入った。
「はい、どうぞ。女王様。今日は名前入りだよ」
カップをお墓の前に置く。

「僕まで王様になっちゃったよ」
おじさんは恥ずかしそうに鼻の頭を掻いた。

(409文字)

こちらの企画に参加しています。
1000本ってすごい! おめでとうございます。

本作品はamazon kindleで出版される『410字の毎週ショートショート~一周年記念~』へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です。

また読みたいなと思ってくださったら、よろしければスキ、コメント、シェア、サポートをお願いします。日々の創作の励みになります。